ソーシャルデザインの時代を生きる #02

自分自身を掘り下げていくこと

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    福井 崇人
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

ソーシャルデザインというと、つい社会の側に関心が向かいがちだと思います。けれども私たちは、書籍『『希望をつくる仕事ソーシャルデザイン』のために実施した多様な人たちへのインタビューを通じて、ソーシャルデザインを起こすには、まず自分自身を深く知ることが大切なのだということを強く確信しました。そこで、本の中では「ソーシャルデザイン力チェックリスト」と称して、自分の個性を掘り起こすためのツールを提供しています。

チェックリストはソーシャルプロジェクトが生まれる7つのステップと関連づけ、ソーシャルデザインを起こす人たちに共通してみられる個性と紐付けて、①感知力(問題にきづく)、②理解力(詳しく知る・感じる)、③協働力(仲間を増やす)、④構想力(アイデアを発明する)、⑤改善力(アイデアを磨く)、⑥実行力(実行する・アクションする)、⑦継続力(ふりかえる・つなぐ・まわす)という7つの項目から合計21のポイントを抽出しました。

            
そこには、「自分の長所を知っている」「気持ちに素直である」といった、ビジネスの世界の表現としては少し曖昧なものも含まれています。日常生活に忙殺されると、つい自分を見失ってしまうことも少なくないかもしれませんが、ソーシャルデザインを立ち上げる上では、自分を突き詰め、自分が何者なのかを理解することがまず大切なんですね。

漫画家の井上雄彦さんが、まさにインタビューの中でおっしゃったのが「自分以外の何かに、なろうとしなくていい」というひとことでした。井上さんは車いすバスケの世界を描いた「リアル」という作品や、スラムダンク奨学金の他、東本願寺「親鸞」の屏風画の派生商品の売り上げを東日本大震災に寄付するなど、本業を通じてさまざまな社会貢献活動を行っていますが、ソーシャルな活動はあくまでもご自身の活動の延長線上にあったものだとおっしゃっています。無理に社会に良いことをしようとするのではなく、自分のやりたいことを突き詰めた上で、そこに社会と重なることが見いだせたなら、それに取り組んでいけばいい、というスタンスなのです。自分自身を徹底的に掘り下げていくというスタイルはまさに井上さんの作品づくりそのものであり、井上さんのこの言葉は、この本をつくる上でとても重要なキーワードとなりました。

誰もがそれぞれ、自分にとってのテーマを持っていると思います。そしてそれがそれぞれ違っているから、きっといろいろな可能性が生まれてくるのです。ソーシャルデザインとは、枠にはまらずに、自分自身の生き方を突き詰めることから生まれてくるものなのでしょう。

プロフィール

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    福井 崇人
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    1991年入社。電通ソーシャル・デザイン・エンジン代表。NPO 2025 PROJECTの代表理事。クリエイティブディレクター/アートディレクター。カンヌ、NYADC、ADCなど数々受賞。金沢美術工芸大学、熊本大学、上智大学、宮城大学非常勤講師。書籍のプロデュースに 『たりないピース』(小学館)、『Love Peace & Green たりないピース2』(小学館)、『エコトバ』(小学館)、『世界を変える仕事44』(ディスカバー21)、『この子を救うのは、わたしかもしれない』(小学館)、『希望をつくる仕事ソーシャルデザイン』(宣伝会議)。

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