ろーかる・ぐるぐる #35

ターゲットはキャリア志向のOL?

会社のJ先輩は退職後、夏を蓼科でのんびり過ごしていらっしゃいます。年に1回、若い連中と一緒に遊びに伺うのが恒例です。
何が楽しいかといえば直売所で買う新鮮な野菜や果物。トマトやキュウリ、レタスが安いのはもちろんのこと。ドレッシングでマリネすると生のままでも美味しいカボチャのコリンキー、パイナップルの缶詰とジャムにすると酸味が楽しいルバーブ、鍋でぐつぐつ30分もゆでると皮がスルリとむける代わりに辺り一面血の海かと見まがうばかり真っ赤になっちゃうビーツなど珍しいものがいろいろ手に入ります。

馬刺し 馬炒め
馬刺し
馬炒め


また長野から山梨にかけては普通のお肉屋さんで馬肉が手に入るのも楽しみのひとつ。タテガミなど脂を珍重する熊本と違って、この辺は赤身一本。にんにく醤油で馬刺しもよし。やわらかくクセもない薄切り肉を地場の野菜と中華炒めにすれば、もう最高の肴です。

このどちらかが「虚け者」
このどちらかが「虚け者」


お酒は諏訪の地酒「真澄」にするか、Jさんお気に入りの新潟「鶴齢」にするか。メンバーの中にはこの銘酒と料理酒を利き酒しても区別できない虚け者もいますが、食べて、飲んで、トランプして、歌って、踊って、叱られて、遅くまで語り明かす夜は最高です。

おやすみなさい

 

こんなメンバーも東京に戻れば仕事仲間。侃々諤々の議論をします。ある日は開発中のチョコレートについて、ターゲットをどうするか議論していました。
「例えば20代OLが冗談っぽく友達にプレゼントする感じかな」
「『20代OL』っていってもいろんなタイプがいますよね?キャリア志向かっこいい系のOggi、品行方正なwith、モテ系CanCam、ちょっと可愛くガーリーなsweet。今回のターゲットになるのはどの層でしょうか?」

う~ん。ここしばらく広告会社のマーケティング部門で女性ターゲットを議論する場合、「雑誌」を切り口にするのがちょっとした流行りのようです。確かに雑誌は読者のライフスタイルや価値観を反映する便利な視点です。単純な性×年齢より有効でしょう。でもこうした定型の作業さえすれば議論が十分なわけもありません。実際、売り場に立ち、商品を買っていくお客さまの顔を見ていると緻密に設計したはずの「ターゲット像」とのギャップに呆然とすることになります。

ヒト/モノコト図
ヒト/モノコト図


ぼくらが考えなければならないのは「ヒト(の気持ち)」と「モノ・コト」の新しい結びつきです。とするとターゲットも最終的には性×年齢や漠然としたライフスタイルではなく「気持ち」で規定されなければなりません。
例えば「チョコはご褒美的なモノだから有名ショコラティエの一流気分こそふさわしい」「遊び心やユーモアのある方がチョコらしい楽しさは広がる」「甘ければいいの、甘ければ」などといった気持ちこそがターゲットとそうでない人を区別するポイントです。つまりその気持ちさえ持っていれば、おじさんでもおばさんでも、若くても年寄りでも、みんなターゲットになるということです。

「雑誌」以外にもターゲットについて考える良いきっかけ、有力な手段はいくつもあるでしょう。しかし手段が目的化して「それさえ考えれば大丈夫」というのでは単なる思考停止です。扱いやすい客観データをいじるだけでなく、複雑怪奇な人間の内面に踏み込むことこそが大切なのだと思うのでありました。

つまらない話が長くなっちゃいましたが、そうそう。そういえば蓼科合宿常連のYさんとIさんがこのたびめでたくゴールイン!!めでたし。めでたし。こんどは盛大に祝い酒ですな。

おめでとう!
おめでとう!

どうぞ召し上がれ!

 

プロフィール

  • 4
    山田 壮夫
    株式会社電通 第1CRプランニング局

    1969年生まれ。アイデアを核として広告キャンペーンはもちろん、店舗開発からテレビ番組の製作まで手掛ける。特に最近は全国の地方新聞社厳選お取り寄せサイト「47CLUB」と連携してローカルにおける商品開発作業にチャレンジしている。2009年カンヌ国際広告祭(メディア部門)審査員。慶應義塾大学(メディア・コミュニケーション)、明治学院大学(経営学)非常勤講師。著書に『〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考』(朝日新聞出版)。

バックナンバー

関連記事

続きを見る
ページ先頭へ