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想像力を刺激する!「音声AR」の可能性

2018/04/27

音声ARサイト
音声ARサイト:https://onsei-ar.jp/

AR(Augmented Reality=拡張現実)というと「映像」のイメージが強いと思いますが、「音」で現実世界に情報を付加するのが音声ARシステムです。

同システムに対応したスマホアプリなどを用いて、ユーザーにさまざまな音声情報を送ることができます。電通ライブと、インタラクティブコンテンツで知られるクリエーティブカンパニーのバスキュールが共同開発し、今年1月に発表しました。

音声ARの仕組み
ユーザーの位置を把握し、事前にプログラムされた音声情報や音楽を再生する。オペレーターによる特定グループへの配信も可能。スマホアプリなどにユーザー属性や行動履歴を蓄積できるため、会場の演出や動線のPDCAの検証にも活用できる

このシステムは、電通と電通ライブも実行委員として名を連ねた「FINAL FANTASY 30th ANNIVERSARY EXHIBITION 別れの物語展」(以下「別れの物語展」)で初導入されました。

関連記事:「ファイナルファンタジー」誕生30周年、「別れの物語展」を六本木ヒルズで開催
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「別れの物語展」の来場者には、音声ARシステムを組み込んだアプリが利用できるスマートフォンとヘッドホンが手渡され、展示物や来場者の属性と連動するさまざまな音声演出が話題を呼びました。

この音声ARシステムで、実際にどんなことができるのかを紹介します!

音声ガイダンスはもっと進化してもいい

なぜ、展示会の音声ガイダンスはいつまでも、自分でボタンを押したりしなければ動かないシステムのままなのだろうか?

美術館によく通う自分にとっては、ずっと疑問でした。技術面だけで見れば、展示物の前に立つだけで、作品の解説が自動で流れてくるような音声ガイダンスが“当たり前”になってもいい時代です。

しかし、自分自身が美術展の仕事に取り組むうちに、音声ガイダンスが進化しない理由が見えてきました。例えば美術館側の受け入れ態勢、来場者のデジタルリテラシーの課題などです。

壁は高い。でも、それは逆にチャンスでは?

美術館側も積極的に取り入れたくなる新しいガイダンス体験はできないだろうか。来場者の操作を必要とせず、通常の回遊体験を阻害しないガイダンスはつくれないだろうか。そんな開発欲のもと、つくり出したのが音声ARシステムです。

美術館、観光地、店舗…音声ARシステムの使いどころ

このシステムが目指したのは、

  • ユーザーの位置情報と、ユーザーの属性に応じた音声や音楽の出し分け

それだけです。でも、適用できるシーンや使い方は多種多様です。ここでは音声ARシステムの導入シーンを五つ紹介します。

①美術館

館内に設置したビーコンで来館者の位置情報を正確に把握し、ヘッドホンを通じて音声を自動再生できます。作品前に移動するだけで作品に関連する解説ガイダンスやBGMを聴くことができる、不思議な展覧体験が実現します。

美術館

②観光地

事前のアンケート入力内容や行動履歴、その学習分析にしたがって、観光客ごとに異なる音声を出し分けるサービスを提供できます。来訪モチベーションをつくる街おこし施策や、多国語対応によるインバウンド向け施策も考えられます。例えば五重の塔に初めて訪れた中国人観光客にだけ、「五重の塔は〜」という解説を中国語で流すといったことができます。

観光地

③屋外イベント

音声ARシステムを組み込んだスマホアプリを起動している人に対して、同時刻での一斉配信や、場所・属性で分けた特定グループへの個別配信ができます。音声ARならハンズフリーにできるので“歩きスマホ”の心配もなく、一風変わった街中での宝探しイベントやオリエンテーリングを実現できます。

屋外イベント

④音出し禁止エリア

動画や光のモーションをトリガーに、声や音楽を自動再生できます。個々人のヘッドフォンに対して、屋外広告で動画に合わせた音声再生や、イルミネーションの照明演出に合わせた楽曲再生ができるので、公道や商業施設など、普段から音出しが禁止されている場所での演出に効果的に使うことができます。

音出し禁止エリア

⑤常設店舗

このシステムは単に音声情報を発信するだけではなく、体験者の回遊軌跡や滞在データを、属性とともに記録できます。店舗に常設すれば、来店客の興味・関心の分析、導線やレイアウト検討に役立つでしょう。

システムの特徴と使用イメージをつかんでいただけましたでしょうか。この五つのシーン、実は、美術館用として「別れの物語展」で導入した後に気付いたものがほとんどです。実際にお客さまに使っていただく中で、「こういう使い方もできる」とイメージが固まってきたのです。

改めて気付いた、音ならではの効果

「別れの物語展」での導入は、“音ならではの特長”も二つ再認識するきっかけとなりました。

特長1:音は、目の前の「本物」を引き立たせる

視覚情報に寄った従来のARでは、目の前の展示物や風景に対して、スマートフォンなどのモニター上に補足情報や演出効果を出していました。しかし、モニター越しの体験では、せっかく目の前に「本物」がある意味がありません。

音だけの情報や演出は、展示物や風景そのものから目をそらすことなく、より深い体験を実現できるのです。

別れの物語展
「ファイナルファンタジーXV」の精巧なフィギュアやスケッチそのものを引き立たせる展示と音声ガイダンス

特長2:音は、美しい記憶への引き金

人間の得る情報量の約8割を占めるといわれる視覚情報。その視覚情報が足りないとき、人は自らの想像で、それを補おうとします。この想像力を喚起する力が、音声にはあります。

「別れの物語展」では、「ファイナルファンタジーX」で主人公とヒロインの声がこだまする幻想的な空間を、「ファイナルファンタジーVII」でヒロインの声が埋め込まれた思い出の場所を再現しました。キャラクターのセリフから自分がゲームをプレーしていた時代を思い出し、涙している方もいらっしゃいました。音は、美しい記憶を汚さずによみがえらせてくれます。

別れの物語展
数々のゲームシーンとともに主人公とヒロインの声がこだまする幻想空間
別れの物語展
悲劇のヒロインのセリフが埋め込まれた思い出の教会

音声ARシステムもできたばかり。これから、どんどん発展させていきます。適用シーンや用途も、まだまだあるはず。

音ならではの特長をヒントにしながら、音でしか表現できない拡張現実を皆さんと探っていけたらと思っています。

https://onsei-ar.jp/