ママのポテンシャルバリュー #05

並河進×田中理絵 対談(前編)

ママの新しい選択肢を作るには

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    並河 進
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター ソーシャルデザイナー/クリエーティブ・ディレクター/コピーライター
  • 9
    田中 理絵
    株式会社電通デジタル シニア・コミュニケーション・デザイン・マネージャー

今回の「ママのポテンシャルバリュー」では、電通ソーシャル・デザイン・エンジン所属のコピーライター・並河進とママラボ代表・田中理絵の対談(前編)をお送りします。

 

ボランティアもいいけど、お金を稼げたらもっといい
 

田中:「ママのポテンシャルバリュー」というキーワードが出てきたのは、並河さんとの雑談からでしたね。並河さんがソーシャル、私がママラボをメインに仕事をしているので、ソーシャルとママのかけ橋をつくる話に自然になっていきました。たしか、地域活性化を住民がボランティアでやるのではなく、そこに住み子育てをする主婦が実益を兼ねて仕事として関われる仕組みってできないのかな、という話からスタートしましたよね。

並河:世の中的に、元気がなくなった地方都市を応援することに価値を見いだすような、フワっとした感覚論があるけど、みんな気持ちで頑張っているだけで、着地の姿は見えてないんじゃないかと。だから、今ないものに対して、将来の価値を見えるようにしないといけないと思っていて。その流れで、「今働いてない主婦が働き始めたらどういう将来の価値がでるか、ママのポテンシャルバリューの見える化っていいね」と盛り上がった。

田中:働くことの定義ってママによって違って、全員がバリバリ働くことを希望しているわけじゃない。キャリアウーマンだった人も地域に根ざした新しい働き方に価値を見出していくかもしれない。これまでとは違う働き方や地域との関わり方をするようになる、その背中を後押しするのが「ポテンシャルバリュー」だよねって。

並河:そうそう、今この瞬間は見いだせなくても、実は価値が眠っていると分かれば、気持ちだけで盛り上げなくていいんじゃないかと。

田中「主婦の再就業による直接効果と経済波及効果」のニュースリリースは、将来の価値を具体的にイメージするポテンシャルバリューの第一弾だと思っています。これから働き始めるママはパート希望が多く、さらに「定時に帰れて、自宅のそばで」という条件がある。採用をコストと考えて、ギリギリでやっている企業には、そんなママたちを雇う体力がないかもしれません。でも、新しい産業なり事業なりが地域で行われて、働く人の事情に合わせて働ける、新しいマッチングがはかられるようになるといいなと思っています。

並河:そうだね。

田中:地域のボランティアもいいけど、お金を稼げたらもっといい。どういうふうに働きたいのか、どう暮らしたいのか、どういうふうに地域と関わっていくのか、というところに選択肢を増やしたい。

並河:「選択肢の増やし方」を考えはじめると、なかなか難しいよね。そういえば、最近ママたちに消防団のアルバイトが人気なんだって。

田中:えっ、どういうことですか。

並河:ボランティアなんだけどお金が出て、週1・2回くらいで働ける。そのなかで講習が受けられるから、子どもが急に熱を出したり、具合が悪くなったときの対処方法も教えてもらえるらしいよ。

田中:へえー。消火活動だけじゃないんですか。

並河:そうそう。参加すると、お金だけじゃなくて、知識も得られるみたいな。そういう組み立てがすごく大事な気がしている。

田中:誰かの役に立ちそうな感じもいいし、かつ、お金をもらえるというのがポイントですよね。10年間子育てして就業してないと、働く意欲がなくなっちゃうこともある。でも、そのブランクの間に何か活動をしていれば、復業するときに尻ごみしないで済むかもしれない。今は育児メインの専業主婦にも、普通に生活しながら、もっと自分の力が活用できる機会や、このくらいならできるという緩やかな選択肢があるといいなと思います。

並河:実際にはいろいろなママがいて、このプロジェクトでは、ママのあり方や選択肢を増やしていきたい。新しいママの職種を10個つくるとかね。

田中:それいいですね!


新しい市場を提示するのはすごくいいことな気がして

 

並河:今、牡鹿半島の国立公園づくりのプロジェクトをやっているんだけど、これは日本の国立公園のあり方を変えたいという思いがある。例えばアメリカには国立公園を管理するレンジャーという人たちが万単位でいて、国立公園にきた子どもたちに環境について教えたりする。子どもたちの憧れになってるんだよね。カウボーイハットかぶってたりして。

田中:レンジャーは、ボランタリースタッフですか?

並河:いやいや、仕事としてやってる。日本でも環境省にレンジャーがいるんだけど、例えば宮城県だと数人しかいないし、国立公園ではなくて事務所で働いている。レンジャーという職種が、地元の環境を守る憧れの職業になれば、職業としての選択肢も増えるし、地域にもいろいろな効果がでてくる。

田中:それは新しい市場がありそうな感じがしますね。

並河:市場があるよね。新しい市場を提示するのはすごくいいことな気がしていて。

田中「主婦の再就業による直接効果と経済波及効果」も最初は現実をみようと、収入と支出を見ることにしましたが、最終的には新しい市場がうまれることに結びつくと良いなと思ってはじめました。

並河:ママに対して、新しい仕事の形、新しい職業の形をつくると、すごく可能性がある気がするなぁ。

田中:子育ての空き時間を使ってできることはありそうです。あとこれはママに限らずですが、自分の趣味を仕事にすることって、一度は夢想しますよね。これが職業だったらいいのになって。例えばガーデニングが趣味の人に対して、「プロじゃなくてもいいから、うちの庭を整えてくれるんだったら謝礼払いますよ」みたいなことがあるといい。

並河:そういうのいいよね。うちの父親は、そばを打つ教室に通っていて、毎日うちの母親にそばを食わせている(笑)。実はそういうスキルを持った人たちって結構いて、そういうのをファイリングしてマッチングしていくだけでも仕事になりそう。

田中:子どもの誕生会に、そば打ちのおじさんが来てくれるとか。

並河:そうそう。うちの父親のそば、結構うまいんだよ(笑)。

田中:ネットでもマッチングってあるけど、まだ一般化してないですよね。小さいニーズはあると思うんですよ。「服のボタン取れてて、ボタンの予備を探してつける時間が無くて、でも来週着たい…」みたいな。

並河:そういうニーズあるかも。

田中:でもそれをネットで探して解決しようとは思わない。だからといって電柱に貼り紙してある「洋服直します」みたいなところに電話するのは、かなり勇気が要ります。

並河:「洋服直します」か。あれはリデザインしたほうがいいかもしれない。名前のつけ方とか組み合わせで、実はすごく伸びたりする。新しい職業をゼロベースで開発しなくても、リデザインしておもしろい形にすると、ニーズが発見できるかもね。

後編へ続く 〕

プロフィール

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    並河 進
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター ソーシャルデザイナー/クリエーティブ・ディレクター/コピーライター

    1973年生まれ。
    電通ソーシャル・デザイン・エンジン代表。
    社会貢献と企業をつなぐソーシャル・プロジェクトを数多く手掛ける。「電通ギャルラボ」代表。ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン・クリエーティブディレクター。上智大学大学院、東京工芸大学非常勤講師。受賞歴に、ACCシルバー、TCC新人賞、読売広告大賞など。著書に『下駄箱のラブレター』(ポプラ社)、『しろくまくんどうして?』(朝日新聞出版)、『ハッピーバースデイ 3.11』(飛鳥新社)、『Social Design 社会をちょっとよくするプロジェクトのつくりかた』(木楽舎)他。

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    田中 理絵
    株式会社電通デジタル シニア・コミュニケーション・デザイン・マネージャー

    2006年電通入社。生活者・市場研究を専門領域とし、コンサルティング、コミュニケーション戦略立案を行う。 2012年までラグジュアリーブランド市場研究(BLUX)、「電通ワカモン」、「電通ギャルラボ」など複数のチームで研究リーダーを担当。 2013年に育児休業より復帰し、「ママラボ」代表に。

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