人もペットもうれしい社会を。 #20

人とペットをつなぐ、テクノロジーの可能性(前編)

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    明石 英子
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター
  • Yonezawa profile
    米澤 香子
    株式会社電通 CDC クリエーティブ・テクノロジスト

いま、ICT(情報通信技術)トレンドの一つとして注目を集めているウェアラブル端末。時計や眼鏡、ヘッドフォンなど様々な分野にウェアラブルが参入する中で、今回はペット向けのウェアラブルやテクノロジーが持つ大きな可能性について、Think Pet Project立ち上げメンバーの明石さん、同プロジェクトのメンバーでペット向けウェアラブルの研究をしていた米澤さんが語り合いました。

 

猫の行動をSNSに自動投稿して、一日の動きを把握。

明石:米澤さんは大学院生のときにウェアラブルの研究をされていたそうですが、具体的にどのようなことをしていたんですか?

米澤:「Human Computer Interaction」という、人とコンピュータの関わり方を研究する分野があって、その中でウェアラブルの研究・開発をしていました。当時は人を対象としたウェアラブル研究がほとんどだったのですが、私はもともと猫好きだったこともあって、「Human Cat  Interaction 」と勝手に命名して(笑)、猫向けのウェアラブル研究・開発を進めていました。

明石:猫向けのウェアラブルって?

米澤:Cat@Log」といって、猫の首輪にカメラやGPS、加速度センサーなどの機能を搭載して、様々なデータを収集するプラットフォームを開発しました。たとえば、歩いたりごはんを食べるといった動作を記録したり、普段何をしているのかが猫目線で分かったり、位置情報のログを取って縄張りマップを作成したり。そして、その行動解析をもとにブログやSNSに猫が何をしていたのかを自動投稿するモジュールもつくりました。

明石:ブログやSNSを見ると、ペットがどのような一日を過ごしたのかが分かるんですね。実際に使ってみて、新しい発見はありました?

米澤:当時、実家で猫を2匹飼っていたのですが、猫同士はあまり仲が良くないというか、お互いに関心がないと思っていたんです。でもカメラの映像を見てみると、1匹がブラッシングされているときに、実はもう1匹がそれをうらやましそうに見ていたり、人が留守にしているときは2匹一緒にいることが多かった。

明石:ペットの新たな一面が発見できるのは、飼い主としてはうれしいですね。当時はまだペット向けのウェアラブルはなかったのですよね?

米澤:2008年ごろだったので、まだ人向けのウェアラブルですら一般的ではありませんでした。ペット向けウェアラブル商品はなかったと思います。

明石:そもそも米澤さんが猫を好きになったきっかけは?

米澤:もともと実家で飼っていましたし、母も祖母も猫好きなのでおそらく遺伝的に(笑)。今も一人暮らしで猫を飼っています。ライ太という名前で、その子は大学院生のころに拾った猫なんです。疥癬(かいせん)という皮膚の病気にかかっていたので、すぐに動物病院で治療してもらって8ヵ月ほど保護団体に預けていました。そして、就職と同時に一人暮らしを始めたので、そのタイミングで引き取りました。

明石:一人暮らしで飼うことに迷いはありませんでした?

米澤:それはもう、ずっと迷っていました。ライ太は猫エイズ(FIV)キャリアなので、ストレスのない生活をさせないといけない。でも、就職したら少なくとも日中は家にいないし、帰りが遅くなる日だってある。おなかをすかせてしまうだろうし、寂しがるかもしれない。保護団体にいれば誰かしら人がいるし、猫もたくさんいるので、ライ太にとってどちらが幸せなのかはすごく考えました。でも、保護団体の方に相談したり、一人暮らしで猫を飼っている先輩の話を聞いて、飼うことを決意しました。

 

テクノロジーが、単身世帯の「飼えない」マインドを変える。

明石:いま、米澤さんが話してくれたような不安や迷いは、ペットを飼いたい、あるいは既に飼っている多くの一人暮らしの方が抱えている悩みだと思います。長期出張が入ったらごはんはどうしよう、家を空けているときに何かあったらどうしようという心配が常にありますよね。メールで「元気?」と送ることもできないですし(笑)。そのときに、米澤さんの「Cat@Log」のようなウェアラブルが、飼うのをためらっている人の背中を押してあげられるかもしれないし、飼っている人の不安を和らげることができるかもしれないですよね。

米澤:日本はこれから単身世帯が増えていくといわれているので、安心してペットを飼えるような環境づくりがますます必要になってきます。その意味で、物理的な距離を補うウェアラブルには大きな可能性があると思います。

明石:単身世帯の人は休みの日に誰とも口をきかないこともあるというけど、犬や猫を飼っていれば自然に話しかけるしコミュニケーションも生まれます。前回のコラムでもあったように、ペットをなでることで人間にもペットにも愛情ホルモンが分泌されて情緒が安定するという説もあって、メンタル面の健康という観点でもペットを飼うことは有意義なんですよね。だからこそ、ウェアラブルを含めて単身世帯の飼うハードルを下げる取り組みは、業界全体として後押しすべきことだと思います。

※対談後編は3月18日(水)に更新予定です。

プロフィール

  •            r
    明石 英子
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    1991年電通入社。食品・飲料、化粧品、流通などの商品開発・マーケティング戦略等に携わる。
    2002年の身体障害者補助犬法の施行をきっかけに、日本における“人とペットの共生社会づくり”に関心を持ち、2011年、ペット産業の創造を目的とした社内横断プロジェクト「Think Pet Project」を立ち上げる。

  • Yonezawa profile
    米澤 香子
    株式会社電通 CDC クリエーティブ・テクノロジスト

    大学で航空宇宙工学、大学院でHuman Computer Interactionを専攻。人と猫のインタラクションプラットフォームCat@Logを開発。2010年電通入社後、大学との共同研究やクライアントワークに従事。ウェブ・アプリ・インスタレーション・イベントなどテクノロジーの関わる領域において、キャンペーンプランニングだけでなくプロダクトやサービスの企画開発も行っている。Cannes Lions Titanium Grand Prix、D&AD Black Pencil、文化庁メディア芸術祭大賞など多数受賞。うちの猫が世界で一番かわいい。

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