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コロナ禍を越えてOOHは今~DX基点の考察No.5

SNS投稿で話題をつくる! OOHのバズを解明

2023/12/21

SNS上でのバズを狙って、OOH(Out Of Home:交通広告や屋外広告、商業施設での広告など、自宅以外の場所で接触する広告媒体の総称)を出稿する企業が増えています。本連載でOOHのバズに関する記事「新たな価値の指標に!「OOHのバズ」を可視化する」を執筆したところ、大きな反響がありました。

記事では
・SNSでのバズがOOHの価値になること
・バズの定義
・バズに影響する要素
・キャンペーンの成功率を上げる「バズ予測モデル」
について紹介しました(記事は、こちら)。

本稿では、OOHをSNSでバズらせるために必要なことやそこで生まれる反響など、一歩踏み込んだ知見をお届けします。

OOHオリジナルのクリエイティブがSNSでバズを生む 

広告キャンペーンにおいてOOHは目を引く存在です。視覚的なインパクトを見る人に与え、商品やサービスについて友人や家族と話をするきっかけにもなります。さらにSNSでの発話も促します。

電通アウト・オブ・ホーム・メディア局の「OOHバズ研究チーム」では、テレビやデジタルメディアも使ったプロモーション全体の中でOOHキャンペーンがどれくらいのバズを生み出せるのか調査しました。

ソーシャルリスニングツールを使って、あるコンテンツ企業が手がけたいくつかのプロモーションのデータ分析を行い、OOHがどれくらいバズを生み出すことに寄与しているか、検索クエリ(プロモーションやOOHキャンペーンについてユーザーが発話している内容のみを抽出する検索キーワード)を変えて調べました。企業を限定したのは、商材ジャンルが同じで、プロモーションの方法も全体的には大きな違いがなく比較しやすいからです。

OOHキャンペーンには、主に認知目的と話題化目的の2つがあります。認知目的のキャンペーンとは、例えば人流が多い場所で、視認率の高いOOH媒体に露出するもので、クリエイティブ素材はテレビCMやデジタル広告用の動画を流用するケースが多いです。認知は取れますがバズの観点で見ると写真を撮ってSNSにアップするまでの行動を引き起こすための仕掛けはあまり見られません。

一方、話題化目的のOOHはそれ自体で目立たせようと工夫してOOH用のクリエイティブ素材を作るので、シェアしたい気持ちを引き出します。今回、ソーシャルリスニングツールによる分析結果は下記のようになりました。

OOH
調査機関:OOHバズ研究チーム 調査期間:各コンテンツの、テレビCM開始日もしくはOOH開始日の早い方~テレビCM終了日もしくはOOH終了日の遅い方を期間として調査 調査方法:Meltwaterで調査。X(Twitter)上における各コンテンツのプロモーション全体が生み出す発話量のうち、OOHの発話量を抽出するために、共通の検索条件(クエリ・期間)を決めて分析 ※オリジナルポストとは、X(Twitter)のユーザーが自分で投稿したもの。投稿数とは、オリジナルポスト他、リポストや引用リポストも含めた投稿数全体を指す。リーチ数とは、ポストが表示された回数を指す。

話題化目的でOOHを出稿した場合、X(Twitter)での発話量を調べると、複数のキャンペーンでOOHはプロモーション全体の過半数以上の発話を生み出していることがわかりました。特にコンテンツA~CやコンテンツFは、話題化を狙って制作したOOHのクリエイティブ素材に人々が注目し写真を撮っていたのでオリジナルポスト(ツイート)が伸びています。

X(Twitter)では、プレゼントキャンペーンで広告主の投稿をリポスト(リツイート)することがよく行われています。リポストする方が簡単なアクションにもかかわらず、オリジナルポストの割合が高いことから、話題化目的のOOHは発話したくなることが特徴といえます。

一方、認知目的のキャンペーンは、OOHのバズが起こる比率が低いケースが多く、あまり話題になっていないことがグラフから見てとれます。調査結果から、OOHは話題を生み出すパワーがあるものの、ただ出稿すればいいのではなく、話題になるようなOOH用のクリエイティブ素材を作るなど、何か仕掛けが必要なことがわかります。

多様な発信者によって、OOHの話題は拡散される!

SNSでOOHがバズるとはどういう状態でしょうか。X(Twitter)上のOOHキャンペーンのバズを調べると3つのケースに分かれます。

  1. 広告主や起用されたタレントがOOHキャンペーンの開始を告知することでバズが生まれるケース
  2. メディアアカウントの投稿によってバズが生まれるケース。コミュニティ外のより多くの人に拡散することができる
  3. 1や2によって広告掲出を知った人やたまたま広告を見た人が話題にするケース。3が多いほど多様なバズが生まれ、フォロワー同士の会話も活発になる

少し細かい話になりますが、発信者とその投稿方法の違いにより印象の差が生じるのか調べてみました。その結果、広告が印象に残るのは、企業アカウント、フォロワー、有名人、ニュースメディアのオリジナルポストの投稿であることがわかりました。この結果は読者のみなさんの実感にも近いと思います。リポストの投稿よりもオリジナルポストの投稿を増やすことが重要と言えそうです。

OOH
調査機関:電通マクロミルインサイト 調査期間:2023年7月24日〜7月27日 調査対象:関東一都三県の20〜69歳の男女 サンプル数:1000 調査方法:インターネット調査

投稿数を増やすために、広告の作り手側である企業アカウントや起用されたタレントのアカウントでは、事前に媒体社に確認して広告掲出の告知をすることが有効です。フォロワー(一般生活者)の投稿を増やすには、思わず投稿したくなるようなOOHをつくることが第一ですが、SNSでポストすることを促す参加型のキャンペーンを実施すると爆発的に数が増えることもあります。そして、ニュースメディアの投稿を増やすには、リリース配信があります。広告掲出開始日や場所、掲出イメージを明記することで情報を伝えやすくなるからです。

さらに私たちは、OOHを撮影した画像・コメントなど、X(Twitter)上に流れる投稿が、リアルのOOHやX(Twitter)広告と比較してどう違うのか、どんな印象を与えるのか、興味を持ちました。OOHバズキャンペーンは、OOHとX(Twittter)上にあふれるOOHの投稿によって成り立っているからです。

そこで複数の広告キャンペーンのOOH、OOHについて告知するX(Twitter)投稿、同内容のX(Twitter)広告の参考イメージを提示し、それぞれの印象を評価してみました。OOHバズキャンペーンは、OOHとOOH投稿の効果を足し上げたものとして表示しています。下記はOOHバズキャンペーンについて多かったトップ6の印象を並べたものです。

OOH
設問:「企業やサービス、タレントが出ている交通・屋外広告/OOH投稿/Twitter広告」を見た時に、あなたが見て感じる・行動したくなることとしてあてはまるものをすべてお選びください。※提示画像は広告の一例なので、この広告についてではなく屋外広告全般についてお答えください。また、実際に現地で見たと想定してお答えください。 調査機関:電通マクロミルインサイト 調査期間:2023年9月21日〜9月25日 調査対象:男女20〜69歳 関東一都三県 サンプル数:1000 調査方法:インターネット調査

OOHは商品やサービス、または企業への興味喚起や告知、印象を残すだけでなく、撮影したくなったり、人と話したくなる特徴がありました。OOH投稿が加わるバズキャンペーンはそれらの効果をさらに伸長させ、高い効果を生むことがわかります。実際には、OOHキャンペーンによって費用なしでOOH投稿が生まれているので、副次的にもたらされる広告の印象としては大きいのではないでしょうか。

X(Twittet)広告は、ターゲティングできることが特徴ですが、OOHのバズは、広告主だけでなく、さまざまな立場の人が発信することも特徴です。まだ商品やサービスに興味を持っていない潜在顧客層に投稿が広まることで、顕在層への引き上げにつながる可能性もある点が面白いところです。

上図の印象の中で、「写真を撮りたくなる/広告素材を保存したくなる」ことは、シェアする気持ちをつくる前段階の行為です。どうしてそう思うのか理由を聞いたところ、下記のような結果が出ました。

OOH
設問:「企業やサービス、タレントが出ている屋外・交通広告/OOH投稿/X(Twitter)上での交通・屋外広告」をあなたが見て感じる・行動したくなるとお答えになった内容について、そのように思う理由としてあてはまるものをすべてお知らせください。※提示画像は広告の一例なので、この広告についてではなく屋外広告全般についてお答えください。 調査機関:電通マクロミルインサイト 調査期間:2023年9月21日〜9月25日 調査対象:20〜69歳の男女 関東一都三県 サンプル数:1000 調査方法:インターネット調査

この結果を見ると、目立つ広告展開を見て、人に伝えたくなることが大きな理由であることがわかります。また、面白みを感じたり、広告内容(タレントやキャラクター)が気に入ったりなどの理由の割合も高いため、写真撮影や画像保存をしていることがわかります。

OOHが生み出すバズの内容は、大きく4種類に分類される

OOHキャンペーンがバズを生み出すことがわかりましたが、どのようなバズを生み出しているのでしょうか。業種や商材の異なるOOHキャンペーンについての投稿を、日本語感性分析ができる自然言語解析ツールmindlook®を使って調べてみました。このツールは、SNS上にあふれる声から生活者の「心」を分析・把握するツールで、81種類の感情タグが用意され、投稿内容を分類することができます。

いくつかのOOHキャンペーンをピックアップし、そのポストの全量を分析した結果、<感謝・感動><良い・好き>の感情が共通して多く、次に<要望><驚き><疑問>という結果になりました。感情タグ別に、それぞれのポスト内容を確認し、OOHが生み出すバズの種類を次の4つにまとめました。

OOH

「広告へのリアクション」には、クリエイティブ素材への好き嫌いのほか、広告を見て驚くことで文末に「!?」や「?」がつく反応がありました。

OOHを見て商材そのものに関して語っているのが、「商材への好意的意見」です。新商品や新作の発売を知り、心待ちにしている様子など、ポジティブな投稿がうかがえます。

「ファンが歓喜」とは、広告開始のアナウンスやグッズなどがもらえる情報、そして実際に広告を見たこと一つ一つに感謝や感動のバズが生まれ、喜ぶ様子がうかがえるものです。SNSでは、同じ関心を持つ者がつながるのでファンが多いタレントやコンテンツの広告は多くのバズを生みます。ファンによる投稿は写真や動画付きも多く、推しの姿をみんなに伝えようと良いアングルで撮影するのでプロ顔負けの良い写真投稿が多々見つかります。公式アカウントから掲出場所をみんなで探すように促したり、なぞ解きをさせたり、ユーザー同士で協力し合うような参加型キャンペーンは成功しやすいようです。

最後の「スポット価値」とはその場所に引き寄せられて要望が生まれるものをまとめました。その場所がランドマーク化するほど、広告掲出を見たい、おまけでもらえるグッズが欲しい、近所でも掲出してほしいなど、さまざまな願望を引き出しています。

商品を購入するきっかけや後押しに、マスメディアの広告だけでなく、友人・知人の意見やSNSでの評判を気にする人はたくさんいます。X(Twitter)では、フォローしているタレントよりも友人知人の投稿の方が印象に残ると回答した人が多かったように、一般の方の意見は貴重です。口コミを増やすために、インフルエンサーに依頼して話題をつくる手法もありますが、OOHは一般の方に面白いと思ってもらって、自発的に投稿を促すことに優れています。

このように、OOHはテレビ CMでは獲得しにくいターゲットの認知を増やすだけでなく、SNS上で商品やブランドのポジティブな話題を創出するので、SNS経由での商品認知や理解促進にも役立ちます。

今回は、OOHのバズについて、どれくらいバズを生み出すのか、人々はどんな気持ちでどんなことを話題にしているのか、さらにそれを読んだ周りの人はどう受け取るのかをひもときました。

広告で人を動かすには、見る人の心に「好き」か「驚き」の感情を抱かせる必要があると言われますが、調査をするとまさにその通りの結果になりました。OOHは公共空間に迫力ある展開ができるので、「好き」や「驚き」の感情を抱かせやすいと考えます。私たち「OOHバズ研究チーム」は、これからもOOHのバズを解明していきます。

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