ろーかる・ぐるぐる #37

分析で「本当の課題」は見つからない

ちょっと前のコラムで雑草をテーマに書きましたが、とある方からおしかりを受けました。「キミのコラムから食べものの話を抜いたら、何も残らないじゃないか!」
ご指摘ごもっとも。何を書いても言い訳になっちゃいますが実は「食べられる雑草」を手配していたのです。それが間に合わず生ぬるい内容になってしまったのでした。ごめんなさい。

ひょうの醤油炒め
ひょうの醤油炒め


その名を「スベリヒユ」といいまして、日本全国で畑作の害草として知られる正真正銘の雑草。ところが山形では昔から「ひょう」という名で愛されており山菜のように食べられています。独特のぬめりと酸味があって、下ゆでしたのをごま油と唐辛子で炒め、醤油と酒で味を調えると、立派なご飯のおかずの出来上がり。この味を知ってしまうと道端でスベリヒユを見かけるたびによだれが止まらなくなります。

 
ヤマウコギ(左)とヒメウコギ
 


「食べられる雑草」というのも、すてきなコンセプト(アイデア)ですが、「食べられる生け垣」という新しい視点で飢饉に備えたのは江戸時代中期の大名で出羽国米沢藩第九代藩主、上杉鷹山でした。彼が注目したのは「ウコギ(五加木)」。トゲがあるので生け垣にすれば防犯効果も高く、春から初夏にかけての若葉は食用になります。米沢藩はこれで生け垣をつくることを推奨したため、今でも町中で多く見かけられるそうです。
わが家も鷹山先生の教えに従って生け垣にはヒメウコギとヤマウコギを植えています。ヒメウコギは葉が柔らかくクセもないのですが、青い香りと爽やかな苦味を楽しめるヤマウコギの方が圧倒的にオススメです。サッと湯通しをしてご飯に混ぜれば箸が止まりません。

さて。実務ではもちろん、研修ですらとにかく苦しいのはアイデアを模索している時間です。ぐるぐる思考でいえば、ありとあらゆる可能性を考え尽くす「散らかすモード」。「その手があったか!」と思える視点なんてあるのかないのか分からない中を七転八倒します。
中でも解決しなければならない「課題」を見つけるのは本当に大変です。よく「課題は調査・分析を通じて抽出するもの」と考えている方がいらっしゃいますが、実は数字をいじって客観的に課題を抽出するのはそれほど大変じゃない、まぁ楽チンなもんです。なぜなら誰がやっても同じ答えが出てくるプロセスだからです。まぁ、今のやり方に多少の工夫を加えれば何とかなりそうな場合には、そういう客観的なアプローチでも十分でしょうが。

しかし今までの延長線ではどうしようもない時、「その手があったか!」というアイデアを発見してターゲットの気持ちを動かさなければならない時は、それでは不十分です。ターゲットの本音を考え抜いて(前回コラムに従えば、心の中のこびととしつこくしつこく対話して)課題とアイデアのセットを導き出さなければなりません。自分の人生経験を総動員して、どこに課題があるのかを見つけ出す。それは本当にストレスを感じる作業です。うまくいかなければその人の「人間力」自体が疑われてしまうからです。でも、そこまでしないと優れたアイデアなんて手に入らないのです。

ウコギの上杉鷹山も「為せば成る、為さねば成らぬ何事も。成らぬは人の為さぬなりけり」とおっしゃっています。「できねぇのは、やらねぇからだ。やれ!」って話でしょうか。「食べる生け垣」という素晴らしいコンセプト(アイデア)の生みの親が語った言葉だと思うと単なる精神論以上の説得力を感じます。とにかく全身全霊で頑張るしかないみたいです。

それでは次回。ちょっと話題を変えて「ネーミング」について考えてみましょう。

どうぞ召し上がれ!

 

プロフィール

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    山田 壮夫
    株式会社電通 第1CRプランニング局

    1969年生まれ。アイデアを核として広告キャンペーンはもちろん、店舗開発からテレビ番組の製作まで手掛ける。特に最近は全国の地方新聞社厳選お取り寄せサイト「47CLUB」と連携してローカルにおける商品開発作業にチャレンジしている。2009年カンヌ国際広告祭(メディア部門)審査員。慶應義塾大学(メディア・コミュニケーション)、明治学院大学(経営学)非常勤講師。著書に『〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考』(朝日新聞出版)。

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