ろーかる・ぐるぐる #39

主観と客観、ビジョンと現実

この原稿は7月末に広島に出張した際のエピソードを基にしております。その後発生した土砂災害によりお亡くなりになった方々へ心よりお悔やみ申し上げますとともに、被災した方々にお見舞い申し上げます。

 

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meeting
ミーティング風景
 

「まだニュースになっていない逸品」が見つかるお取り寄せサイトを運営しているよんななクラブのご紹介で、最近全国を回って各地の事業者さんにお目にかかる機会が増えています。地域特有の文化・伝統を背負っていらっしゃる方、確かな生産技術をお持ちの方など多士済々。真剣な危機意識と旺盛なチャレンジ精神でいつも刺激的です。そんな機会によくお話しするのが「コンセプト(アイデア)開発に必要なふたつの相互作用」についてです。

コンセプト開発のニ軸
コンセプト開発の二軸
 

そのひとつは「主観」と「客観」の相互作用。ロジカルに客観的に考えがちなビジネスの場で、どうやって経験や直感といった感覚的なモノを思考プロセスに取り込むかがポイントになります。
そしてもうひとつは「ビジョン」と「現実」の相互作用です。あらゆる企業が目指すのは「持続的な利益創出」ですが、「そのために何をしたってよい」のではありません。企業には「ビジョン」や「基本理念」があります。『ビジョナリーカンパニー』(ジム・コリンズら)によれば「単なるカネ儲けを超えた基本的価値観と目的意識」「現実的な理想主義」といったもののことです。従業員はそのビジョンを実現するために努力しますが、そう簡単にはうまくいかないので、そこに課題が生まれ、またコンセプト(アイデア)も必要になります。

目標課題アイデア具体策

 

つまり「ビジョン」のような目標なくしてコンセプト(アイデア)を開発することはできないのです。

現実には、会社の手帳やホームページに掲げられている「ビジョン」や「企業理念」がイノベーションの背中を押すほどチカラがないケースも多いでしょう。「現実的な理想主義」のバランスが難しいため、しばしば総花的で無難な、単なる「理想」に陥ってしまうからです。
そのような場合でも、企業活動や商品を通じて社会へどのように貢献したいか考え続けることが大切です。たとえば和牛の目利きが自慢の精肉店さんが危機感を持ってイノベーションを起こしたい場合。「いや、もうかるなら和牛じゃなくても国産牛でも輸入牛でも。豚でも魚でも保険でも仏壇でも、何でもやりますよ」というのでは正直困っちゃいます。必死な気持ちは素晴らしいのですが、「日本の畜産文化を守りたい」「和牛文化のすそ野を広げたい」といったような目標があって初めて、なぜそれがうまくいかないかを考え、そしてそれを実現するための「その手があったか!」というコンセプト(アイデア)を生むことができるからです。
イノベーションのためには、行動指針となるようなビジョンを言葉で明示することがとても大切です。

先日も広島でよんななクラブに出店なさっている事業者の皆さんと夜遅くまで熱い議論を交わしました。海苔屋さんと化粧品筆屋さん、調味料屋さんとお菓子屋さん。違うバックグラウンドを持つ方同士、刺激になるのでしょう。大いに盛り上がりました。最後のシメは「広島つけ麺」へ。ぼくはほぼ通常の辛さで楽しんだのですが、同行していた47クラブ長倉さんは強気に「辛さ47倍!」。翌朝、トイレに立てこもってしまったのも仕方のないことでございました。

広島つけ麺
この日一番元気だった大崎上島の熊佐さんが急逝されました。
ここに謹んでご冥福をお祈りいたします。

 

さて。拙著「〈アイデア〉の教科書」では「主観と客観」軸については詳しく書いた一方、「ビジョンと現実」軸に関する記述は薄いものでした。次回もう少し、このへんについてお話を進めたいと思います。

どうぞ召し上がれ!

プロフィール

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    山田 壮夫
    株式会社電通 第1CRプランニング局

    1969年生まれ。アイデアを核として広告キャンペーンはもちろん、店舗開発からテレビ番組の製作まで手掛ける。特に最近は全国の地方新聞社厳選お取り寄せサイト「47CLUB」と連携してローカルにおける商品開発作業にチャレンジしている。2009年カンヌ国際広告祭(メディア部門)審査員。慶應義塾大学(メディア・コミュニケーション)、明治学院大学(経営学)非常勤講師。著書に『〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考』(朝日新聞出版)。

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