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電通スマプラNo.8

スマホがうつす、僕らと未来。(Origami×Retty×電通スマプラ)

2014/10/30

こんにちは。電通スマプラの青木宙也です。普及率が50%を超えたスマートフォン。もはや僕らの生活に欠かせないデバイスとなりました。10年前では考えられない情報量が手の中で踊る今日、僕ら消費者の生活は、どのように変わったのでしょうか? スマートフォンビジネスでスタートアップ企業を経営する2人をお招きして、スマホが変えた僕たちの生活をコンシューマーサイドとビジネスサイドの両面からひもときました。

康井義貴氏 (Origami 代表取締役CEO)
康井義貴氏
(Origami 代表取締役CEO)
origami
1985年カナダ・トロント生まれ。2012年にスマートフォンアプリを基軸としたEコマース会社Origami設立。次世代ショッピングアプリ「Origami」が新しい購買体験を創るとして注目を集めている。
奧田健太氏
(Retty CFO)
retty
1985年生まれ。2013年7月から、CFO(最高財務責任者)として実名型の次世代グルメサービス「Retty」に参画。ファイナンス関連業務と同時に人事統括として急成長ベンチャーの一翼を担う。
青木宙也(電通スマプラ)
青木宙也
(電通スマプラ)
電通スマプラ
1983年東京都生まれ。2008年に電通入社。2012年にストラテジストに。海外案件を中心に自動車、食品、家電、放送事業などのマーケティング戦略を担当。


スマホって、いったい何が画期的なの?

青木:昨今、スマホがビジネスを変えるとか、スマホが消費行動を根底から変えるとか、そのようなことがかなり巷で騒がれるようになってきました。そもそもスマートフォンって、どこがそんなにすごいのでしょうか?何が他のデバイスと違うのでしょうか?

康井:スマートフォンの特徴を挙げるとすれば、一つは圧倒的な接触時間の長さ。今までは「何か調べます」とか「これから作業します」というときにパソコンを開いて意図を持って利用していました。しかし、スマートフォンは常に持ち歩いているので、ちょっとした隙間時間に意図を持たずに画面に向かっている。
もう一つは、スマホは僕らが最初に手に入れた、「身に着けるテクノロジー」であるということ。まだまだ活用され始めたばかりの段階ですが、例えばUber(ウ―バー:スマホを介してタクシーを手配できるアプリ)などを使ってみると、A地点からB地点に移動するという課題が、スマホという手の中のテクノロジーで解決できるようになりました。

奥田:情報発信の観点からいえば、スマホの登場はオンラインとリアル世界の垣根をより低くしたと考えています。パソコンを使ってのネットコミュニケーションはネットの世界で完結していました。そこではネット独自のコミュニケーションが行われていたのです。それが、SNSとスマートフォンの登場によって、ネット上のコミュニケーションと現実世界でのコミュニケーションの垣根がなくなってきました。
情報発信の意識が変わってきていると思います。今までは匿名で、かつネットの世界で完結していた情報発信が、スマホの登場によって、情報が個人と紐づいて、リアルの世界と融合して発信されるようになってきました。

スマホとパソコンは似て非なるもの

青木:スマホからの情報発信とパソコンからのそれでは、何か違いがあるのでしょうか?

奥田:最近いろいろなサービスを使っていて感じるのですが、スマホからの情報発信はより右脳的で、感情がよく表れているという定性的な違いがあると感じています。やはり、スマホの方が個人に紐づいて自分の「キモチ」を表しているのではないでしょうか。

青木:先ほど康井さんのおっしゃった、スマホは「意図を持たず画面に向かっている」とか、奥田さんの「感情が表れる」という特徴は、非常に興味深いですね。

康井:そうですね。パソコンとスマホでは、画面に向かっているユーザーの心理状況が大きく異なります 。よく、「パソコンサイトをスマホ対応にしました!」というサービスも多いですが、見てみると単にパソコンのサイトの情報を整理して、スマホ画面で見やすくしているだけだったりします。本当のスマホ化とは、スマートフォンならではの感情的なアプローチや、ユーザーの心理状況に対応したサービス設計だと思っています。

青木:どうやらここまでお話を伺っているとパソコンとスマホというのは似ているようで全く違うもののようですね。

康井:パソコンサイトは、目的に到達するために情報をそぎ落としていくことを主な目的につくられているケースが多いです。ショッピングサイトなどを見ても、四角い検索ボックスに自分の欲しい商品の名前を打ち込んで、スペックや価格で「絞り込んで」いく。しかしスマートフォンは先ほどの通り「意図を持たず」に触れていることが多い。自分が何を欲しいかもまだ分かっていないし、自分が物を買いたいかどうかすら、あやふやな場合があります。そういった消費者心理に向き合うユーザーインターフェースというのはパソコンとは全く違って当然だと思います。

電通スマプラ図

青木:奥田さんはRettyの運営でパソコンとスマホの違いを意識していたりしますか?

奥田:Rettyはスマホを中心とした口コミサイトの駆け出しだと思っています。Rettyは実はリリース当初、どちらかというとクローズドな、「自分のお店リストをつくる」ツールとして設計されていました。しかしユーザーの満足度というか、ユーザーの琴線を調査していくと、「コミュニケーション」欲求というものの高さに驚かされました。「実名であること」、そして「リアクションがリアルタイムで来ること」、この二つが、スマホをベースにした口コミサイトの新しい価値軸として発見されました。
そしてその裏側にあったのがスマホのリアルタイム性だと思います。パソコンだとコメントやレビューを書いてそれが評価されるのを確認するまでに時間がかかる。家に帰ってパソコンを開いて、「あ、コメント来ている」となるわけです。しかし、スマホの場合は書き込んだそばからコメントがリアルタイムで上がってくることが実感できる。そのことがよりコミュニケーション欲求を強めているのだと思います。

スマホを一言で表すと、どんなデバイス?

青木:ちょっとまとめてみたいと思うのですが、スマホって一言で表すとどんなデバイスなのでしょうか?

康井:先ほど申し上げた通り、「身に着けたテクノロジー」なのではないでしょうか? これは今後、もしかしたら時計型になるかもしれないし、眼鏡型になるかもしれない。その形状は今後様々なものが出てくると思いますが、スマートフォンが「人々がテクノロジーを身に着ける」ということを初めて体験したデバイスなんだと思います。

奥田:私はスマートフォンを「ネット世界のアバター」として位置付けています。今までは、インターネットの中の世界をパソコンの画面からのぞき込む、という感覚だったと思います。スマホは、持ち主個人に紐づくというデバイスの特徴からしても、インターネットの中の世界に自分が身を置いて、個人を特定するアバターとしてのツールになったのではないでしょうか?

スマホによって消費者体験はどう変わるの?

写真2  

青木:なるほど、興味深いですね。では、そんなスマートフォンが出て、消費者行動はどのように変わったのでしょうか?

康井:一つ、スマホにおける位置情報機能が消費者行動に重要な影響を及ぼしてくると思います。今いる自分の場所の周辺にどのようなお店があるのか、どんな友達がそのお店に行っているのかを知ることができるようになり、そうしたきっかけで新しいお店と出合うことが可能になってきています。
それと、オフラインとオンラインの境が限りなく薄くなり、その結果としてモバイルコマースがEコマースの範囲を脱するということが考えられます。家のパソコンで購入して家に届く形だったのが、スマホはどこにでも持ち歩けて常に持っているので、買う場所を選ばなくなりました。もっといえば店頭に行ってそこでモバイル上で決済をしてそこで商品を受け取るといったことも可能になるかもしれません。本当の意味でのO2O(Online to Offline)マーケティング(注)が始まろうとしています。
(注)オンライン上での活動を、実際の店舗などでの集客、購買行動に結び付けるマーケティング手法

 

奥田:スマホの登場によって飲食店の情報メディアは第3のフェーズに入ってきていると思います。第1世代は、とにかく世の中のお店の情報をオンライン化しました。ただこれはお店への誘導を目的とする情報(広告)にとどまり、お店を選ぶことは難しかった。そこで生まれたのが第2世代の匿名ランキングサイトです。オンライン上にある情報を一斉にレーティングし、ランキングにしました。人気のお店は分かるようになりました。しかし人気のお店が自分のテイストにあったお店かどうかは分かりません。そこで、第3世代として「誰がおすすめしているのか?」という観点で情報を集約させました。それがRettyです。スマホの登場で、リアルとネットの同一化が起こり、「あのお店、良かったよね」という現実世界で行われているポジティブなコミュニケーションがスマホ上でも行われるようになっています。

スマホによってビジネスサイドはどう変わるの?

青木:ビジネスサイドに対するインパクトについてはどのように考えていますか?

奥田:飲食店の分野でいえば、今までできなかったCRM(Customer Relationship Management)が容易にできるようになるかと思います。先ほども申し上げた通り、スマホはネット上におけるアバター、つまり個人そのものです。今までは飲食店にお客さんが来ても、その人がどういった人なのか、お店の人は知るよしもありませんでした。帰ってしまえばお礼を言うこともできません。それがスマホの登場によって、お店と個人の1対1のエンゲージメントをつくる機会が創出されているのです。

康井:お店側からすると、今まではお店に来る消費者について、どこのどの人なのか把握することは難しかったのです。もちろん店員と顔なじみになれば分かるでしょうが、それには規模に限界があり、ポイントカードなどを利用して顧客情報をとろうとしても、効率的には進まなかった。それがスマートフォンの登場によって顧客の行動が把握できる可能性が出てきたわけです。そのことがより精緻なマーケティングを可能にしていくのだと思います。

青木:なるほど。では、最後に一言お願いします。

康井:スマートフォンが世の中に出てきて、いよいよ本質的なパラダイムシフトが起きようとしています。大きなチャレンジですが、これから新しい体験をつくっていければと思っています。

奥田:そうですね。これからがますます楽しみです。

青木:本日はありがとうございました。

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電通スマプラロゴマーク
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◎「電通スマプラ」とは?
スマートフォンを中心としたスマートデバイス(パソコン、タブレットなど)上のビジネスの立ち上げ、成長・拡大に貢献するプランニング・ユニットです。
チーム内には、スマートフォンのゲームやアプリなどのマーケティング・コミュニケーションの実績が豊富な戦略プランナー、コミュニケーションプランナー、コンサルタント、コピーライター、プロデューサーなど、多種多様な人材をそろえています。また、一人一人が何かしらのオタクであるため、課題への深堀りはもちろん持ち前の個性と人間力でクライアントに向き合うことをモットーに、マーケティング活動を支援していきます。