広告同人誌こみゅしふ〜僕と野良袋の思考的冒険〜 #06

広告会社の自覚。お金ではないものも流通する市場をつくるということ。

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    並河 進
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター ソーシャルデザイナー/クリエーティブ・ディレクター/コピーライター

並河:前回では、「自覚」というキーワードが出ました。広告人の中には、社会的に価値のある「視点」があるのに、それを自覚していない、と。

野良袋:そう、そう。

並河:その視点のひとつとして、前回は、広告人に特有の「理解しえぬものを受け入れようとする視点」というものを挙げました。
僕は、他にも、実は、もっとあるような気がするんですよね。

広告会社の仕事って、お金だけでなんとかなるようなたぐいの仕事じゃない。
たとえば、電通が中心となって、ある社会的なプロジェクトを立ち上げるとするじゃないですか。
そのプロジェクトには、著名アーティストも参画する。番組化もする。クライアントの協賛も集める。としたときに、決して、お金だけが流通しているわけじゃなくて、いろんな人のいろんな思惑が行き交って、パズルのピースが組み合わさるようにして、初めてそのプロジェクトは実現する。 その調整を電通はしているんですよね。

野良袋:なるほど。

並河:でも、そういう様子を、外部の人からすると「電通という名刺を持った、職業が分からない人がやってきて、大きなプロジェクトを、なぜか裏で仕切っている」と見える。

野良袋:……。

並河:これも「自覚」すればいい問題のひとつだと思うんです。
裏でよく分からない動きをしている人たち、ではなく、お金とお金じゃないものの両方をうまく行き交うようにして、何かコトを実現する存在、というか……。

野良袋:行き交う……それは、一言でいえば、「市場」だな。

並河:「市場」ですか……。

野良袋:だいたいが、人間の世界の「市場」というものは、単調すぎるんだな。 お金←→サービス・モノの交換だけが、「市場」と呼ばれている。実に、狭い。
で、その枠に入らないものを、「思いと思いがつながって実現した」とかなんつーか、漠然としたエモーショナルな表現にしちまう。そんなんじゃないんだよな。
実は、きっちりと何かは交わされているわけよ。それがただ単にお金じゃないだけで。
そのあたり、グラミン銀行をつくった、ムハマド・ユヌスはいいこと言ってるんだな。
並河:その話は、次回に。

プロフィール

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    並河 進
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター ソーシャルデザイナー/クリエーティブ・ディレクター/コピーライター

    1973年生まれ。
    電通ソーシャル・デザイン・エンジン代表。
    社会貢献と企業をつなぐソーシャル・プロジェクトを数多く手掛ける。「電通ギャルラボ」代表。ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン・クリエーティブディレクター。上智大学大学院、東京工芸大学非常勤講師。受賞歴に、ACCシルバー、TCC新人賞、読売広告大賞など。著書に『下駄箱のラブレター』(ポプラ社)、『しろくまくんどうして?』(朝日新聞出版)、『ハッピーバースデイ 3.11』(飛鳥新社)、『Social Design 社会をちょっとよくするプロジェクトのつくりかた』(木楽舎)他。

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