人もペットもうれしい社会を。 #21

人とペットをつなぐ、テクノロジーの可能性(後編)

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    明石 英子
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター
  • Yonezawa profile
    米澤 香子
    株式会社電通 CDC クリエーティブ・テクノロジスト

前回に続き、Think Pet Project立ち上げメンバーの明石さん、大学院生のときにペット用ウェアラブルを研究・開発していた同メンバー米澤さんが、ペット用テクノロジーに秘められた大きな可能性について考えました。

 

「IoT(Internet of Things)」から「IoA(Internet of Animals)」へ。

明石:「安心・安全」という観点でいうと、東日本大震災のときにウェアラブルの必要性を強く感じました。飼っている犬の安否確認ができなくて、自分は家に帰れないし、帰れないと犬に伝えることもできない。物が落ちてきてけがしていないか、火災報知器の音で興奮して暴れていないかなど、とにかく家の状況が分からないのでとても心配でした。そういう状況のとき、動いていることや水を飲んでいることが分かるだけでも安心しますよね。

米澤:本当にそう思います。災害時はもちろん、夏場の温度管理もけっこう気を使いますよね。私はエアコンを遠隔操作できるスマート・リモコンを使って、天気予報を見ながら温度調整をしています。

明石:それはいいですね。エアコンは一度でも停電したら自動でつかないので不安なんですよね。私も部屋の温度をチェックするデバイスを使っています。設定した温度以上になるとアラートが携帯に送られるんです。もしアラートが通知されたらすぐに家に帰りますと、職場の仲間には伝えています(笑)。

米澤:リモコンとか温度センサーのように、 個々のIoT(Internet of Things)は少しずつ進歩しています。今年のCES(米ラスベガスで開かれる世界最大の家電見本市)でさまざまなペット向けデバイスが登場しましたが、今後はペットのために必要なことが全体的に包括されたネットワークシステム、いうなれば「IoA(Internet of Animals)」に発展させていくことが必要なんだと思います。

 

「ペットのビッグデータ」が共生社会の鍵を握る。

明石:個人的にThink Pet Projectで目指していることの一つとして、シニア世帯にもっとペットを飼うことの素晴らしさを知ってもらい、高齢者のペットオーナーを増やしたいと思っているんです。たとえば犬を飼うと、嫌でも散歩に連れていくようになりますよね。すると、地域の人とペットを介してコミュニケーションが生まれ、そこにコミュニティーも生じる。私の実家でも犬を飼っていますが、散歩に行くことで近所の人と話をすることが増え、両親は以前よりも情報通になりました。地域社会とつながるきっかけとしても、ペットを飼うことは高齢者にとって良い効果があると思います。

米澤:高齢者にとってのハードルは、自分に何かあったらペットの面倒を見られなくなるという点ですよね。

明石:0歳のペットを飼うことをためらう方も多いと聞きます。

米澤:テクノロジーから少し話はそれますが、そういう高齢者の方や、転勤の多い方にもおすすめなのが、部屋を借りるときに猫がついてくる「猫付きマンション」。猫の保護団体が運営していて、転勤などの事情で猫を飼えなくなったときは保護団体が責任を持って引き取ってくれるし、猫と一緒に引っ越すこともできるんです。いきなり飼うのが不安な人にとっては、これも一つの補助ですよね。

明石:それこそ、「猫付き老人ホーム」があってもいいですよね。高齢社会に対応した「人とペットの共生」を考えたとき、一対一ではなくコミュニティーで飼うとか、場所で飼うという方法もありだと思います。

米澤:高齢といえば、いまは医療技術が発達してペットの高齢化も進みつつあります。それに伴う様々な問題に対して、テクノロジーが介在する余地はありそうですよね。

明石:うちの犬も8歳になるので、今後ささいなことで骨折したり、具合が悪くならないかが心配で…。犬は人間より痛みを感じにくい生き物と言われているので、痛がったときにはもう手遅れだという話も聞きます。なので、データから病気を早期発見できるシステムが実現できるといいですよね。ストレスがいちばん良くないらしいので、行動解析でストレスのかかり具合を計測するとか。

米澤:人間のように脳波や皮膚の発汗量でストレスを測ることは難しいですが、歩く距離や、ごはんを食べる量などはある程度トラッキングできます。今後はそれらのデータを、どれだけ実証に結びつけられるかだと思います。

明石:そうですね。ペットがストレスを感じていないかどうか分かるだけでも、私たち飼い主にとって安心につながるので、実現できればうれしいですよね。

米澤:安心で安全な環境づくりはもちろん、飼い主とペットが一緒に楽しい時間を過ごすことも共生の必須条件だと思います。

明石:様々なテクノロジーで「ペットのビッグデータ」が構築されると、新しいサービスがどんどん生まれそうですね。飼いたい人が安心して飼えて、生活がより豊かになる。テクノロジーには、「人とペットの共生社会」を実現し得る大きな可能性があると思います。これからも企業やペットオーナーの方々にもご協力いただきながら、米澤さんを中心に研究・開発を進めていきましょう。

プロフィール

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    明石 英子
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    1991年電通入社。食品・飲料、化粧品、流通などの商品開発・マーケティング戦略等に携わる。
    2002年の身体障害者補助犬法の施行をきっかけに、日本における“人とペットの共生社会づくり”に関心を持ち、2011年、ペット産業の創造を目的とした社内横断プロジェクト「Think Pet Project」を立ち上げる。

  • Yonezawa profile
    米澤 香子
    株式会社電通 CDC クリエーティブ・テクノロジスト

    大学で航空宇宙工学、大学院でHuman Computer Interactionを専攻。人と猫のインタラクションプラットフォームCat@Logを開発。2010年電通入社後、大学との共同研究やクライアントワークに従事。ウェブ・アプリ・インスタレーション・イベントなどテクノロジーの関わる領域において、キャンペーンプランニングだけでなくプロダクトやサービスの企画開発も行っている。Cannes Lions Titanium Grand Prix、D&AD Black Pencil、文化庁メディア芸術祭大賞など多数受賞。うちの猫が世界で一番かわいい。

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