広告同人誌こみゅしふ〜僕と野良袋の思考的冒険〜 #03

「いや、こういう別の見方をすれば」という考え方を思想レベルに引き上げられるか。

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    並河 進
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター ソーシャルデザイナー/クリエーティブ・ディレクター/コピーライター

並河:今週もよろしくお願いします。

野良袋:あ、よろしく。

並河:「広告とは何か」を思想的に考える、のが、このシリーズの目的なんですが、僕がずっと不満に思っていたのが、広告業界の人って、思想的な話、たいてい苦手ですよね。

野良袋:そうは限らないと思うけれど。

並河:いや、苦手ですよ。僕が、なんか熱く「世界はこうあるべきだ」みたいなことを語ると、たいていの広告関係者は苦笑いを浮かべるわけです。「まあ、そういう考え方もあるけどさ」と。

野良袋:……うむ、そのかわしかたこそ、アドマンの真骨頂、いや習性だな。

並河:僕は考えました。なんで、「かわすんだろう」と。

すると、広告づくりという仕事と、絶対的な思想を嫌うというアドマンの習性には密接な関係性があるのではないかという風に考えるに至ったわけです。

つまり、広告という仕事は、自分の好きな商品であれ、そうじゃない商品であれ、「この商品を魅力的に伝えよう」というのが仕事なんですよ。自分の好きな商品なら、シンプルですよね。その気持ちで広告をつくればいい。そうじゃない商品の場合、僕らは考えるわけです。「いや、でも、こういう見方をすれば、この商品は実は魅力的なんじゃないか」と。

そういう作業を繰り返すうちに、「いや、こういう別の見方をすれば」という思考法が体の奥まで染み付いている。常に腰を軽くして、左右どっちにもぴょんとジャンプできるような体勢でいつもいる感じ。

だから、ある人が、熱く「絶対的思想」を語りだすと、アドマンは、ぴょんと横に飛んじゃうわけですよ。反射的に。

野良袋:なるほどな。広告にとって、「絶対的思想」とは宿敵なわけだ。でもさ、「絶対的思想」に抗う反射神経を持つ、というのは、アドマンの美点ともいえるんじゃないか。

並河:そうですかねえ。僕はずっと、「主体的に世界をこうしていこう」という、絶対的な思想を持たない広告というものに、いらだちを覚えてきたんですが。

野良袋:まあ、いいところと悪いところは表裏一体だからな。アドマンの腰の軽さは、裏目に出ると、「うつり身の早さ」「自分がなさすぎる」みたいにとらえられるかもしれない。

でもさ、前回も構造主義のところで話したけれど、そもそも、「絶対的な思想なんて幻想さ」というのが、今の時代のトレンドだから、広告はそういうトレンドと相性はいいよな。

広告で思想やりたいんだったら、「いや、こういう別の見方をすれば」という考え方を、思想レベルまで強化して、がっちり打ち立てればいいんじゃねえの?

並河:次回以降、この話をもうすこし掘り下げましょう。

次回に続きます。

プロフィール

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    並河 進
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター ソーシャルデザイナー/クリエーティブ・ディレクター/コピーライター

    1973年生まれ。
    電通ソーシャル・デザイン・エンジン代表。
    社会貢献と企業をつなぐソーシャル・プロジェクトを数多く手掛ける。「電通ギャルラボ」代表。ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン・クリエーティブディレクター。上智大学大学院、東京工芸大学非常勤講師。受賞歴に、ACCシルバー、TCC新人賞、読売広告大賞など。著書に『下駄箱のラブレター』(ポプラ社)、『しろくまくんどうして?』(朝日新聞出版)、『ハッピーバースデイ 3.11』(飛鳥新社)、『Social Design 社会をちょっとよくするプロジェクトのつくりかた』(木楽舎)他。

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