ろーかる・ぐるぐる #92

牧場スイーツの常識を覆そう

毎年、非常勤講師としてお世話になっている明治学院大学。100年以上の昔、わが祖父も中学時代を過ごしたという白金のキャンパスで講義をできるのも何かのご縁です。

明治学院大学
明治学院大学
白金キャンパス(提供:明治学院大学)

『経営学特講 イノベーションとクリエイティビティ』は毎回出る小テストが30%、発言で30%、期末テストが40%の割合で評価します。そのため、あまり大勢が履修しちゃうと、ひとりひとりの名前が覚えられないという勝手な事情もあり、特に今年の春はずいぶん要件を厳しくして、学生さんを減らす努力をしました。「別にマジメに取り組まない学生さんが落第するのは、当然のことでしょ?」なんて攻撃に負けなかった50人余りが夏学期の半年間、お付き合いくださいました。

素晴らしい学生さん
素晴らしい学生さん

そこで議論したのが「常識の覆し方」。いままで通りのやり方ではどうしようもない時に「その手があったか!」を見つけるための方法論です。そして期末試験の問題は「いままでにない牧場スイーツを開発してください」。日本全国、どこの牧場に行っても、食べられるのは同じようなソフトクリームとチーズケーキ。この状況を打破するにはどうしたらよいだろう?という知恵比べです。

畝見菜月さんが考えてくれたのは「味わい石鹸」。牛乳(ミルクバター)を原料にした石鹸は食べてもカラダに害がないという「ネットの情報」をベースに、スイーツ形状の思わず食べたくなっちゃう石鹸をつくったらどうだろう?という提案でした。「それはスイーツなの?」とか「石鹸を食べても大丈夫って、ホント?」とかツッコミどころはあるのですが、この切り口は他の誰とも違いました。何より牛乳素材で、無添加で、かわいらしいスイーツ形状の石鹸が牧場に並んでいたら、思わず買っちゃうな!と思えたので、高めの点数を付けました。

筒井彩花さんの答えは「牛乳かき氷」でした。覆すべき「いまの常識」を「牧場で売っているのは濃厚自慢なスイーツばかり」と考えたからでしょう、「しぼりたての生乳」らしさを味わうためには、もっとフレッシュな楽しみ方があるのではないか、という着眼点です。そしてそのとき、筒井さんが参考にしたのが原宿で話題になっている「ソルビン」(雪氷)という韓国生まれのスイーツ。凍らせた牛乳を削ってかき氷にしたものです。パウダースノーのような軽やかな味わいが特徴だといいます。これを応用すれば新しい「牧場らしいスイーツ」ができるのではないか、という提案です。

このほかにも岩崎開地さんの「牛糞チョコ」や河合勇樹さんの「牛のおっぱいアイス」からは、なんとしてでも「ありがちな答え」にはすまいという決意が感じられました。このコラムで答案を紹介してほしいと言っていた林怜司さんの「自分で仔牛から育てて味わう『My牧場スイーツ』」も、きっと七転八倒して考えてくれたものでしょう。一枚一枚、学生さんの顔を思い浮かべながら採点する時間は、とても刺激的でした。

ちなみに全国の牧場関係者でご関心のある方は、どうぞご一報ください。よろこんでみんなのアイデアをご紹介します。と同時にそれが学生さんであったとしても、すぐれたアイデアの発案者にはきちんと対価が支払われるべきだと思いますので、ご採用の際はその点もよろしくお願いいたします(笑)。

このテストを通じて学生さんに伝えたかったのは「社会で出合う問題には、正解なんてないんだよ」。そのかわり無限の「効果がある解決策」があるハズなので「たいへんだけど、頑張ってそれを探そうね!」ということでした。誰かひとりでも、いつかどこかで思い出してくれれば…です。

さて。実は「いままでにない牧場スイーツを開発してください」というのはぼく自身が栃木県那須にある千本松牧場から課せられた問い掛けでした。「正解なんてないのだ!」という予防線は張りつつ、次回、どんな企画をしたかご紹介しましょう。

どうぞ、召し上がれ!

プロフィール

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    山田 壮夫
    株式会社電通 第1CRプランニング局

    1969年生まれ。アイデアを核として広告キャンペーンはもちろん、店舗開発からテレビ番組の製作まで手掛ける。特に最近は全国の地方新聞社厳選お取り寄せサイト「47CLUB」と連携してローカルにおける商品開発作業にチャレンジしている。2009年カンヌ国際広告祭(メディア部門)審査員。慶應義塾大学(メディア・コミュニケーション)、明治学院大学(経営学)非常勤講師。著書に『〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考』(朝日新聞出版)。

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