前例を創ろう鼎談No.2
前例を創ろう 後編
2016/02/03
「解放」が日本を元気にし、
世界の前例を創る。
組織の“縛り”から、いかに自分を解放するか
国見:⑦バングラデシュでは、戦後復興した日本を「奇跡の国」と呼んでいます。その時の底力には、日本を元気にするヒントがある。そこで必要なのは、日本人の持つ力をどうアウトプットするか。単に動くだけで得られるアウトプットでは訴える力が弱くなります。単に動くだけでなく「解放」に近い動き方かもしれません。自分が感じたものを、どう解放するかが大切になると思います。
隈:そのためには、まず組織の在り方を見直すべきでしょう。会社だけでなく、いろいろな組織です。今はみんなが周りの組織を気にし過ぎて、組織が人々の“縛り”になっています。「解放」は的を射た言葉で、そういった組織をいかに忘れるか。日本人は気付きの力があって、クリエーションにたけています。その力を自由に組織横断すればもっとできるはず。“組織を気にしない”ことが、解放なのかもしれません。
布袋:いろいろな意見の中で、今はネガティブなものばかりが広がってしまいます。日本という組織の中で、みんなが日本的であることに遠慮し気を使っている状態。日本人のきめ細かさが、日本人を小さくしてしまっているのかも。だからこそ、「解放」は考えるべきテーマかもしれません。自分が発信するのはもちろん、大胆なものを寛容に受け入れることも大切ですよね。
国見:例えば高齢化社会も、それ自体はけっして悪ではないと思うんです。現時点では奇跡の国をつくり上げた世代の方がたくさんいる社会なわけですから。ただ、それをネガティブにばかり捉えてしまう視点が悪なのではないでしょうか。固定観念に負けないで、そこに本質的な視点を見つけて、それを受け入れた上で新しい価値を生み出す。その勇気が欲しいですね。
ゴールを描こうとせず、プロセス自体をゴールにする
国見:日本人が「解放」によって、そのDNAを発揮するためにはどんなことを意識すべきでしょうか。
隈:思い切って動いてみることだと思います。僕が⑧パリに事務所を開いたとき、実は向こうで仕事があるか分かりませんでした。でも思い切って事務所をつくると、自然と現地の人とつながり会話をしたりするようになって、そのうち仕事が成立するようになりました。その行動が大切で、一般的にはマーケティングをして計画を立ててから海外進出するのが手順だと思うのですが、先に動いてみるのもひとつの手段ですよね。
国見:まず踏み出すことですね。今はビジョンやゴール設定、それこそコンセプトが問われやすいですが、それだけではないと。
隈:建築でいえば、ゴールは見えないんです。むしろ見えると面白くない。それよりもプロセスを楽しむこと。ゴールの絵を描こうとせず、プロセス自体をゴールにする。海外進出するにも、まず現地に行って信頼できるコネクションを見つける。全体の計画やコンセプトを重視し過ぎない。その場に行くと始まることがあります。
布袋:僕も、ゴールよりスタートが好きです。ゴールが近づいたら、やめて新たなスタートをしたくなるくらい(笑)。⑨ロンドンでの活動を始めたのもそれが理由。一からのスタートをしたかったんです。ゴールを狙ってもゴールにたどり着けるわけではないし、そこから別のゴールが見つかるかもしれない。だからこそ、スタートとプロセスを重視する。僕も3年前にロンドンで再スタートして、今年35周年を迎えられてよかったと思っています。
国見:極端にいえば、計画や目標を立てるから失敗が生まれるという面もあるかもしれません。だからこそ、まずは目の前にあるプロセスを日々ベストの方法でやっていく。動いてみる。お二人の話からはそういったヒントを感じます。そしてそれが、日本人や日本企業が「解放」し、世界の中で力を発揮する鍵になるのかもしれません。
布袋:日本ではよく、世界的なスターを指して「世界の○○」と言いますよね。でもそれは、裏を返せば世界と日本が別のところにあるような表現で、どこか線を引いている気がします。そうではなく、世界の中に日本があると思いたいですよね。当たり前にそう思えれば、競争もマーケットもきっとプラスになるのではないでしょうか。海外進出するにも気張る必要はないし、スタートとプロセスを重視できるはず。僕はそう思っています。