電通スマプラ #09

「課金」に代わる言葉を、

若手コピーライターたちが考えてみた。

  • 武田 さとみ
    株式会社電通 第3CRプランニング局 コピーライター・CMプランナー

はじめまして、電通スマプラの武田さとみと申します。コピーライターとして、コピーや企画を考える仕事をしています。
電通スマプラでは5月に「スマートフォンゲームに関する生活者インサイトを探る調査」を行い、連載第2・3回では「スマートフォンゲームに『ポチッ』とお金を使うキモチって?」と題して、課金に応じる人のキモチを探りました。スマートフォンゲームのプレー経験者のうち、25.5%は課金経験があると答えています。
しかし、「課金」という行為をネガティブに捉えている人も多いようです。(私自身、電通スマプラに入るまで「課金=いけないこと」のように思っていた部分がありました)

今回のコラムは、そんな「課金?えー、ちょっとそれ大丈夫?」と思っているそこのあなたに、読んでいただけたら幸いです。

■課金は、可金になり、加金になる。

課金は、応じる前と後で、その心理変容がとてもおもしろい購入経験だと感じています。
課金経験のある方々にグループインタビューさせていただいたときも、ハードルが高ければ高いほど、乗り越えたときのハードルが一気に下がる傾向にあるなあと思いました。
私自身、今年課金デビューしたのですが、その気持ちの変化は「課金→可金→加金」の3段階でまとめられると感じました。

まず、課金に応じます。その結果、「あれ、課金って思ってたほど怖いものじゃないな」とわかると、「課されるお金」だったはずの「課金」は「払ってもいいと思えるお金=可金」に姿を変えます。
そしてお金を払うことによって、キャラが強くなったりイベントが進んだりゲームにひたひたと愛着が湧いてくるようになると、「払ってもいいと思えるお金=可金」は、「もっと払いたくなるお金=加金」に変わっていきます。
これを、<課金3変化>と呼びます。呼んでいるのは今のところ私だけです。
(ちなみに、これと似たような現象に<初対面で「苦手かも」と思った人ほど親友レベルの仲良しになる現象>があげられます)

■良いところもあるのに、名前で損してる?

いざ飛び込んでみると、意外と良いところもある課金の世界。
自制心をもって楽しめば、ちょっとしたストレス発散や息抜きにもなるし、時間もつぶせるし、ジュース買うのと同じくらいの値段で楽しめます。
服や音楽、LINEのスタンプは楽しくぽんぽん買っているのに、主にゲームなどでの「課金」ばかり悪く言われてしまうのは、そもそも「金を課す」という消費者に全くやさしくない言葉に原因があるのでは?
そもそも「課金」という言葉は、15年以上前に携帯会社さんがデジタルサービス利用への支払いを指して使い始めた言葉だそう。デジタルって実体がないからよくわからない?だから怪しい?
視点を変えて、この「課金」という呼び方自体を変えたら、この不信感、少しは払拭できるかも。
この業界にとって、ステキなことが起こるかも。

というわけで、14人の若手コピーライターにも協力してもらい、「課金」に代わる新しい言葉を考えてみました(もちろん私も考えました)。出そろった140のコピーから、15本を紹介します。

今回コピーを選んでもらったのは、エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターの伊藤公一さん。
有料ゲームとは10年来の付き合いになるそうで、そちらの世界ではやり手の弓使いとか。
伊藤さんが若手コピーライターに向けて開いているコピーキャンプという研修におじゃまして選出していただいた、「これは新しい」「こういう方向はあるね」という厳選の15本です。

コピーキャンプの様子。 真剣に伊藤さんからのオリエンを聞いています   書いたコピーは貼り出して、意見交換します
コピーキャンプの様子。
真剣に伊藤さんからのオリエンを聞いています
 
書いたコピーは貼り出して、意見交換します

 

■見えてきた、4つの課金の未来。

選ばれた15本のコピーを分類してみると、以下の4つの切り口が見えてきました。

【1】課金とはなにかを定義する

課金ってそもそもどういうものかを、再定義する。正攻法のコピー。

コンテンツチャージ(以下、伊藤さんコメント)
 

チャージと置き換えると「たまっていく」感じが出る。「チャージ」だけでは少々シンプルすぎるので、何に払うかをはっきりさせる一味を。

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プレイフィー PLAY PAY
 

「遊ぶお金」だ、と目的をはっきりさせているところが良い。

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バーチャルペイ
 

そこからもう一歩踏み込んで、「バーチャルなこと」にお金を払うという定義付けを。

 

【2】コンビニエント

カンタン・気楽、というスマホらしさを訴求する。

ぽち買い サク買い

 

スマぽち
 

カンタン・気楽にできる、というのがわかりやすい。

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タッチゃりん
 

「ちゃりん」だとお金とられていく感じがあるが、「タッチゃりん」だと、「タッチしてちゃりん」という行為が音として面白く、「ちゃりん」のネガティブイメージを少し抑えられる。

 

【3】制作者への感謝

「課金とは『ゲームよ、そしてこれを作った人よ、遊ばせてくれてありがとう…!』という感謝の表れである」という難しいところにチャレンジしたものたち。ネーミングのなかにストーリーがある。

育み金
 

ベタな言い方だが、わかりやすい。

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パトロンする(パトる)
 

若い人がパトロンになれる、というのはちょっと面白い。

 

【4】あえての自虐

ネットに「炎上」という言葉があるように、普通では使わない言葉をネットの世界に当てはめると流行する。課金の持つネガイメージを活用して、伝播する力のある言葉に再定義する。

お課金
 

自虐ネタにはなるが、そのかわいい毒をおもしろがってくれそう。若い人に受ける可能性が。

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献上
 

分かっていてやっている、確信犯的な言葉。開き直りとして可能性あるかも。

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投下
 

炎上、という言葉のつくりと似ている。

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お布施 お供え
 

言い回しに、流行りそうなにおいが。

 

以上のように、さまざまな方向から課金の未来が提示されました。
総括として、課金に代わる言葉として流行っていきそうなのは、正攻法よりもむしろ「【4】あえての自虐」方向なのでは、という結論に。
「課金」につきまとっているネガティブなイメージはのみ込んだうえで、それすら冗談・遊びに変えてしまう感覚は、今の若い人たちには受けるのではないでしょうか。

■考えてみて気がついた「課金」ということばの隠れた力。

さて、今までネガティブに受け取られているとばかり思っていた「課金」という言葉ですが、さきほどご紹介した【4】にも通じる「自虐的」な使われ方が、どうやら一部で市民権を得つつあるようです。
その証拠に、たとえばツイッターでエゴサーチをかけてみると出てくるのは、「課金しちゃった」と言いつつも、ちょっと楽しそうなコメントばかり。
これらの言葉には、「全然寝てないわー」とか「自主休講(大学生が自分の都合で授業を休むことをかっこよく言うこと)」と似たものを感じました。
この、ちょっとした背徳感。悪いと思われていることを正当化して楽しむ感覚。
健康食品はあえて苦くした方が売れる、と聞いたことがありますが、そういう感じなのでしょうか。
「ちょっと苦いのを我慢して健康になろうとしている私、ステキ!」といったように、「危険そうな課金にあえて足突っ込んじゃう私、イケてる!」といった感覚が、たしかに自分のなかにもあるなあと感じました。

自虐・言い訳としての使われ方で「課金」が突っ走っていく未来もあるのかもしれません。
アイテムの種類を増やしたり、思わずお金を払いたくなるタイミングに仕掛けを設置したり、といった仕組みももちろん大切だとは思いますが、この一見複雑なユーザー心理をくすぐるようなコミュニケーションの取り方が、今後のスマホビジネスのヒントになりそうだな、と感じました。
特に、課金の「はじめの一歩」をどう踏み出してもらうか。
個人的には、たとえ自虐から始まったとしても、「無料でここまで楽しませてくれてありがとう。お礼に課金するね。だからこれからも楽しませてね!」という気持ちのある一歩が、今後のユーザーと企業をつなぐ関係性としてはベストなのではと思っています。
電通スマプラは、こんな生々しいユーザー視点も大切にしながら、より良いスマートフォンビジネスのお手伝いをしていきます!

ここまでお読みいただきありがとうございました。
みなさまの中での課金のイメージ、ちょっとは変わりましたでしょうか。
ここでご紹介したコピーのどれかが、今後課金に代わる言葉となっていったらうれしい限りです。

選ばれたコピーは分かりやすくレイアウトして社内に飾り、共有しました。
今後この中のどれかが「課金」に代わる言葉になれるのか?

 

電通スマプラ
電通スマプラロゴマーク

 

 
 

「電通スマプラ」とは?

スマートフォンを中心としたスマートデバイス(パソコン、タブレットなど)上のビジネスの立ち上げ、成長・拡大に貢献するプランニング・ユニットです。
チーム内には、スマートフォンのゲームやアプリなどのマーケティング・コミュニケーションの実績が豊富な戦略プランナー、コミュニケーションプランナー、コンサルタント、コピーライター、プロデューサーなど、多種多様な人材をそろえています。また、一人一人が何かしらのオタクであるため、課題への深堀りはもちろん持ち前の個性と人間力でクライアントに向き合うことをモットーに、マーケティング活動を支援していきます。

 

プロフィール

  • 武田 さとみ
    株式会社電通 第3CRプランニング局 コピーライター・CMプランナー

    2013年電通入社。
    コピーを書いたり、CM・ラジオ番組・ショートムービーを企画したり、悔しがったり悩んだりしながら、日々楽しく働いています。モットーは「のびのび生きる」。
    2014年TCC新人賞受賞。

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