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コロナ禍を越えてOOHは今~DX基点の考察No.2

新たな価値の指標に!「OOHのバズ」を可視化する

2023/09/01

街で見かけた面白い広告。思わずスマホで撮って友人に送ったり、SNSに「こんなものを見つけたよ」と投稿したりしたことはありませんか?もしくは、X(Twitter)上でOOH(Out Of Home:屋外広告・交通広告)についての投稿を見たことがある方も多いでしょう。

電通アウト・オブ・ホーム・メディア局には、データ・テクノロジーセンター、グループ会社CARTA COMMUNICATIONSの社員も加わった「OOHバズ研究チーム」があります。このチームでは、ソーシャルリスニングツールを使って、数々のOOHキャンペーンの効果測定を行い、報告書を作成しています。

近年、商品やサービスなどの話題化を目的としてOOH媒体が選ばれるケースが増えるにつれ、バズが起きるには何か条件があるのではないか、と考えるようになりました。その条件が分かれば低予算のキャンペーンやタレントを使わないクリエイティブでも話題化の成功率を上げられる可能性があります。本記事では、OOHとバズの関係性をひもときながら、OOHの新たな価値をつくるヒントを探ります。

写真に撮って誰かと共有したくなるOOHは多い

OOHはインパクトのある宣伝をしたいときによく使われ、あっと驚くような展開が目を引きます。電車内が一つの企業の広告で埋め尽くされていたり、新宿や渋谷の駅構内の空間がジャックされていたり、見る角度によってクリエイティブが変化する特殊な広告があったり……。見た人が思わず写真に撮って誰かと共有したいと思わせるOOHはたくさんあります。

2022年に実施した電通独自の大規模調査では、「あなたは交通広告や屋外広告を見て、どのような内容のときに写真及び動画を撮りたくなりますか(あてはまるものをすべて選択)」という質問をしました。結果は下記のグラフの通り、スコア順に「内容が面白いとき」「好きな人/モノ/コトが出ているとき」「内容が印象的/インパクトがあるとき」「内容が好きなとき」となりました。やはり内容が面白かったり、インパクトを感じたりしたときに思わず写真を撮りたくなることが分かります。

OOH
調査機関:電通マクロミルインサイト、調査対象:関東一都三県 15~69歳男女、サンプル数:32,000、調査期間:2022年11月11日~ 11月21日

X(Twitter)でのバズもOOHの価値になる

実際にX(Twitter)の投稿を確認すると、OOHはたびたび話題になっています。例えば、広告の内容を面白いと思って撮影して投稿したり、好きなタレントが起用されている広告が掲出されている場所を写真展に行くような感覚で訪れ、それらを撮影して投稿したりするケースも見られます。他にも、X(Twitter)上で同じ趣味を持ったユーザー同士がOOHの展開について話している様子も見受けられます。

また、現地のOOHを見ることができなかったとしても、X(Twitter)を通して個人のスマホやPCでOOHを見ることができます。私たちは、X(Twitter)上でのバズもOOHの価値といえるのではないかと考えるに至りました。

しかし、OOHはデジタルサイネージ、看板、電車内の中吊り広告、駅貼りポスターなど媒体はさまざまです。毎回同じタレントを起用していないケースも多く、LIVE BOARD(※)のようにインプレッション計測を基盤としたメディアがある一方、そうではないOOHメディアも多いため、X(Twitter)で話題になるといっても、どのくらい投稿されれば成功といえるのか、明確に回答することができていません。この状況は、近年さまざまな媒体で広告効果の可視化が進んでいる中で、広告主がOOHへ出稿しづらい要因にもなっていました。

※LIVE BOARD:NTTドコモと電通が設立したデジタルOOH広告の配信プラットフォーム運営および広告枠の販売事業を行う新会社。インプレッション(=広告視認者数)やユーザー属性に基づくOOH広告配信を実現し、OOHの広告効果・投資対効果も検証可能に。ネットワークされたデジタルサイネージ「LIVE BOARD」を全国各地に所有している。

 

バズの定義と、バズる要素とは?

私たちはOOHのバズの実体を探り、数値で説明できるように研究を進めてきました。最初に取り掛かったのは、OOH上の「バズる」の定義を決めること。まず、バズったといえるツイート数を調査しました。次にOOHのバズを引き起こす要素について調べました。さらに、それらの数値や要素をもとに、「バズの予測モデル」を作り上げました。ここからは、私たちが導き出したOOHとバズの研究成果を解説します。

バズの定義
最初に注目したのはツイート数です。過去に実施されたOOH案件を一般的な統計手法を使い分析した結果、バズは小・中・大に分類できることが分かりました。この分析結果により、「バズっている」と言える基準は「バズレベル中」以上としています。

OOH展開における媒体やクリエイティブ要素も加味しているこの分析結果によると、調査案件の中で7割弱はバズレベル小に該当します。バズったといえる「バズレベル中」以上の案件は、基準値よりもツイート数、リーチ数が多いだけでなくニュースメディアやテレビなどに転載されるケースも少なくないため肌感にも近いものになっています。

バズに影響する要素
ツイート数に影響を与える要素について、主に媒体の「出稿内容(出稿の規模や媒体の種類)」と広告に使用されている「コンテンツ(クリエイティブ)」の2つを軸に、どのようなものがバズに影響を与えているかを探りました。

例えば、「出稿期間」はバズに影響があることが分かっています。長期掲出されている展開はその場所に行って写真を撮ってツイートしやすい環境が整っているためバズが大きくなります。

また、コンテンツ(クリエイティブ)では「特殊展開」という要素がバズに影響があることが分かっています。「ピールオフ」と呼ばれる、ポスターに商品のサンプルを張り付けて掲出し、通行人がそのサンプルを持って帰れるような展開や、駅にカプセルトイを設置して通行人に回してもらうような面白い展開は物珍しさから写真を撮りたくなります。サンプルやカプセルトイを手に入れることができた喜びを誰かにシェアしたいという心理から、バズが大きくなります。

出稿内容とコンテンツ、それぞれの要素の掛け合わせによってもバズが大きくなります。例えば、都内の駅1カ所でOOHを掲出するよりも都内の複数駅でOOHを掲出したほうがバズは大きくなります。しかし、一駅のみの掲出だとしても、現地に足を運ぶことができないファンに向けてキャンペーン参加を促すような投稿を公式アカウントから行い、SNSとの連動を図ることでツイート数が伸びる事例もあります。このようにバズに効く要素は多数あり、広告主は話題化目的でOOHを出稿する際に、どういったことを実施すればバズが大きくなるのかを検討できるようになりました。

OOH

バズ予測モデルを活用して、キャンペーンの成功率を上げる

バズの定義を定め、バズに影響する要素を探り、私たちは、バズの予測モデルを作成しました。広告主が予定している広告展開の金額やエリア、媒体、クリエイティブでの要素を入力することでバズの大きさがどれくらいになるかをシミュレーションできるモデルです。この予測モデルを使うことで広告主の予算や要望に基づきながら、バズる確率が高いプランを検討することができます。

例えば、同じ出稿金額でも掲出エリアを複数にした場合の予測、または、全国展開した場合と都内の一カ所で集中的にジャック感を出すような展開ではバズはどう変化するのかを予測することができるので、話題化を目的とした際に一番効果が見込めそうな展開を広告主は選択できるようになりました。

OOH

また、OOH掲出後には、ソーシャルリスニングレポートに加えて、予測モデルを活用した、次回のプランの検討も可能になりました。

実際に予測モデルを使ったところ、大きなバズは見込めないという結果が出たため、OOH媒体を増やす、もしくは実施するエリアを増やすといったいくつかの選択肢を基に、検討を進めた事例もあります。

OOHはバズの予測モデルを通して、X(Twitter)上でのバズを予測でき、さらに効果検証もできるフェーズに入ってきています。

また、多くの事例を過去に研究してきたことから話題化目的でOOHを実施したいと考えている広告主へデータなどを示して、さまざまなコンサルティングも行えるようになってきています。

OOHは今までテレビのリーチを補完するために実施されることが多かったのですが、私たちはX(Twitter)上でのバズを観測することで、OOHの新たな価値や可能性を見いだせるのではないかと引き続き研究を重ねております。気になられた方は、下記の連絡先までご相談ください。

お問い合わせはこちらまで:
OOHソーシャルリスニングプロジェクトチーム
Email:ooh_sociallistening@group.dentsu.co.jp


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