広告同人誌こみゅしふ〜僕と野良袋の思考的冒険〜 #04

絶対的な「主義」の危険性、あるいは「ふわふわ主義」。

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    並河 進
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター ソーシャルデザイナー/クリエーティブ・ディレクター/コピーライター

並河:絶対的な思想などない、というのが今の時代のトレンド、というのが前回の話でしたよね。その話で、最近、僕が一つ考えていることがあるんです。

僕は、ずっと「資本主義」という言葉に疑問を感じていて。「資本主義」ってことは、「資本」つまり「金」がいちばん大事ってことじゃないですか。それって嫌だなあと。そんなとき、僕が尊敬するサティシュ・クマールという哲学者がこんなことを言っていたんですよね。

「資本主義は資本がいちばん。社会主義は社会がいちばん。それはどちらもおかしい。いちばん大事なのは生命。人間は、生命主義にならなくちゃいけない」と。僕は深く感動したわけです。

野良袋:ふーん。

並河:サティシュ・クマールは、「我思う、故に我あり」というカント・デカルトの自己中心的な世界観から、「他者を思うことで、初めて自分は存在する」という利他的な世界観への転換も訴えていて。

でも、伊藤計劃 の「ハーモニー」という小説があるじゃないですか。あの小説って、世界中が生命主義や利他的な考え方に支配された未来を描いていて、それはそれで、息が詰まるような世界なんですよね。

そこで僕は思ったのは、結局、「資本主義」であれ「生命主義」であれ「利己主義」であれ「利他主義」であれ、「主義」というものは、その「主義に収まらない人」を排除する危険性を持っているのではないか、と。

野良袋:なるほどな。いよいよアドマンの「いや、こういう別の見方をすれば」的考え方の出番だな。

「主義にしばられない主義」、それを、たとえばそうだな……「ふわふわ主義」とか名付けて、広告の思想として堂々と訴えればいいんじゃないの。

並河:ふわふわ主義、ですか……。

広告的な思考をあらわすのに、ぴったりの「主義」ですね。

野良袋:……「ふわふわ主義」とは言っていなかったけれど、倫理学の世界では、そうした考え方を、第二次世界大戦の後、エマニュエル・レヴィナスという学者が提唱しだしたんだよな。

並河:その話、くわしく聞かせてください。

次回に続きます。

プロフィール

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    並河 進
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター ソーシャルデザイナー/クリエーティブ・ディレクター/コピーライター

    1973年生まれ。
    電通ソーシャル・デザイン・エンジン代表。
    社会貢献と企業をつなぐソーシャル・プロジェクトを数多く手掛ける。「電通ギャルラボ」代表。ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン・クリエーティブディレクター。上智大学大学院、東京工芸大学非常勤講師。受賞歴に、ACCシルバー、TCC新人賞、読売広告大賞など。著書に『下駄箱のラブレター』(ポプラ社)、『しろくまくんどうして?』(朝日新聞出版)、『ハッピーバースデイ 3.11』(飛鳥新社)、『Social Design 社会をちょっとよくするプロジェクトのつくりかた』(木楽舎)他。

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