“社会”からリソースを得る「ソーシャル・ソーシング」の可能性 #03

マスメディアとクラウドファンディングの幸せな出合い

  • 蓮村 俊彰
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

社会から必要なリソースを提供してもらうことで、社会の皆と共創していく仕組み「ソーシャル・ソーシング」。連載第1回2回では、インターネットを介して広く個人から支援金を集める仕組み「クラウドファンディング」を事例と共に解説しました。今回は、マスメディアとクラウドファンディングの幸せな出合いを2つ紹介し、その意義をまとめます。

 

◆広島テレビ「てれび de ふぁんでぃんぐ ひろしま」 のスタート

6月11日に広島テレビが、日本で初めての地上波テレビ放送と連動するクラウドファンディングプラットフォームをオープンしました。これは視聴者と広島テレビとが一体になってコンテンツをつくるチャレンジングな試みで、モール型クラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」内に出展する形で開始しました。その名も「てれび de ふぁんでぃんぐ ひろしま」。広島テレビが企画したプロジェクトを、てれび de ふぁんでぃんぐ ひろしまのウェブページで掲載し、募集期間内に必要な資金額の支援が集まった場合のみ企画が実現し、支援に対するリターンを支援者にお返しする仕組みです。人々のライフスタイルが変化する中、生活者が本当に望む価値を見極めていくことの重要性が高まっており、地域住民とともに新たなコンテンツやプロジェクトを共創していくプラットフォームとして広島テレビが全国に先駆け開始しました。

てれびdeふぁんでぃんぐ
2014年6月11日「てれび de ふぁんでぃんぐ ひろしま」プレスリリース

 

その第1弾として、「ママの心音で赤ちゃんが安心する子守唄『心音シンフォニー』をつくりたい」という企画が支援を募集中です(8月8日まで)。広島テレビは2003年から、安心して出産・育児ができるすこやかな笑顔あふれる社会づくりを目指す「子育て応援団」に取り組んでおり、「心音シンフォニー」もこの一環としてお母さん、お父さんの子育ての応援を目指しています。ファンディングしてくださった方には、お母さんの心音に生演奏を重ねて、世界に一つだけの「心音シンフォニー」を制作します。私も新米パパなので、個人的にも大変興味深いプロジェクトです。電通は主にクリエーティブ分野での協力を行っています。

心音シンフォニー
「てれびdeふぁんでぃんぐひろしま」第1弾「心音シンフォニー」

 

なお「てれび de ふぁんでぃんぐ ひろしま」の第2弾は、8月28日の「ピースナイター広島東洋カープ対東京ヤクルトスワローズ戦」を赤いTシャツを着て応援する「赤Tでピースナイターを応援しよう!プロジェクト」の募集が予定されています。

 

川崎の野菜を広めるためのラジオ番組を作りたい!

連載第1回からご紹介しているJ-WAVE「LISTENERS’ POWER PROGRAM」でいよいよ第2弾のクラウドファンディングが始まりました。第1弾では頂いた多数の番組アイデアから選考した上でファンディングを募り1つの特番を作りましたが、第2弾はできるだけたくさんの企画を採用していくレギュラープログラムになりました。その第1号は「川崎の野菜“かわさきそだち”を広めるためのラジオ番組を作りたい!」です。

かわさきそだち
川崎の野菜“かわさきそだち”を広めるためのラジオ番組を作りたい!

 

現在「工業地帯」のイメージが定着している川崎ですが、古くは徳川幕府膝元のおいしくて品質の高い野菜の産地であり、江戸時代には飢饉から人々を救った「のらぼう菜」という珍しい伝統野菜の産地でもあるそうです。そんな知られざる“かわさきそだち”野菜の魅力を広くみんなに知ってもらいたい!という川崎在住で野菜ビジネスを行う田村さんの情熱のもと始まったプロジェクトです。新米パパである筆者としては、食の安全にも興味があり、注目しております。これからも続々と集まる番組アイデアへのファンディングが、次々に始まっていく見込みです。

 

◆クラウドファンディングで集めるのは「お金」ではなく「仲間」

広島テレビやJ-WAVEの他にも、クラウドファンディングに進出している新聞社や放送局があり、この流れはますます広がると思います。

5月23日に株式型クラウドファンディングの実施を可能にする改正金融商品取引法が成立し、新聞などで大きく取り上げられました。「クラウドファンディング」という言葉も大分世間に浸透してきたと思います。

クラウドファンディングは「ファンディング」と言う名前がついているのでお金集めの手段・手法と捉えられがちです。もちろん、それは間違いではありません。しかし、クラウドファンディングを成し遂げるための心構えにおいて、お金を集めるというのはあくまでファンクションであり、本質的に集めるべきは「支持・共感」であり「賛同者(仲間)」であるという意識が必要です。支持や共感が集まりムーブメントが広がっていけば、「お金」はおのずと付いてくると捉えた方が、本質を見誤らないと考えます。

クラウドファンディングは通常、発起人が中心となりソーシャルメディア上でPRを行い、共感が共感を呼び情報が波及していくことで出資を伸ばしていきます。

発起人がつながりのある100人に情報を伝え、その100人が共感し、またつながっている100人に共感を伝え、更にそのそれぞれがつながっている100人に共感を伝えれば100×100×100=100万人に共感が伝わることになります。ソーシャルメディア時代のなせる業です。しかしこれはあくまで机上の空論で、実際はなかなかそううまくいきません。

そこに強力な武器としてテレビやラジオといったマスメディアが関与すると最初の告知の時点で100万人にリーチする可能性があります。発起人自身がつながっていない不特定多数の人たちに一足飛びにリーチすることもできます。

マスメディアで発信した上で、発起人を中心としたファンドのメンバーがソーシャルメディア上で自らのストーリーを情熱をもって訴えかけ、その熱がSNS上で波及していくことで共感や支持の輪が拡大し、マスメディアがリーチしていた多くの人々の心を動かし仲間が生まれていけば、最終的にそのファンディングは非常に大きな成果を生むと思います。

もちろん、共感の伝播ではなくマスメディアの力で不特定多数に一度にコンタクトする場合、さまざまな価値観、倫理観の方に無作為に知れ渡るので、中には批判的な方もおり、諸刃の剣となる可能性もあります。しかし、この連載で提唱しているCSV(Creating Shared Value=共有価値の創出)を前提とするソーシャル・ソーシングの考え方としては、広く多様な価値観の存在する社会のフィルタリングを経てなお共感を勝ち得たプロジェクトこそが、大きく成功すべきだと感じています。

まだまだ試行錯誤の多いフィールドですが、クラウドファンディングとマスメディアの出合いは、「マスメディアとソーシャルメディアの共創の場」という幸せな出合いでもあるのかもしれません。

プロフィール

  • 蓮村 俊彰
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    学生時代にカメラマン業で法人化(起業)。約40カ国を取材。その後、社会的影響力のある組織でソーシャルビジネスを興したく電通に入社。電通主導のビジネスの新規開発に取り組む傍ら、空港民営化などのPFIコンセッション入札事業構想アドバイザリ業務などのPRE/PFIコンサルティング、新規商業施設開発事業構想コンサルなどに従事。
    事業開発例として、2013年日本初のクラウドファンディングによるマスメディア放送「LISTENERS’POWER PROGRAM」事業を構想、立ち上げに参画。2016年日本初のFinTech産業拠点The FinTech Center of Tokyo 「FINOLAB」の事業を構想、 設立に参画、現在も運営チームとして日々活動中。

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