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データで見るOOHの世界No.1

「位置情報データ」で、駅ごとの全く違う顔が見える!GroundTruthのモバイルデータでOOHが進化

2018/03/15

「データマーケティング」「データドリブン」「ビッグデータ」「データマネジメントプラットフォーム」…データにまつわる用語が次々と生まれる広告業界ですが、OOH(アウト・オブ・ホーム=屋外広告・交通広告)も例外ではありません。本連載ではオーディエンスデータを中心とした屋外広告・交通広告の進化と可能性を、OOH局の浜田桂がお伝えします。

あなたが取りたいのは何のデータですか?

私の答えは明快です。毎朝、息子を保育園に送っていくための目標の時間があるはずなのに、結局出発が遅れてしまう自分と、息子が起きてから何をしているのか、という「時間の使い方」についてデータを取りたい!です。

息子の利用時間傾向、そして自分の行動形態を可視化するのです。

  • 「席に座っているのに、目の前のオムレツを食べ始めないでボーっと見つめている時間が長い」(息子)
  • 「洗面台でヘアアイロンを温めている間についつい携帯を見てしまって時間が過ぎている」(自分)

という予想はできますが、実際のところは、息子はベッドから出てくるまでが一番時間がかかっているかもしれないし、私も洋服を選ぶのに時間がかかっているかもしれません。

急がなきゃ、と思いながらも無意識に行動していることを「データ」で見ると、なーんだ、ここを短くすればいいのか、と気づける気がするのです。でもばたばたでそんな余裕はない毎日ですが…(笑)。

ここまではあくまで余談ですが、皆さんだったらどんなデータを取りたいですか?どんなことを数字で把握し、そして改善したいですか?

急には思い浮かばないかもしれませんが、こんなことまでデータが取れるんだ!と一度分かった瞬間、世界は変わるのです。

It’s all about data.(何事もデータが全て!)

OOHの世界も例外ではありません。

今回は、OOH業界で今まで使われていなかった「モバイルデータ」を使うことで、一体どんなことが分かるのかを見ていきましょう。

*以下、データは全てGroundTruth提供のモバイルからの位置情報データによる。
*参考:http://www.dentsu.co.jp/news/release/2018/0314-009486.html

 

○○駅は、勤勉なサラリーマンが多いのか?

突然ですが、問題です。

■問1:以下は、東京都のある駅の「月曜~日曜の人の流れ」を時間帯別に可視化したものです。どこの駅でしょうか?

大手町駅
縦軸が人数、横軸が時間帯(5時~23時)。緑系の5色が平日、グレー系の2色が土日のグラフ

特徴として読み取れるのは、まず月~金の平日の人の流れが、ほぼ同じ。そして、土日の人の量が圧倒的に減る。ということです。

……!

そう、オフィス街の駅ですね!正解は、「大手町駅」です。

大手町と聞いて、「なるほど」と思いませんでしたか?金融を中心に、ある意味お堅い企業の本社が多いエリアですが、判で押したように平日は同じ動きをしています。納得ですよね。

ちなみに余談ですが、平日に私の普段の仕事姿であるジーンズでこのエリアの大きなオフィスビルに入ると、かなり浮きます(笑)。

■【問2】:では、これはどこの駅でしょうか?

六本木駅
縦軸が人数、横軸が時間帯(5時~23時)。緑系の5色が平日、グレー系の2色が土日のグラフ

大手町駅とは打って変わって、平日の中でもばらつきがあり、土日でも平日に近い人出があります。そして、特徴的なのが、この2カ所!

六本木駅

①終電近くの時間帯、金曜日の夜に明らかに人の量が増えています。

②見て!早朝は土日だけ人がちょっと増えてる!朝帰り?

皆さん、金曜日の夜に飲みに行く場所を思い浮かべてみてください。そこが答えかもしれません。

正解は、「六本木駅」です。

なんと、納得じゃないですか?夜の顔を持つ六本木駅らしい傾向です。

これらのデータは、モバイルでの位置情報データ取得という分野で世界をリードするGroundTruthの提供によるものです。Blueprintという独自技術で駅の輪郭に沿って正確な境界を引き、人の位置情報を抽出したのです。

「なんとなく」を「確信」に変えるデータ、知らなかったことが分かるデータ

「データの活用」というと、つい「今まで知らなかったこと」を明らかにしてくれる手段だと思いがちです。でもその答えは、YesでありNoです。

実は案外、「なんとなく分かっていたこと」(肌感=広告業界の人は、この言葉好きですよね。笑)を、確信に変えるためでもあったりするのです。

なんとなく肌感で分かっていたことが「数字」で証明されること。そして、その数字をもとに自信を持ってキャンペーンを構築できることが、データの真価の一つだと思います。

今まで日本のOOHの世界では、先ほどご紹介したような「曜日・時間ごとの人の移動」をデータとして取得する手段がありませんでした。対象となる駅、路線が多すぎるため、パネル方式の調査では全部の駅、路線に対して十分なサンプル数を取ることが困難だったからです。

ですが、今やモバイルデータを使うことで、先ほど紹介したような詳細なデータがあっという間に、調査もせずに、つまびらかになってしまいます。こうしたデータ取得の実現には、GPSやWi-Fiによる「位置情報取得技術」の向上と、スマホ普及による「位置情報利用者」の増加が寄与しています。

さて、曜日・時間帯別のデータをお見せしましたが、性別や年齢その他の「デモグラフィック」という観点ではどうでしょうか?

次のグラフを見てください。先ほどのモバイルデータを使って、大手町駅と六本木駅それぞれの「男女構成比」を出したものです。

大手町駅と六本木駅それぞれの「男女構成比」

このグラフを見る限り、大手町駅も六本木駅もあまり違いがなさそうで、単に「男性が多い駅」という印象を受けます。

ですが、次のグラフを見てください。月~金の各曜日の六本木駅を対象に、男女・年齢層別の人の流れを可視化したものです。

月、火水、木金

あれれれ?ほぼ全ての曜日で常に一番上に来ているグラフは、なんと「女性25~34歳」なのです。私の個人的なイメージでは「六本木駅には若い男性が多そう」と思っていましたが、データでは平日の日中に一番多いのは若い女性なのです!

この傾向は土日になるとさらに顕著で、頭ひとつ「女性25~34歳」が飛び出ています。

土、日

思っていたのとちょっと違った!という人が多いのではないでしょうか?横棒グラフにすると下図のような感じ。六本木駅では「女性25~34歳」が19.9%を占め、最大のボリューム層を形成しています。

男女構成比+年齢層

性別で分けただけの横棒グラフでは気付きにくいことも、こうして詳細な時間帯別の線グラフにすることで、別の見方ができるようになるのです。

従来のOOHのプランニングでは、

  • 「交通広告は男性向け」
  • 「六本木駅は男性が多い」
  • 「だから、男性(主に25~34歳)向けの商材を訴求しよう」

というロジックになっていたと思います。しかし、モバイルで得た実際のデータに基づいて25~34歳の年齢層だけを比較すると、実は女性が多い。そうなると男性向けの商材を訴求することと、女性向けの商材を訴求することの効率は変わらない可能性が高いんですね。

ざっくりとした性別だけで判定をするのではなく、年齢などデモグラまで見たらどの「ターゲット層」が多いのかが分かるようになって、本当に効率的なプランニングができるようになるのです。

共通の認識を与えてくれるデータ

ここまでの話に「いや、私は最初から六本木は若い女性が多いと思ってましたけど…」という方もいるのではないでしょうか?そうなんです、この認識って人によって違うのです。

今までは自分の印象だけで、「六本木駅は女性が多いな」と思っていた人もいれば、私のように「若い男性が多いな」と思っていた人もいます。それがモバイルなどのビッグデータを使うことで、皆の共通の認識として「答え」が出せる。これはマーケティングにおいては素晴らしいことですね。

さらに、先ほどの六本木駅に来ていた女性たち、「目的」はなんだったのでしょうか。駅の次に寄った施設、そこでの滞在時間などを把握すれば、六本木がその人にとって勤務先の駅なのか、それともお友達とお茶をしに来たのか、お買い物に来たのか、そういったことがどんどん見えてきます。

代表性の議論はあるとしても、どこまでいっても抜け漏れなく全駅の「全数データ」を把握することは不可能です。であれば、これまでのような「アンケート」ではなく、ビッグデータであるモバイルデータの傾向を使ったプランニングで、別の視点からOOHを見てみませんか?

当たり前のことが確信に変わるデータ、知らなかったことが分かるデータ、そして、共通の認識を与えてくれるデータ。こうした実数データから見るOOHは、従来の肌感覚ベースのものとは少し違った顔を持つようになります。

ふふふ、どうですか?今お持ちのキャンペーンの中で、イメージがどんどん膨らんだ方もいらっしゃるのではないでしょうか?統合マーケティングの中のOOHの位置付けが変わってくるのでは!と考えると、わくわくします。

さらにモバイルデータの真骨頂は、ウェブやテレビのデータともひも付けられることです。OOHだけの閉じた世界ではなく、フルファネルでのプランニングや広告配信にもつなげることができるのです!!

次回は、そんな、他メディアとOOHとの横断的なプランニングと、その効果測定の可能性についてお話しします。