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ワカモンのすべてNo.9

イベントに熱中する若者マインドを読む

2014/03/26

いま若者たちの間で、リアルな場としてのイベント参加熱が高まっている。夏フェス、ハロウィンのような季節イベントだけでなく、何か事あるごとに名前を付けてイベント化して楽しもうとする若者のマインドとは――?
イベントに向かう若者たちを突き動かすものは一体何であるのかを、高校生総合文化祭として今年15年目を迎えた「青二祭」運営メンバーへのヒアリング内容をもとに考察する。


高校生が主体となってつくる「青二祭」とは?

近ごろ、若者研究部による実態調査のキーワードとしてよく上がってくるのが、イベントへの参加意欲の高まりだ。

今回その事例として注目したのが、2000年に第1回が開かれ、以降バンド、ダンス、ショーを3本柱に数々の高校生パフォーマーを輩出してきた「青二祭」。FM世田谷の高校生番組「ハイスクールHotパーティー」の中から派生したこの音楽イベントは、「出演者が日頃の練習を発表する場、皆が楽しめる全員参加型のお祭り」というコンセプトのもと回を重ね、今年第15回を迎える。

初めは世田谷区の区民ホールが会場だったが、だんだんと出演者のジャンルや出身地が広がり、2007年前後にはSNSの影響もあって一気に知名度が向上。そして2011年の第12回からは会場を赤坂BLITZに移し、一躍メジャーなイベントとなった。今年は北は新潟・岩手、西は京都から応募があった。

学生が中心となって行う音楽フェスは他にもあるが、青二祭の最大の特徴は、出演者、運営スタッフともにすべて高校生が担い、学校という枠を超えて、企画、営業、広報、出演チームのPV制作までを自分たちの力で行っているところだ。第11回までは青ニ祭実行委員会とFM世田谷が主催、世田谷区が共催という形だったが、第12回から本部事務局が立ち上がり、現在のスポンサー企業はあくまで高校生の活動を陰ながら支援するという形を保っている。

まずアクション、目標と結果は後から付いてくる

出演者の中からはデビューを果たすアーティストも現れ、全国の高校生パフォーマーの登竜門としてのステータスを築きつつある青二祭。そんなイベントを作る高校生は…と勝手な想像を膨らませながら今回その運営を担う実行委員会メンバーに会ったのだが、みな音楽やダンスが特段好きというわけでもない、ごくごく普通の高校生ということに少し驚いた。

運営メンバーはどうして青二祭に関わろうと思ったのか? 第15回青二祭実行委員長を務めるTさん(高3・女)は「高1の時にOGの誘いで行ってみた赤坂BLITZでの衝撃がすごくて、次は絶対自分も一緒にこのイベントをつくりたいと思った」、同広報班長のS君(高3・男)は「実行委員会には他校から、たとえばデザインとか動画制作とかいろんな特技を持った人が集まってくると聞いて、自分も何か刺激をもらえるのではないかと思い参加した」とそれぞれの動機を話してくれた。

第11回で実行委員を務めたOGであり、現本部事務局のUさん(大3・女)は、当時の自身の心境をこう振り返る。「何となく惹かれるものがあって参加してみたが、私の場合は学校じゃできないことを外部の青二祭に求めていたような気がする。最初から『何をこうしたい』というのが明確にあったわけではなく、まずアクションを起こせる場が青二祭にはあって、参加してみんなと関わってやっていくうちに目標と結果が付いてきた感じ」

3人のメンバーに共通して言えるのは、イベント参加のきっかけは「何となくやってみたい」という、あくまで自己内の潜在欲求であることだ。従来、そういうまだ言語化されない欲求でイベントやプロジェクトをまとめることはできないように思われたが、今はその欲求を受け入れ、発信できるメディアが増えたことで実現への土壌ができたと見ることもできる。

初年度は知り合いのつてで実行委員メンバーが決まっていったが、翌年以降は青二祭に観客として参加して憧れを持ち「一緒につくりたい」と志願してくるケースが増え、ここ数年はSNSの影響もあり応募が殺到。75人の実行委員枠をめぐって抽選が行われている状況という。

コミュニケーションを使い分ける若者たち

いま若者たちがこうしたイベントに積極的に参加するようになった理由を考える時、リアルの対極にあるネットの影響は無視できない。いわゆる、リア充だ。

実行委員長のTさんは「私自身は音楽をネットで楽しもうという発想がもともとなくて、ライブの後で出演バンドをもう1回聴きたくなってYouTubeを見てみたが、やっぱり全然別物と感じた」と観賞面でのリアルの優位性を強調する。さらに広報班長のS君は「実際足を運ぶと、例えば青二祭だと熱を感じるし、高校生がやってるっていう裏とかも見れるし、そこでもリアルを感じるっていう…。僕自身、青二祭をやってきて、そういうネットにはない価値に気付いたところがある」

では、高校という確たるコミュニティーに属しながら、イベント運営を通してまた新たな人間関係を築いていくということについては、どう捉えているのだろうか?

S君は「学校っていうコミュニティーがあって、単にもう一つコミュニティーが増えたという、ただそれだけの感覚」と話す。他には、学校よりも多様な人間が集まる青二祭には「日常生活化している学校にはない、仲間で共有できる目標がある」「話題と情報が多く、話していて発展性がある」など、人により位置付けはさまざまのようだ。

首都圏を中心に32校から75人のメンバーが集まって組織する実行委員会のコミュニケーションには、主にLINEとFacebookを使う。ちなみに委員長のTさんが登録するLINEグループは約50。各班との事務連絡用のほか、遊び仲間もメンバーごとに細かくグループ化されているという。

一方で、月に1~3度は会議を持つなど、リアルなコミュニケーションも重視する。「LINEは仲悪くなるっていう先輩からの忠告もあって(笑)、LINEはあくまで連絡用のツール。大事なことは実際会って話さないと意志や感情までは伝わらないと思うので」とS君。休日にもかかわらずこの会議を楽しみにしているメンバーも多く、青二祭の伝統の一つになっている。

「等身大」イベントの価値を最大限に生かす

運営メンバーの主力は高2生。受験のある3年生は一度抜けることになるが、進路が決まると卒業までのわずかな時間でも戻ってきてイベント制作に熱中するという。そこまでにモチベーションが保てる理由は一言で言うと何なのか、ずばり聞いた。

「特に突出した特技もないような高校生が力を合わせればこんなに大きなイベントができる。『やればできる』っていう肯定感ではないか」と広報班長のS君。一方で最近の若者たちを総じて「内向き」「覇気がない」と評する大人たちに対しては、「反骨心みたいなものはあるけど反発はしない。実際、学校とかにはそういう人もいて、学校では自分もそこに同化する部分もある。だから世代というよりも自分のことが一番大事で、自分たちは違うよねって完結しちゃうだけで、それに言い返すことはしない」と、発露には至らないまでも、世代でくくられることへの違和感について漏らす。

15年目を迎えた青二祭。出演希望者が増えて審査制になり、3年前からは赤坂BLITZが会場となるなど、高校生イベントとしては前例のない成長を遂げてきた。ではこの先、青二祭が目指すものは――?

「武道館や東京ドームで青二祭を開催するのって、何か違うと思う。あくまで高校生の身の丈に合った規模で、無理をしない程度にずっと続いていってほしい」と本部事務局のUさん。さらに、実行委員長のTさんは「これまではみんなで出演者が輝く場所をつくろうと思ってやってきた。でも今年はもっと、例えばフツーに私なんかと一緒に授業を受けてるような高校生たちを舞台に上げて、より広い高校生に発信できるような企画も考えている」と話す。

出演者も運営スタッフも次代へ、また次へとバトンをつないできた中で、恐らく変わってきたものはあるだろう。しかし、「等身大」「全員参加型」のイベントとして高校生の欲求をかなえられる場所であるということは青二祭に関わる全員の共通認識であり、変わることのない願いであるようだ。

かつて、周りより少しでも早く大人になりたいと背伸びをし合った世代だが、ある意味いまの若者たちの方が自分たちの本当の価値を知り、その未来を直視しているようにも見えないか。


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【ワカモンプロフィール】
電通若者研究部(通称:ワカモン)は、高校生・大学生を中心にした若者のリアルな実態・マインドと 向き合い、彼らの“今”から、半歩先の未来を明るく活性化するヒントを探るプランニングチームです。彼らのインサイトからこれからの未来を予見し、若者と 社会がよりよい関係を築けるような新ビジネスを実現しています。現在プロジェクトメンバーは、東京本社・関西支社・中部支社に計14名所属しています。ワカモン Facebookページでも情報発信中(https://www.facebook.com/wakamon.dentsu)。