テレビとソーシャルメディアのさらにいい関係 #05

初のソーシャリンピックス〜2012年ロンドンオリンピック

  • Take 02 6559 hirota
    廣田 周作
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター
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    濱野 智史
    情報社会学者・批評家・日本技芸リサーチャー

廣田: 2012年のオリンピックは、ソーシャルメディアが普及して初めてのオリンピックということで、前例がないので比較自体は無理なのですが、非常に“つぶやかれた”という結果がありまして。

濱野: 「ソーシャリンピックス」なんて言われていましたね。

廣田: はい。日本だけでなく、世界的にも注目されました。実際、ツイッター社によると、北京オリンピックの125倍のつぶやきがあったと。北京のときにはツイッターのユーザもまだ少なかったので、この数字をどう捉えるかはおいておくとしても、全体で1億5,000万のツイートが集まったことは驚きでした。

また、選手自身もソーシャルメディアを当然のようにやっていて、ファンに向けて直接メッセージを発していたこともロンドンオリンピックの特徴です。IOCも、The Olympic Athletes' Hubという形で、各選手のページのリンク集をつくって、応援のための動線を紹介していました。結果、ソーシャルメディアでも、すごく盛り上がったわけですが、僕はその理由は3点あると思っています。

1つは、「選手との距離」が圧倒的に縮まったということ。これは最近人気のアイドルにも言えるかもしれないんですけど、遠い国で選手が頑張っている姿を見ながら、ほぼ同時に、自分のタイムラインに直接「みんな、ありがとう」という選手の肉声が届くようになりました。

濱野: それってすごく大事ですよね。試合に出る前になって、いつもはつぶやいている選手もつぶやかなくなったりすると、そこで「緊張感」も共有できてしまうわけです。選手が感じているであろうハラハラドキドキ感まで、ソーシャルメディア上の挙動を通じて共有できてしまう。

廣田: ええ。そうなんです。距離を変えたことは大きいと思います。2つ目は応援の声、つまり感動や驚きをみんなで共有できるようになったということです。昔であれば、深夜に居間でテレビを見ながら一生懸命応援したって、誰ともつながることができなかったと思うんですけど、ソーシャルメディア上でハッシュタグを入れれば、みんなの驚きの声とか、感動の声みたいなところが共有できるようになりました。

3つ目は、盛り上がっている競技に気がつきやすくなったことです。例えばアーチェリーのように、事前にあまりメディアに注目されていなかった競技でも、日本人選手が活躍したことによって、話題が拡散し、瞬時に盛り上がりました。ソーシャルメディアには瞬間的に拡散する力があるので、盛り上がっているものを見逃すことが減ったのではないでしょうか。

こうして見てみると、今回のオリンピックは、つぶやきの数もさることながら、視聴のスタイルを変えたことも大きいように思います。深夜の時間帯だったにもかかわらず、というか、ある意味、深夜の時間帯だったからこそ大声を出せないという制約などもあり、ソーシャルメディアで盛り上がった、みたいなことも言えるのかなと思っています。

濱野: なるほどなるほど。深夜だからこそ、リアルの大声を上げるわけにはいかない。だからソーシャルメディア上の「実況」でみんな大声を上げて共感し合ったのだ、と。それは絶対ありますね。

次回へ続く 〕

プロフィール

  • Take 02 6559 hirota
    廣田 周作
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    2009年に電通入社。企業のソーシャルメディアの戦略的活用コンサルティングから、デジタル領域における戦略策定、キャンペーン実施、デジタルプロモーション企画、効果検証を担当。社内横断組織「電通ソーシャルメディアラボ」「電通モダン・コミュニケーション・ラボ」などに所属。著書に『SHARED VISION』(宣伝会議)。

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    濱野 智史
    情報社会学者・批評家・日本技芸リサーチャー

    1980年生まれ。慶應義塾大大学院政策・メディア研究科修士課程修了、国際大グローバル・コミュニケーション・センター研究員を経て、現在はウェブ関連サービス会社の日本技芸でリサーチャーを務める。2011年から朝日新聞論壇時評委員、千葉商科大非常勤講師を兼務。専門は情報社会論・メディア論。ウェブサービス、ネットコミュニティーの社会学的分析や、一般ユーザーの実態調査(フィールドワーク)を手掛けている。主著に『アーキテクチャの生態系』(08年、第25回テレコム社会科学賞・奨励賞)、『日本的ソーシャルメディアの未来』(佐々木博氏との共著。11年)、『希望論』(宇野常寛氏との共著。12年)など。

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