DMCラボ・セレクション ~次を考える一冊~ #17

ズレは創造の母!

『だから日本はズレている』

リーダーなんていらない。
テクノロジーだけで未来は来ない。
ノマドとはただの脱サラである。
若者に社会は変えられない。

29歳の若さで、テレビのレギュラー出演もベストセラーも多数。気鋭の社会学者、古市憲寿氏の新著『だから日本はズレている』(新潮新書)にはそんな刺激的な見出しが躍ります。正直、本を読んでいて目を覆いたくなったのは初めてです。それほど切れ味鋭い指摘が、オブラートをまとうことなく裸一貫ド直球に投げ込まれてきます(しかも、連続で)。

だから日本はズレている

どこかズレている国、日本

この本は、日本にはびこる「ズレ」の正体を解き明かすものです。
「なんかズレてるなぁ」
ふとニュースを見ているとき、ふと新聞の記事に目を留めたとき、そう感じたことはありませんか?本書が発売から2カ月足らずで10万部を突破したのも、それだけ多くの人々がズレを感じていることの証しなのかもしれません。
なにが、どうズレていて、それはいったい何が原因なのか?本書はそこから話が始まります。
たとえば、第一章「リーダーなんていらない」をひもといてみましょう。

日本には、強いリーダーより◯◯◯が必要

最近耳にすることの多い、「リーダー待望論」。
首相が短期間で変わってしまう…そんな日本には「強いリーダー」が必要だ!
思わず「うんうん」とうなづいてしまいそうな論説ですが、著者はこう断言します。

「ジョブズなんて強いリーダーは、(日本には)別にいらない」
「スティーブ・ジョブズみたいな『強いリーダー』を安易に理想化してしまう
ことに、気持ちの悪さを感じている」

わずか15ページ目でこのパンチ力。あまりの衝撃に、ここでそっと本を閉じそうになってしまいますが、それは非常にもったいないです。

「変化も目まぐるしい現代、強いリーダーによる独裁制はデメリットの方が大きい。むしろ日本については、『強いリーダー』がいなくても大丈夫なくらい、豊かで安定した社会を築き上げてきたことを誇ればいい」「強いリーダーより小さな集団」

と著者は説きます。

「あらゆることを『国』単位で考えて、一億数千万人を一気に救うような解決策を考えてしまうと、それが解決困難な難問に見えてしまう。(中略)だけど、行政の対応を待つのではなくて、『自分たち』で勝手に解決できる社会問題も多い」というのがその理由です。

もう、強いリーダーを待ってる場合じゃない。問題を分解して、自分が小さな集団でリーダーシップをとって動き出しちゃえばいい。
一見、「そりゃそうだよ」で片付けてしまいそうになるシンプルな結論ですが、現実は強いリーダー待望論が至るところで議論されているわけで。そうした日本のズレを、著者は丁寧にかつ冷静に分析していきます。

ズレを生み続ける原因はどこにあるのか

クール・ジャパン、ソーシャル、就活、学歴…。
さまざまなテーマがバッサバッサと切り捨てられていくにつれ、読む人の頭に浮かんできます、「誰だ、犯人は!」という犯人探しマインドが。
この本はこう言います、原因は「おじさん」にある、と。
ホッとした人も、ギクリとした人もいるかと思います。
「ああなるほど分かった!この本は迷走するおじさんと、それで割を食う、かわいそうな若者の話なんだな」

いえいえ、そういう世代対立論じゃないんです、この本は。
大事なのはここからです。

「『おじさん』とは、いくつかの幸運が重なり、既得権益に仲間入りすることができ、その恩恵を疑うこと無く毎日を過ごしている人のことである。(中略)人は、今いる場所を疑わなくなった瞬間に誰もが『おじさん』になる」

そう、若者にも「おじさん」はいっぱいいるという話。
世代論ではないのです。年齢も、性別も関係なく、「おじさん」はどこにでも潜んでいるのです。

ズレを生むのが「おじさん」なら、解決するのも「おじさん」

では負のスパイラルから降りるためには、何が必要なのか。
鍵となるのは、「おじさん」だと著者は続けます。

「『おじさん』になるのは、悪いことばかりではない。
『おじさん』は『若者』よりもパワーを持っている。そのパワーを適切に使うことができれば、社会はきっといい方向に変わっていく。
『おじさん』のふりをしながら、『若者』の気持ちを忘れないでいることもできるはずだ。そして『おじさん』と『若者』が手を組むのはそう難しいことではない」

パワーを持っている、というのを絶対に甘く見ちゃいけないと思います。若者に対して(自戒も込めて)声を大にして言いたいです。
「意識高い系」の若者は増えています。社会貢献なんて、若者にとってはバイトより手軽なのかもしれません。「東北の現状を知ってもらうべく、若者を東北に派遣する学生団体を立ち上げました!」というセリフを高校生から聞かされる現代です。
一方で、そういう「若者」が「おじさん」とがっつり手を組んでます!という事例をあまり聞きません。「おじさん」ってすごいですよ。引き出しの数も、経験の量も、人脈も、お金も、全部。今、私はシェアハウスで30代だけじゃなく60代の方とも同居しています。日々、驚かされることばかりです。気軽に紹介される宝のような情報。次々と家に遊びに来る、ユニークな方々。仕事の悩みを打ち明ければ名カウンセラーに早変わり。「おじさん」恐るべしです。

ズレは、創造の母

世の中に、ズレてない完璧人間なんていません。ズレは相対的なものですから、みんな周囲と比較したら必ずどこかズレている。そしてそれが集まると、いつの間にかズレた日本のはい出来上がり。
でも、この本を読んでの一番の学びは、ズレが新しいものを生み出すきっかけになり得る、ということです。ズレているからこそ、世の中を違った目で見ることができるからです。
「型を破るためには、まず型を身につけなければならない。そうでなければ、型無しになってしまう」という言葉もあります。これで言うと、ズレはもうみんな身につけている。でも認識できていない。自分がズレてるだなんて、夢にも思っていない。それはもったいないと思うのです。ズレをもって、ズレを制す。その一歩手前に、もうみんないるはずなのです。

新しいモノを生み出し続ける皆さま。
(かなり)耳の痛い本ではあるのですが、ぜひご一読を。

【電通モダンコミュニケーションラボ】

 

プロフィール

  • Fujita profile r
    藤田 卓也
    株式会社電通 第3CRプランニング局

    東京大学大学院 工学系研究科を修了後、2012年電通入社。3年目のコピーライターとして、コピーやCM制作だけでなく、デジタル領域の企画なども手がける。

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