デジタルの旬 #10

2015年のデジタル業界展望①
ネットでの「個」がいよいよ
実体経済を動かし始めた

~ 楽天 執行役員 本間毅氏

  • Honma takeshi pr
    本間 毅
    楽天株式会社 執行役員
デジタルの旬

目まぐるしく変貌を続けるデジタル業界。だがその中で、今こそが大きな転換点だとの指摘もある。2015年の年頭に当たり、これからの業界展望について業界のキーマンに語ってもらった。

聞き手:電通デジタル・ビジネス局 計画推進部長 小野裕三

シェアリングエコノミー、コンテンツ領域での変化、IoT、の三つがキーワー

 

――ここ最近のインターネットの状況を振り返って、どのようなことを思いますか。

本間:昨年くらいから、「個」の力が強くなってきていると感じています。もちろん、ネットの世界では以前から注目されていたのですが、今まではパーソナライズドマーケティングなど「対象」としての「個」でした。しかしこれからは、「主体」としての「個」がもっと大きくなっていくと思います。

――例えばどのようなことがありますか。

本間:主体としての「個」が、間接的・直接的に実体経済を動かすようになってきたと思います。

一つはシェアリングエコノミーです。「Uber」(スマホアプリを使ってタクシーを予約できる配車サービス)や「Airbnb」(個人宅で貸出用に提供された空き部屋などを旅行者が宿泊施設として利用できるシェアサイト)などのシェアリングサービスが日本に入ってきていますし、楽天も「ラクマ」(写真)というフリマサービスを始めるなどCtoCのサービスが広がっています。取引関係は個人と個人ですが、企業がそのためのマッチングと決済サービスを提供しています。裏側に企業が入ることでリスクを低減し、より安全な取引機会を創出しているわけです。サンフランシスコでは、Uberのようなサービスが3種ほどありますが、この影響でタクシー会社に所属していたドライバーの約40%がいなくなったといわれています。好きな時間に好きな場所で働くことのできるUberのようなサービスに流れているわけです。人によっては年間1000万円くらい稼げるし、副業とすることもできます。また、Airbnbを通して予約される全世界の客室数は、例えば某大手ホテルチェーン全体よりも大きい。一つ一つは小さくても、全部足し上げていくと、シェアリングエコノミーは実体経済として非常に大きなものになっています。

ラクマ

二つ目は、メディアやコンテンツの領域における変化です。米国に「ネットフリックス」という有料動画配信サービスがありますが、昨年、約100億円を投じてオリジナルのドラマ「ハウス・オブ・カード」を作り、数千万人のユーザーに配信し大成功しました。この成功を受けて、現在、第2弾が制作されています。実はこれはデータサイエンスを使って制作されたコンテンツで、政治モノのドラマは最後まで視聴され、またケビン・スペイシー出演の作品やデビッド・フィンチャー監督の作品は人気が高いなど、ネットフリックスが保有するビッグデータを分析して制作したわけです。個人データを分析したことで、ネット発のメジャーコンテンツが生まれたのです。

個人の発信の形態としてはユーチューバーが注目されていますが、その背景としては、グーグルのプラットフォームの上で広告によりマネタイズできるという形でエコシステムが確立されていることと、動画の制作機材が大衆化していることがあります。発信力を備えた個人と、それを支えるエコシステムができていることで、新しいコンテンツがつくり出され実体経済を動かしているのです。

音楽ビジネスもかなり様変わりしています。今はダウンロードではなく、定額聴き放題のストリーミングモデルが主流になってきていますが、100万曲聴けると言われても選べないので、キュレーションの重要性が増しています。ヒットチャートで選ぶのではなくて、誰かが作ったプレイリストについていくという形で、ここにも個人が介在しています。「スポティファイ」はそれが基本機能になっていますが、それをさらに進めたのが「ビーツミュージック」です。DJプレイが、一つのコンセプトや世界観で音楽をピックアップしてつなげていきます。多くのDJから、好きな人をフォローするというモデルで、音楽は個々の曲やアルバムではなく、個人がつくる一つのコンテクストになっているのです。その他に、インディーズミュージックのネットでの広がりもあります。昔はメジャーデビューできない人がインディーズにという扱いでしたが、今は、個人がつくったリミックステープやDJプレイ、楽曲などをシェアしてみんなで聴く、というスタイルになっています。レコード会社がプロデュースした音楽を受け身で聴く時代から、個人が制作した音楽やコンテクストが共有される時代に変わってきています。

三つ目は、IoT(Internet of Things・モノのインターネット)です。例えば、ウエアラブル端末はセンサーに通信機能が付いたものなので、それを個人が身につけている間は、特定の個人情報が発信されます。いわば最大のビッグデータで、そのような個人を取り巻くデータがクラウド上で一つになり、データサイエンスが応用されると、その人にとって最適なものを、あらゆる方面から提供するスキームができます。IoTは、単にものがネットにつながるのではなくて、データサイエンスとセンシングテクノロジーで、自分の生活がエージェント(ユーザーの代理として機能するソフトウエア)によって勝手に最適化されていく時代をもたらすのです。そうすると、メーカーがユーザーにモノを売って終わりという時代ではなく、個人とどう関係をつくるのかという話に変わっていきます。その時に怖いのは、誰を信用していいのかという問題です。個人情報のレベルではなく、下手をすると、自分の生活パターンまで変えられてしまう可能性が出てくるわけで、ここは考える必要があります。

 

ミッションドリブンな起業家が、社会システムを変え始めた

 

――個人の情報発信の力やエコシステムの活用という視点で考えた時、確かに米国では大規模な成功事例も多くありうまくいっているように見えますが、日本ではどうなのでしょう。

本間:それは重要なポイントです。例えばIoTで考えると、本当は日本にとってはチャンスで、センシングテクノロジーなどで日本の匠の技術が生きるはずです。しかし一方で、シリコンバレーとは違い、IoTやシェアリングエコノミーなどのイノベーションに対して規制がネガティブに関わってくるケースが多く、ハードルになっています。規制を柔軟に運用していくことができるかが大きな課題になると思います。

本間毅氏

――規制が障害になっている面もあるでしょうが、そもそも文化や意識が違うということもあり得ませんか。

本間:もし文化や意識が違っているなら、米国発のツイッターやフェイスブック、YouTubeがこれだけ日本で流行するとは考えられません。最近はセルフィー(自分撮り)も流行していますし、スマホの周りで起こっていることは、米国も日本も変わらないと思います。個人的には文化や意識よりも、規制の問題だと考えています。

――それでは日本や米国も含めて、世界的に見て今ネット業界に足りないと思うことはありますか。

本間:足りないということではないですが、最近意識しているのは、社会的意義や大きなビジョンを持った起業家の与える影響が大きくなっているということです。ミッションドリブンで大きなことを考えるアプローチをみんな真剣にやるようになっています。その背景にはシェアリングエコノミーの成功などで自信を持ち始めていることがあります。UberもAirbnbもシリコンバレー発ですが、シリコンバレーでは、テクノロジーを使って問題を解決しようという起業家精神が広がっていて、起業の目的を上場ではなく、世の中を良くすることだと考える企業が増えています。そしてそのカルチャーを支え、規制に対抗する弁護士軍団がいます。個人と個人が取引をすることになると、既存のBtoBの枠組みを超えるため、既得権益を保護してきた法案や規制と衝突します。それを、起業家精神や弁護士のサポートで乗り越え、結果的に既存のビジネスを凌駕する成功を収めてきています。起業家による、社会システムの変動につながるようなアプローチは、これからもっと増えていくでしょう。ただ、日本ではまだそのようなロールモデルが出てないので難しい面があります。どちらかというと経済的な成功に目が行きがちで、社会を変える方向には進みにくいですね。日本に今ある問題に意識を向け、それを解決するためにはどうすればいいか、そして実現するためにイノベーションをどう使うのかということを考えられる人が出てくるとよいと思います。この部分は足りないと思うところですね。

 

IoTでは、デバイス同士の連携、統合が重要に

 

――最近のデバイスの動向についてはどう思いますか。

本間:米国はタブレットの市場が急速に縮小しています。大きなビジネスをこなすには不十分ですし、一方でスマホはどんどん大きくなっているので、タブレットは中途半端な存在になっています。価格も急速に下がりましたが、パソコンも安くなってきていています。

――そうすると、これからはパソコンとスマホに二極化していくということでしょうか。

本間:スマホがあるからBluetoothでつながるさまざまなデバイスが増えてきていて、ウエアラブルやIoTが普及していくのだと思います。スマホでデータ分析や解析もできるので、ローカルである程度処理したものをクラウドに上げていくという感じになっています。

――ウエアラブルはいろいろな形態がありますが、どのように進化していくでしょう。

本間:一つのウエアラブルデバイスでカバーする領域が狭くなり、専門特化したものが増えてきます。ですが、機器同士の連携が全くなされていないことが今後の課題です。これからはIoTとIoTを連携させて、オーケストレーションするものが求められます。プログラムベースでの連携やクラウド上でのつながりなど、さまざまなレベルで自動的につながる世界をつくっていくことが必要でしょう。あるいは、センターコントロール機能を持ったルーターを使うという発想もあると思います。つまり、ホームオートメーションの場合、個別の端末をネットにつなげるのは結構大変ですので、端末とネットの接続を確実にするために個別の端末ではなくルーターからアプローチするという考え方です。また、ロボットが、対話型ユーザーインターフェイスとして家の中を把握したり、コントロールしたりすることも考えられます。

――自動車についてもIT化が進んでいますが、どう思いますか。

本間:自動車に関するイノベーションは、ゆっくりですが確実に進んでいます。例えば米国では、自動車のオーディオ機能は、スマホからBluetoothで飛ばすか、USBで接続して再生するのが基本になっています。アンプとスピーカー以外使っていない状態で、家のホームオーディオで起きたことと同じ現象が起きています。また、スマホの画面が大きくなったこともあり、カーナビはスマホに変わっています。「オートマチック」というベンチャーは、車に接続する端末を提供していますが、ドライビングスコアの判定やガソリン残量に合わせてスタンドを紹介する機能、GPSと連携して燃費や走行距離をアウトプットする機能などを持っています。その他に、完全従量制自動車保険も始まっていて、端末で走行距離や運転パターンなどを取得し、走行距離などに応じて保険料が設定されます。自動運転カーやレーン自動変更など運転技術に関するものも変わってきています。10年後には自動車は全く違うものになっている可能性があります。また自動車の周辺事業で、バレーパーキング(ホテルやレストランなどで車を代行で駐車してもらえるサービス)を提供する「ZIRX」のようなサービスなど生活を支援するものも増えていますし、スマホが自動車の使い方を変えて、豊かにしてきていると思います。

――ドローンなども注目されていますね。

本間:発信力という点でいうと、ドローンとウエアラブルカメラのGoProの組み合わせはすごく面白いです。中国の企業が、民生化したドローンにGoProを装着できるようにしました。そうすると今までに撮れなかった映像を簡単に撮影できるようになります。ムービー制作の他に、農業の領域や、また建築の現場などでマップをリアルタイムに作成するという使われ方も考えられます。ドローンの活用が今後広がっていくのは間違いないです。基礎技術はあるので、今後はそれをどのようなアプリやビジネスで活用するのかという段階になっていて、それはおそらく大企業が取り組むものではなく、個人が活用していくということになるでしょう。

――IoTによっていろいろな日常品までネットにつながりつつありますが、これはどこまで進むでしょう。

本間:今のIoTは、個別の端末においてハードからソフト、通信、アプリ、クラウドまで、すべてを垂直統合的にカバーしていて、これが続いているうちはあまり広がらないでしょう。そこにプラットフォームとなる共通の規格が出てきて、端末同士が連携されるようになると、どこまでも広がっていくと思います。もう一つの要因は、クラウドファンディング「キックスターター」のようなハードの開発を支えるエコシステムです。これによってユーザーニーズに合った商品を圧倒的に短いスパンで開発することができ、IoTに対応していくことができるようになります。個のパワーを利用したIoTのエコシステムとしては、個人のアイデアを製品化し販売するコミュニティー型のスタートアップ企業「クアーキー」というものもあり、商品開発に関わるさまざま能力を持った人が、一つのプラットフォームで開発を行い、その成果としての報酬を関わった人全員でシェアすることができます。これは、クラウドソーシングをものづくりの川上から川下まで分業化したようなサービスです。また、眠っている知財を公開して、新しい製品をつくってもらう流れも広がっています。

 

個人の小さなキュレーションでもマネタイズ可能な時代に

 

――本と電子書籍、CDと音楽配信などの対立がありますが、そこに見られるようなリアルとネットの関係についてはどう思いますか。

本間:本は音楽や映像とは違うと思います。音楽や映像はどのような方法や媒体を通じて届けられるかにかかわらず、同じようにコンテンツを体験できます。つまり、メディアエクスペリエンスとメディアソースが完全に切り離されているのです。一方で本は、それが一体化しています。本をめくるという行為は、電子書籍ではできませんし、実際の本をタップしてめくることもできません。紙で見ている体験と、電子で見ている体験は全く違うものです。つまり、書籍でのアナログとデジタルの拮抗と、音楽や映画での拮抗は別物なわけです。書籍の場合、本は電子書籍では出したくないという作家がいますが、音楽や映像でそのような意識を持っている作り手はいないでしょう。例えば、映画館で見るのはいいけどDVDは出したくないなんていう映画監督はいないはずです。紙の本は電子書籍とフィジカルに違っていて、そのフィジカルな刺激によって思考を生み出すことがあるので、紙と電子は併存していくのだと思います。

――音楽に関してはダウンロードからストリーミングへという動きがありますが、電子書籍などでも広がっていきますか

本間:米国でも読み放題モデルのサービスはいくつかあります。ただ、音楽や映画とは形が違います。出版社は、ロングテールコンテンツの活性化として読み放題モデルを許容しているのだと思います。ベストセラータイトルは入れないが、過去のライブラリータイトルはストリーミングで提供して活性化していくという形です。ロングテールとしてある程度聴かれている音楽や読まれている書籍に関して、何もしないのではなく、動かしていくことで収益に変えていくという発想です。ネットではよくありますね。

――コンテンツを健全に育成していくにはマネタイズが重要になると思いますが、その点はどう思いますか。

本間:クリエーターとして作品を発信することと、自分の時間と能力でそれをお金に替えるのは別のことだと思います。前者はユーチューバーのようなもので、後者はクラウドソーシングで仕事を請け負って、コンテンツを作るようなことです。個人のクリエーターがマネタイズする仕組みも少しずつ広がっていて、例えばLINEスタンプのマーケットなどがあります。また、ツイッターのまとめをつくったり、音楽のプレイリストをつくったりして、その収益がシェアされるというような、メディアの再編集によってマネタイズするものなどもあります。

――なるほど。音楽を作曲するなどのようにコンテンツを一から制作してマネタイズする、ということではなく、センスのいいプレイリストをつくって提供するなど既にコンテンツがあることを前提にキュレーションをしてマネタイズする、というやり方があるわけですね。

本間:大きなメディアとして発信するのではなく、個人が考えていることやクリエイティブな取り組みを発信することがお金になる時代になってきています。個人がこのようにして発信していく流れは止まらないですね。

 

マッチングと決済があれば、どんなものでも組み合わせられる

 

――いろいろな形でCtoC的なものが広がってきていますが、これからもっと拡大していくのでしょうか。

本間:マッチングと決済の二つがすべての基本になっているわけですから、いろんな組み合わせが考えられます。実際、米国には既にさまざまなサービスが生まれています。例えば、「ドアダッシュ」というサービスはデリバリーを代行するサービスで、デリバリーをしたくてもできないレストランなどに、デリバリーを受け付けるウェブサイトおよび宅配する人材を提供しています。食べたい人と、運ぶ人と、レストランを組み合わせているわけです。「タスクラビット」というサービスもあります。これは個人が便利屋さんをやってくれるサービスで、やってほしいことがある人と、それができる人をマッチングして決済機能を提供しています。

――そのようなシェアリングエコノミー的なものが出てくると、思いもつかない新しいサービスがどんどん生まれてきそうですね。ただ、個人同士の取引が増えるとトラブルが起こる可能性も大きくなりそうです。

本間:確かにそのような面はありますが、既存の企業が提供するサービスでもトラブルはいろんな形で実際にあったわけで、ネットだからトラブルが増えたということではないと思います。また、ネットでもレーティングシステムなどをうまく活用することでトラブルは低減できます。例えばUberでは、ドライバーが特定のレーティング以下になるとオーダーが入らなくなります。CtoCを推進するためには、利便性以前に安心・安全と信頼性が重要なので、各社はかなり気を遣っています。

――ソーシャルメディアにおいて、機能を特化したものが増えたりして多様化していますが、そのような動きはどう思いますか。

本間:必ず波があると思います。ソーシャルメディアのスイッチングコストは高くないので、ネットワーク効果でユーザーが集まったとしても、みんなで一緒に別のサービスに移動するということが起こるわけです。それを予測することもできないので、ソーシャルメディアは本当に難しいと思います。

――ビッグデータがネットメディアに及ぼす影響はどのようなものが考えられますか。

本間:ビッグデータは分析して使うことに意味があるので、データサイエンスが重要だと思います。データによって方向性や決定が変わっていくのは間違いないので、社会システムやメディアコンテンツ、Eコマースなど、あらゆるものがデータ主導に変わっていくと思います。アドテクノロジーはまさにそうですが、交通渋滞予測や電力自給予測などにも影響していくでしょう。

本間毅氏

――ビッグデータをクローズドにするのかオープンにするのかという議論もありますが、今後どうなるでしょう。

本間:センシティブな問題だと思いますが、一般論としてはオープン化していく方向に進むと思います。クローズドにすると、そのデータを保持している主体が信用できないと大変なことになります。データの透明性やインターネットの中立性が確保されないと、安心してデータを預けられません。また、ハードウエアもオープン化の流れだと思います。EVの「テスラモーターズ」が特許を全部公開しましたが、それは経済的に理にかなっています。知財を公開して、どこかの企業がそれを使って電気自動車の開発を行えば、そこに電池を供給していくことで新たな市場を開拓でき、電池の価格を下げていくことができるわけです。情報やハードウエアをオープン化して経済の規模やダイナミズムを増していくことは良い流れと思っています。

――大量の情報が氾濫している中で、これからキュレーションサービスへの注目は高まるでしょうか。

本間:キュレーションサービス単体で注目されるかどうかは分からないですが、キュレーションの必要性は高まっています。例えば、スマホ経由でのEコマース利用が急速に拡大していますが、膨大な数の商品の中から選び切れないので、何らかのフィルターで自分に合ったものを提供してほしいわけです。単なるパーソナライゼーションやレコメンデーションではなく、個人を対象にした「ヒューマンキュレーション」に加えてデータサイエンスとセンシングが一体化したエージェントのようなものが出てくるのだと思います。

 

エコシステムをつくるバリューチェーンの要としての広告に期待

 

――今のインターネット広告についてはどう見ていますか。

本間:精度は進化していると思います。ただ、広告がユーザーにメリットをもたらすところまでは至っていないですね。広告主の都合ではなく、ユーザーが広告を見てよかったと感じるところまでどう近づいていくかだと思います。既に商品を買っているのに、それに関する広告がしつこく出てくるというのはユーザーにとってはありがたくないですね。広告もデータサイエンスをベースに、行動や購入履歴から意図を判断して、潜在的に求めている別の情報を提案していくようになるとよいと思います。

――最近、アカウント乗っ取りや「忘れられる権利」など、インターネットの負の面も顕在化していますが、このあたりはどう思いますか。

本間:信頼される企業やプラットフォームになるということが大事です。一度でも問題が起こると、人はそのプラットフォームから去っていきますので、責任としてそれを果たしていく必要があり、大手のソーシャルメディアは大変だと思います。

――2015年以降、大きな課題や可能性になることはなんでしょう。

本間:前半でお話しした通り、対象としての「個」から主体としての「個」への移行が大きなテーマになっていますので、それを支えるIoTやデータサイエンス、メディアの変化や進化、シェアリングエコノミーという一連のつながっている領域に注目していきたいですね。インターネットのこれまでの進化では単体のサービスごとに流行のように広がっていましたが、今は社会システム全体や実体経済に影響を及ぼすようになっているので、インターネットの変化と世の中の変化を結びつけて、そこから何が起こるかを考えていかなければならないと思います。既存ビジネスにとらわれ過ぎるとよくなくて、変化に対する準備をしておくことが重要です。ただ、イノベーションに対して規制がネガティブに働くと進歩が止まるので、そのバランスをどうするかは課題ですね。

――ネット業界で、今後どのような人材が必要でしょう。

本間:クリエイティブにビジネスのことを理解し、かつ自分でプログラミングができるエンジニアです。

――広告業界に期待することは何でしょうか。

本間:エコシステムをつくるバリューチェーンの大きな要が広告ですので、新しいエコシステムやメディアを支えるという視点で、広告業界がそこに注力していってほしいです。インターネットビジネスにおいて広告はエナジーでありガソリンなので、その視点でチャレンジをして、エコシステムを拡大・強化していくという部分を担ってもらえることを期待します。

プロフィール

  • Honma takeshi pr
    本間 毅
    楽天株式会社 執行役員

    大学在学中に起業、1997年にはイエルネットを設立、起業家として大きな成功を収める。2002年にはイエルネットを解散して翌年ソニーに入社、電子書籍事業などを手掛ける。2012年に楽天に入社、現在デジタルコンテンツ推進担当の執行役員。

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