ワカモンのすべて #27

イマドキの若者は“等身大”がキーワード

  • Kibushia pr
    木伏 美加
    株式会社電通 マーケティングソリューション局

若者と社会がより良い関係を築けるような未来の方向性を探るべく、学生たちの生の声から「若者たちの今」を切り取るワカモン・リアル。

近年、「元気がない」「やる気がない」などと言われがちな若者たち。本当に彼らは元気もやる気もないのだろうか。日本最大級の学生団体である「AGESTOCK2014実行委員会」の学生たちへのヒアリングをもとに、今の若者たちは何に興味を持ち、どんな思いを持って行動しているのか読み解く。

 

消費行動には「内輪」の楽しさが紐づく

今回、調査に協力してくれたのはAGESTOCK2014実行委員会(以下:AGE)代表のN君、広報局長のSさん、イベント局のRさん、Mさんの4人。Ageとはイベントの企画・運営やフリーペーパーの企画・制作を行うインカレ形式(複数の大学の大学生で構成されるサークル)の学生団体で、所属しているメンバーは300人にも及ぶ。中でも、毎年開催される学生パフォーマーやプロのアーティストによる祭典「AGESTOCK」は好評で、2014年は両国国技館での開催が決定するなど、学生の枠組みを超えたスケールの大きさも話題になっている。

2014年4月 AGE STOCK イベントの様子

 

以前、ワカモンメンバー奈木の「」で紹介したように、近年高まりつつある若者たちの“イベント熱”。イベントを企画する側のAGEメンバーも、学生団体が主催するものからプロの企画まで、さまざまなイベントに足を運んでいるという。しかし、彼らが単純にイベント好きで参加しているのかというと、実はそうでもないようだ。「好きなアーティストのライブでも、1人だったら行かないですね」と話すN君。Mさんも「イベントに参加するのは好きだけど、自分でチケットを取ったりするほどではなくて、友達や知り合いから誘われたら行きます」と口をそろえる。その理由は、「ライブ自体も楽しいけど、それよりも公演後に友達と感想を言い合ったり、余韻に浸ったりするほうに楽しさを見いだしています」(N君)、「仲の良い友達と一緒に楽しむこともイベントの魅力だと思う」(Mさん)とのこと。彼らはイベントそのものよりも「誰と行くか」に重きを置いており、友達と気持ちを共有することや友情を深める機会をイベントに求めている。

また、「知り合いが出演するイベントは見に行きたいと思う」(Rさん)、「友達が企画しているイベントには興味がある」(N君)と話すように、「どんなイベントか」よりも「誰のイベントか」を重視する傾向にある。一概にはいえないが、彼らのイベント熱の火種は「友達」であり、イベントは「内輪」の絆を深めるための手段になりつつあるのかもしれない。

さらに、他団体との交流も多いSさんは、「企画に込められた思いやスタッフが一生懸命取り組む姿に触れられるのがイベントの醍醐味ですね。でも、そもそもAGEに入っていなかったら、そういうイベントには参加しなかったかも。行けば楽しめるだろうけど、行くきっかけがなければ渋ってしまうと思う」と話す。この意見には他の3人もうなずく。「アイドルのコンサートは演出が凝っているので好きです。でも、企画する立場じゃなかったら見に行かないかもしれないです」というN君。このように、イベント自体が好きなのではなく、自身がイベントの企画・運営に携わっていることが消費行動の大きな要因になっているといえる。

ただ楽しむだけでなく、合理性や目的意識も大切

そもそも彼らはどのようなきっかけで、イベント運営の学生団体に携わることになったのだろうか。「高校生の時に文化祭実行委員会に所属して企画やイベント運営の魅力を知った」(N君)、「高校の友達が文化祭実行委員会をやっているのを見て、楽しそうだと思った」(Mさん)と高校の文化祭が原体験だと話す2人。

一方、「志望する大学に落ちて将来のことで悩んでいた時、どうせなら大学では規模が大きくてリスクのあることに挑戦しようと決めた」(Sさん)、「もともとダンス部でステージに立つ側だったけど、AGEの存在を知って、ここに所属すれば自分のコミュニティーや視野をもっと広げていけると思った」(Rさん)と話すように、AGEメンバーには最初から企画・運営が好きで参加するのではなく、自己の成長や人とのつながりを求めて参加する人も多いという。「初めから明確にやりたいことを持っている大学生は少ないと思います。大学に入って漠然と何か新しいことにチャレンジしたいという気持ちから始まって、選んだコミュニティーの中で徐々にやりたいことが固まってくるのではないでしょうか」と語るRさん。N君も、「1年生の時は確固としたものがなくても、学年が上がるにつれて先輩たちの思いとか団体のビジョンが浸透していって、きちんとした目的意識が芽生えるんです」と言う。彼らの発言からは、ただ楽しさを追求するのではなく「きちんとしている」ことも大事にしていることがうかがえる。

N君はAGEで成し遂げたいことについてこのように述べる。「僕たちは“学生の熱意は、限りない可能性を持つことを証明する”というビジョンを掲げています。学生だから企業ほどシビアに利益を求めずにやりたいことができるという事実はあります。それでも、これだけの規模でたくさんの人を集めて、出演者や来場者の心に響く体験がつくれるんだということを証明したい。頑張っている学生の姿を見せることで、社会における“大学生”という立場の価値を上げたいんです」

また、Sさんは「社会に対してだけでなく、同じ学生に対しても限りない可能性があることを証明したいと思っています。よく“最近の若者は失敗を恐れて行動しない”などと言われるけど、確かに同世代の友達と接していると安定志向の人が多いと感じます。だから、私たちが失敗するかもしれないリスクに挑む姿を見せることで、学生でもこんなにチャレンジできるんだ、これだけ大きなことをしたっていいんだということを伝えたいんです」と語る。

このように、彼らは「きちんとしている」ことを大切にすると同時に、その根底には「きちんとしている」姿勢を社会や同世代の友達から評価されたいという願望を強く持っている。純粋な楽しさよりも大学生としての合理性や目的意識を重視する傾向には、周りから認められたいという承認欲求が起因しているのかもしれない。

「大学生」という立場をしっかりと認識した上で、その価値を向上させるために積極的に行動する。等身大で頑張る彼らの姿は、少なくとも「元気がない」「やる気がない」若者像とはほど遠いといえるだろう。

【ワカモンプロフィール】

電通若者研究部(通称:ワカモン)は、高校生・大学生を中心にした若者のリアルな実態・マインドと 向き合い、彼らの“今”から、半歩先の未来を明るく活性化するヒントを探るプランニングチームです。彼らのインサイトからこれからの未来を予見し、若者と 社会がよりよい関係を築けるような新ビジネスを実現しています。現在プロジェクトメンバーは、東京本社・関西支社・中部支社に計14名所属しています。ワカモンFacebookページでも情報発信中(https://www.facebook.com/wakamon.dentsu)。

プロフィール

  • Kibushia pr
    木伏 美加
    株式会社電通 マーケティングソリューション局

    1988年生まれ。2013年電通入社。
    マーケティング・プランナーとして購買データを用いた企画・提案を行う。「若者研究部(電通ワカモン)」の研究員として、学生とのワークショップ、コミュニケーション戦略立案に携わる。また、「Mi-Life Innovation(ミライフ イノベーション)2025」のプロジェクトメンバーとしても活動中。

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