新明解「戦略PR」 #22

PRのクリエーティブは「半歩先」に!

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    井口 理
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長 チーフPRプランナー

新年度が始まり、1カ月がたちましたね。PRパーソンは少しばかり季節を先取りして情報を考えるからか、先へ先へと意識が行きがちなので、意識はもう夏、いやすっかり秋な気分でノスタルジックな気持ちの私ですが、現実を見据えて本日も参りましょう。今回は、時々質問を受ける「PRにおけるクリエーティブとは」についてです。

クリエーティブにPR目線が求められる時代

常々申し上げていますが、今は、クリエーティブの良しあしだけではなかなかクライアントにも評価されない時代です。いかに世間を巻き込み、人を動かしていくかということがキャンペーンの成果として求められています。その影響か「PRも手伝ってくれない?」というご相談をクリエーティブチームからいただくことが増えてきました。最初は作ったものを見せられ、「これって話題になりますかね?」なんて感じの相談が多かったのですが、最近はコンテの段階や、その前の構想段階でご相談をいただけるようになりました。

「…という流れで行きたいんですけど、PR的に話題化するとすれば、なにか付け足しておく要素ありますか?」とか「もう少しバズらせるには、ここの表現はどうするべきですか?」といった感じ。

漠としていて答えづらいように見えますが、実はこのタイミングで相談をいただいた方がPRパーソンにとってはありがたいんです。だって、さまざまな社会背景に照らし合わせて、コンテンツそのものが自走する力を持つように、初期段階でコンサルティングできるチャンスをもらえるからです。勘のいいクリエーティブディレクターの方々は、「なるへそ!うんうん」と言ってくださる。こうなったらCR×PRの勝ちパターン。初期段階からの共有・融合ができると、キャンペーン自体が立体的に設計できるのです。

PRのクリエーティブは「半歩先」がちょうど良い

こうやって、クリエーティブにもPR目線が活用されてきている今日このごろですが、PRがもう少しクリエーティブを引っ張るときもあります。広く社会に理解・納得・共感を広げ、トレンド化していこうとすれば自ずとそういうことになってくるのかもしれません。PRがクリエーティブを先導するとどうなるかというと、メーンターゲットに刺さるエッジーな表現よりも、少しマイルドというか、だれでも理解・共感しやすく、口の端に乗せやすい表現になります。

もちろん当たり前の言葉過ぎては聞き流されますから、「振り向かせつつも語りやすい」という非常に微妙なクリエーティブが大切になってきます。それを私は、「半歩先のクリエーティブ」と呼びたいと思います。

とかく新しい言葉を創り、発信し続けるこの業界ですが、果たしてどのくらい根付いているのでしょうか。もちろん新領域を新たな言葉で言い表して定義する、あるいは顕在化させていくというのは大切ですが、尖ればいいというものでもないはずです。で、先に出た「半歩先」というお話。エッジーな、今までに聞いたこともないような言葉を「一歩も二歩も先を行った感じ」で生み出し発信することはイノベーター層やアーリーアダプター層には響くと思うのです。ただ、その後の爆発的な浸透につなげるためには、「半歩先」で表現をとどめておくのがポイントだと思うのです。

「半歩先」がもたらす効用とは?

例えば、ちまたにあふれる「○活」という言葉。これ、尖ったクリエーティブを作る人には「古くさいし、今さら恥ずかしくて使えないよー」と思われがちな言葉かもしれません。確かに、すでに多くの類似語がありますよね。「就活」「婚活」「妊活」「終活」などなど。でも逆にそれによって「○活ってのはあれだろ? なんか目標もってひたすら準備するようなことだろ?」みたいな理解がそこはかとなく各人にあると思うんです。こういった老若男女問わず、既存の知識で自分なりに理解し、語れるということは言葉の浸透に大変有効だと思うのです。もちろんそこにイノベーターなりアーリーアダプターなりの、理解促進のためのサポート発言があればさらに理解度は高まるはず。

昨今定着してきている「菌活=菌を含んだ食事で健康促進」なんてのも、いろんなメーカーが使用していて、まさに市場としても定着化が進んだように思います。実際、この話題はテレビなどで紹介されると番組のキャスターやコメンテーターが「あー、なるほどね!」「私も知らず知らずやってましたよ、菌活」のように、自身の生活に照らし合わせて諸々を語り出すという現象を多く見ました。そういった言葉を引き出すことも重要ですよね。

「第3の○○」といったキーワードなども、理解度を高めるには効果的です。「第3のビール」ではありませんが、やはり「第1の…」「第2の…」があるからこそ、「第3ってのはさ、こういう意味じゃね?」という連想も効くというもの。このようなヒントを伴うキーワードづくりもアリですね。ちなみに私の経験値から「第4の…」はことごとく失敗してますので、ご参考まで。

このように、ひとたび一般語として定着するとメディアでも多用されるようになり、一過性のキャンペーンキーワードから定番・定例化してきます。「この季節になるとやっぱりこの話題だね!」とメディアもレギュラー情報として扱ってくれます。その意味で、キーワードをある意味「開放」することも大切です。言葉を商標登録などで囲い込んでしまえば、それは一メーカーのキャンペーンワードになってしまう。それではメディアが取り上げてくれません。あくまで広くその言葉の普及を目指し、しかし仕掛け人としての自分がその中心にいるように常にポジションを整えておくことが必要ですし、そのために常に市場におけるポジショニングをウオッチしておくべきでしょう。

あ、そのためにもPRパーソンにおけるメディアウオッチやソーシャルリスニングなんかも活用したりなんかするとモアベターよ!(あ、最後宣伝で、すみません)

プロフィール

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    井口 理
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長 チーフPRプランナー

    1990年株式会社電通PRセンター(現株式会社電通パブリックリレーションズ)入社。コミュニケーションデザインを手がけるチーフPRプランナー。
     
    企業のコーポレートコミュニケーションから、製品・サービスの戦略PR、動画コンテンツを活用したバイラル施策や自治体広報まで、幅広く手掛ける。最近では、熊本県の赤い特産物をアピールするため仕掛けた「くまモンほっぺ紛失事件」のPRプランを手掛け、世界的なPR業界紙「Holmes Report」が主催するアワードで「世界のPRプロジェクト50選」に選出された他、多数の口コミを起こしたキャンペーンとして、世界的な口コミアワードである「WOMMY AWARD2014」を日本で初めて受賞。
    その他、受賞歴に、Asia Pacific PR Award、日本PR協会「PRアワード グランプリ」、国際PR協会「ゴールデンワールドアワーズ」、SABRE AWARDS ASIA PACIFIC、PR WEEK アワード・アジア、Asia Pacific SABREアワード、Spikes Asia 2014、Global SABRE アワードなど。
    実務のみならず、大学やトレードショー、PR協会での講義による若手育成にも従事。「Cannes Lions 2012」「Spikes Asia 2012」PR部門、「SABRE AWARDS ASIA PACIFIC 2014」「PRWeek Awards Asia 2015」「ヤングカンヌPR部門日本代表選考」審査員。「New York Festivals パブリック&メディア・リレーションズ部門」Grand Jury。2013年6月に「戦略PRの本質~実践のための5つの視点~」を上梓。

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