10代女子のリアル #07

女子高生に「LINE歌詞ドッキリ」とericaが拡がった理由

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    erica
    シンガー・ソングライター
  • Profile 2
    nao
    作曲家・編曲家・音楽プロデューサー
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    阿佐見 綾香
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 未来創造グループ

10代女子のトレンドを研究する原宿可愛研。今回は、女子中高生に人気のシンガー・ソングライターericaさんと、元I WiSHのメンバーで、音楽プロデューサーのnaoさんをゲストに迎え、電通マーケティングソリューション局・阿佐見綾香が、3人のイマドキ女子高生と一緒に座談会を行いました。

ericaさんの『あなたへ贈る歌』の歌詞が使われた「LINE歌詞ドッキリ」とは何だったのか、なぜ流行したのか。またericaさんが今10代女子から受け入れられる理由に迫ります。

「LINE歌詞ドッキリ」とは、直球で思いを伝えながらも逃げ道がある告白手段!?

阿佐見:女子中高生の間で「LINE歌詞ドッキリ」が流行ってると聞いたのだけど、みんな知ってる?

女子高生A:あ~!なんかやってたよね。知ってます。

女子高生B・C:知ってます。

阿佐見:「LINE歌詞ドッキリ」ってどうやるんですか?

女子高生A:好きな人や彼氏に、いきなり歌詞を1行ずつLINEでどんどん送るんです。相手は、歌詞だってことも何も知らないので「えっ?」って驚くドッキリです。

阿佐見:なるほど、歌詞を使って相手に思いを告白するドッキリってことなのね。

女子高生A:照れて途中でやめたりしたらダメで、最後まで送り切るんです。

女子高生C:勢いが大事だよね。

阿佐見:その時に使われる歌詞は、このericaさんの『あなたへ贈る歌(※)なんだよね。

※『あなたへ贈る歌』:2013年1月にデジタルシングルとしてリリース。2014年5月に発売されたアルバム『告うた~あなたへ贈る歌~』に収録されている。レコチョクデイリー10位を記録。「LINE歌詞ドッキリ」に使われるのは、「突然ごめんね」から始まる15行の歌詞の部分。

 

女子高生A:この歌詞を使う人が多いです。

阿佐見:友達には送らないの?好きな人や彼氏にだけ?

女子高生C:友達に送るのはまずくないですか?(笑)

女子高生B:結構がっつり告白しているからね。

erica:片思いしている人が「LINE歌詞ドッキリ」で告白しているのも多いんだけど、私がTwitterなどで見たのは、付き合っている2人が愛を確かめ合う形で送っているもの。改めて気持ちを歌詞で伝えることで、愛が深まっているのをTwitterでたくさん見ましたね。

阿佐見:女子高生のみんなの周りでは、どういう感じですか?

女子高生A:この間、片思いの子が好きな人に歌詞を最後まで送って、上手くいったのを見ました。

erica:リアルに告白して?

女子高生A:リアルに歌詞ドッキリで歌詞を送っていって、「実は俺も好きだった」みたいな。すごかったです!

阿佐見:それはすごい! ericaさんの歌詞のパワーですね。

erica:こんなふうに、歌詞が実際のコミュニケーションの手段として使われることは想定外だったので、びっくりというかうれしいですね。大人になるとなかなか素直な言葉で伝えられなくなるけど、みんなにはちゃんと言葉で伝えてほしいなという思いをこめて、『あなたに贈る歌』は、わざと歌詞を分かりやすくしているんです。

阿佐見:直球でストレートな告白の言葉なのが、良いのかもしれないですね。歌詞だから、自分の言葉で告白するよりは気が楽ですよね。

nao:実際に女子高生から、歌詞を使った告白なら失敗しても「これは歌詞だから」と逃げ道になるという話も聞きます。

阿佐見:ちなみにこの『あなたへ贈る歌』は、もともとはどういう曲をつくろうと思ってできたんですか?

erica:『恋、告げる』(※)という恋愛ソングをリリースしてから、ブログや手紙などでたくさんの恋の悩みをいただくようになったんです。それまではブログでお返事返しをしていたのですが、ふと「自分はシンガー・ソングライターで曲も歌詞もつくれるんだから、曲をつくってあげたい」と思ったのがきっかけです。

この曲は、「ずっと告白できなくて悩んでいる」という手紙をくれた子のためにつくったもので、その子のためだけにつくったので、リリースすることになるとは思っていませんでした。

つくってから「YouTubeにアップしたから聴いといて!」ってお返事返ししたら、後日「この曲で好きな人に告白して成功しました」という手紙が来たんです。それが口コミで広がって、YouTubeでいろんな人に聴いてもらって、去年CDになってからは「LINE歌詞ドッキリ」でも使ってもらえるようになった。実はもう4年くらいまえにつくった曲なんです。

※『恋、告げる』:2010年3月にデジタルシングルとしてリリース。アルバム『告うた~あなたへ贈る歌~』にも収録されている。TBS系「恋んトス」挿入歌

 

阿佐見:曲がどんどん独り歩きしていったのですね。YouTubeの再生回数は、590万回を超えていますよね。(2015年4月22日現在)

女子高生B:えーすごい!

ericaが女子中高生に受ける理由とは

阿佐見:ericaさんは「LINE歌詞ドッキリ」が話題になる前から、もともと女子中高生を中心に人気がありますよね。

erica:今私は29歳で、等身大で歌っているつもりだけど、曲が響くのは中高生が多い。中高生からの恋のお悩み相談をされることが多かったんですよね。「好きな人が友達とかぶっちゃった」とか「先生を好きになっちゃった」とか、誰にも言えなくて私に相談してくれる子が多くて。私自身がみんなと同じような恋愛をしてきたから、その子と同じ気持ちで歌詞をつくるんです。

阿佐見:中高生の時の感覚を忘れずにいられるのは、なぜなんですか?

erica:それはプロデューサーのnaoさんに原因がありますね。20歳の頃にオーディションに合格したんだけど、25歳まで恋愛禁止だったんです。

私、真面目だし(笑)、田舎から出てきたばかりだったので、とにかく言われたことを忠実に守ってきた。5年間彼氏ができないから、妄想ばかりよね。片思いはしても恋愛はできないから、告白できなくてうずうずしている高校生のような気持ちのままで、恋愛経験値がストップしているんでしょうね。

女子高生B:中高生の気持ちを分かってくれる方って、なかなかいないです。

erica:Twitterに歌詞をアップすると、いつも中高生が「わかる!」って言ってくれるから、私、心は中高生なのかな。それから手紙の量がすごいから、それを読んでいると、気持ちが痛いようにわかるんですよ。このアルバムの曲は、ほとんどが中高生からの手紙をもとにつくったものなんです。

「近くにいるのにしゃべれない」「おはようって言えない」とか。分かります?おはようとか言える権利ない、みたいな気持ち。

特に先輩だと教室とか違うから全然会えないじゃん?タイミング逃すと来週になっちゃって、何もできなくてもやもやとか、そういう手紙が多いですね。

阿佐見:リアルですね。だから伝わるし、共感されるんでしょうね。

女子高生B:erica さん、JOYSOUNDのイベントに出てましたよね?

女子高生A:歌姫女子会のやつ。見に行ってたんですよ。

erica:出てた!えー、じゃあもう会ってたんだ。

女子高生A:『あなたへ贈る歌』を聴いたのはそのときが初めてだったんです。スムージー飲みながら、歌に聞き入ってました。

erica:うれしい!

女子高生B:片思いしていた時の気持ちがパッと浮かんで、こういう時にこの歌を聴いたらマッチするなって思ってました。

阿佐見:聞き流さないで、ちゃんと届いて記憶に残っている。女の子たちの気持ちに響く歌なんですね。

イマドキ恋愛ソングの歌詞は、距離がすごく近い

阿佐見:naoさんはI WiSHで活動していた頃(2002年~2005年)と今で、女の子たちの恋愛の様子は変わってきていると思いますか?

nao:思いますね。女子は自立というか、しっかりしている子が多くなりましたね。男子はなよなよしてきたというよりは変わっていなくて、相対的に女性が強くなったような気がします。

阿佐見:naoさんはみんなも知っている『明日への扉』でデビューされましたが、その時と比べて、今の時代の恋愛ソングは何か違いますか?

nao:I WiSHの活動当時は、女の子がおとなしくて、寡黙で、ひたむきで、どっちかというと男子が「おいでよ」とリードする世界観の恋愛ソングが多かった。今は等身大というか、むしろ女性の発言力が強くなっていますね。

歌詞にも変化があって、「距離がすごく近い歌詞」が今っぽいと思う。ericaも、恋愛相談に乗ってくれている友達が歌ってくれているみたいな歌詞だし。

女子高生B:「距離」ですか?

nao:I WiSHのデビュー曲『明日への扉』もそうだけれど、当時は「恋愛とは」ではないですが、少し距離が遠いんですよね。歩幅の違う足で、ふたり寄り添いながら一歩ずつ歩いていくよ、みたいな世界観だったり。『カブトムシ』のように、好きという気持ちを婉曲的に「あたしはカブトムシ」と例えてぼかしてみたり。

女子高生B:『カブトムシ』ってaikoさんの曲ですよね、確かにそうですね。

nao:今は気持ちをダイレクトに伝えることに変わってますよね。「好きで好きで仕方ありません」とか「あなたに恋をしてみました」とか、「好き」や「恋」といった言葉を歌詞に入れてある。

路上ライブを経て、ericaらしさが開花

阿佐見:ところでnaoさんは、ericaさんにお会いした時から女子中高生に受け入れられるアーティストだと思っていたんですか?

nao:いや、特に中高生は意識していませんでしたね。

erica:オーディションのときは私、失敗しちゃったんですよね。緊張して頭が真っ白になって歌詞を忘れて、「ラララ」で歌って乗り切った。

nao:上手いとか下手とかは関係ないんですよね。オーディションで見ているのは「声」が全てなんです。最初は「声がいいな」というところから入りました。

そして自分を見つめる修業として路上ライブをやらせてみたり。「僕が書いた曲を自分なりに解釈して歌ってね」「作曲も見よう見まねでやってみな」って。

女子高生C:デビューさえ決まれば、プロデューサーが引き出してくれるものだと思っていましたが、自分でつくっていかないといけないんですね。

nao:アイドルは作詞家・作曲家の人のつくった世界観にいかに自分を投影できるかなんですけど、シンガー・ソングライターは自分で発信していくんです。

阿佐見:ericaさんらしさが開花するまでの過程は、どんな感じだったんですか。きっかけはあったんですか。

nao:最初は本人に自信がなかったんですよね。厳しかったと思うけど、本人が歌手としての自分をつくれたときに、根本的な自信を持てたのかなと思います。そこからですよね。4年くらいかかったかな。

erica:オーディションに合格するのもすごい倍率だったので、最初は事務所が色々やってくれると思っていて、「いつデビューなんだろう」と“待ち”の状態でした。でも、どんどん若い子が出てくるし、自分は求められていることに追い付けないし。結構めげていたんです。

路上ライブが、めちゃめちゃつらかったですね。歌っても最初は人が集まらなくて。でも42日間の路上ライブで、自分の手で1000枚のCDを売り切った時に、初めて事務所やレコード会社が動いてくれて、自分が動かないと周りは動かないんだなと気づいて。

その時に「やっと自分は変われるかも」と思って、新しい自分に生まれ変わるつもりで髪の毛もバッサリ切って、今までのもやもやを全部恋愛の歌に託して、『恋、告げる』という告白ソングをつくったんです。そしたら手紙をたくさんいただくようになって。

この曲をきっかけに、みんなが伝えられない気持ちを代弁したいなと思って、いろんな悩みや今まで自分が言えなかった気持ちを告白する「告うた」に絞ってつくっていきましたね。

nao:もともとの人懐っこさと、偉ぶらずに寄り添うような性格が“等身大”ということにつながって、本人のキャラクターも含めての結果、女子中高生の恋愛の気持ちにだんだんリンクしていったんでしょうね。

阿佐見:その人らしさを判断するのは自分ではなく周囲だともいいますもんね。路上ライブなどを経てericaさんらしさが開花した結果、響いたのが女子中高生だったんですね。「告うた」という言葉もキャッチーで、女子中高生っぽいですよね。

nao:告白のこと、「告った」って言うじゃないですか。歌だし、「告うたでいいんじゃない?」って自然に。

erica:最初はなんとなく売れたいとか、歌が好きとか、芸能界への憧れとかそういう感じだったけれど。昼は仕事をして、夜は終電まで路上ライブして、朝まで歌詞を書いて、というのを毎日繰り返す中で、自分が何で歌をやりたいのか、どういうことがしたいのかが、やっと分かったんです。そこから変わりました。

nao:最終的に作品に対しての自信とか、発言とか、そこがないと人に伝わらないよね。

女子高生B:深~い!

本質的な魅力をつくるのは、ブレない自分らしさと作品への自信

nao:僕がI WiSHをやっていた頃はYouTubeもなかったし、ちょうど着メロから着うたになった時期で、伝えるメディアは圧倒的にテレビ、ラジオ、雑誌、新聞に限られていた。

erica:今は、いろんな曲をYouTubeとかで聴くから、みんなの耳が肥えてますよね。売れてるから聴くんじゃなくて、自分が好きな曲をYouTubeなどで探して聴けるから、中高生の耳がみんな肥えてるんだなって思う。売れている曲に対しても、「全然ぴんとこない」っていう人もいるし。

nao:すぐ聴けるし、なんでもググれる時代だからこそ、より本質に戻ってくるのかな。なんでもある中で、「いいものってなに?」となると、ブレないことや、作品に対する自信だったりすると思う。

阿佐見:これも昔とは違いますか。

nao:昔は伝えるメディアが限られていたので、うまく情報を作っちゃうことができたんですよね。今はもうYouTubeもTwitterもあるし、スマホで拡散できるのも当たり前なので、つくり込んでもバレてしまう。

これから先、人の興味を引くのはより本質的なことになっていきます。発信力の強さやメッセージの分かりやすさ、歌への自信とか、そういったものが魅力になっていくと思います。

erica:『あなたへ贈る歌』もタイアップではなくて、ただYouTubeに上げただけ。それでも、みんなが聴いてくれたのは、この歌を単純に「いい」と思ってくれているからなのかなと思うとうれしいですね。

nao:あくまでSNSはツールでありインフラなので、本質の部分をより磨いていき、歌だけではない人間性とか総合力というところも強化していきたいですね。

erica:私も、「こういう歌が受ける」とかではなく、自分がちゃんと感じたことをいかに歌詞や曲にできるか、ということに挑戦していきたいです。いつでも嘘のない歌で、聴いてくれた子と親友になったような気持ちで、みんなと一緒に成長していけるといいな。

『あなたへ贈る歌』をきっかけに、「プロポーズしたい」「子どもに伝えられない」といった手紙もいただくようになったので、私も恋をして、結婚をして、いろんな告白を歌にしていきたいです。

(後編に続きます)

 
 
 

原宿可愛研(ロゴ)

 
原宿可愛研とは?
  2012年12月に「電通ギャルラボ」と、女の子の夢を応援するマイナビのサービス「マイナビティーンズ」が共同で立ち上げた、10代の女子中・高・大学生の“今”を専門に調査するチームです。活動の拠点は原宿ですが、調査対象は原宿だけではなく、全国の女の子たちのリアルな実態を研究しています。
 
<関連プロジェクト>
電通ギャルラボ
ギャルのマインドとパワフルな生き方を生かし、企業だけでなく日本社会の活性化までを目指す、電通の若手女性社員中心の社内横断プランニングチームです。
マイナビティーンズ
全国6万人の10代女子会員(主に中高生)が登録。「ドリームステーションJOL原宿」は「原宿に行ったら絶対寄る!」と言われるほどの定番の場所になっています。
 

プロフィール

  • Profile
    erica
    シンガー・ソングライター

    1985年生まれ。山梨県出身。
    2006年に上京。2006年に元I WiSH(アイウィッシュ)のキーボード、naoにその才能を見いだされ、naoのプロデュースにより歌手活動を開始。
    自主制作CD1,000枚を42日間の路上ライブで完売させた実力派アーティスト。
    告白や失恋、片思いなどについて歌った「告うた」の切ない歌詞が女子中高生を中心に共感を呼び、クチコミによって認知が広がる。YouTubeでの動画再生数が合計1,500万回を超えるなど、ソーシャルメディアによる口コミ型のアーティストとして注目されている。
    女子中高生から「告うたのカリスマガール」として人気を集めている。
    新曲「大嫌い」(https://www.youtube.com/watch?v=alMUu2hmhC8 )が6月3日(水)にリリース。
    http://auroraerica.jp/
    Twitter:https://twitter.com/erica1119_music
    Facebookページ:https://www.facebook.com/erica1119music

  • Profile 2
    nao
    作曲家・編曲家・音楽プロデューサー

    1980年生まれ。東京都出身。
    中学生の頃にシンセサイザーを購入し作曲を始める。成蹊大学在学中の2002年に、ボーカルのai(川嶋あい)とともに「I WiSH」としてデビュー。デビュー曲の「明日への扉」がフジテレビ系「あいのり」の主題歌に抜擢され、ミリオンセラーを達成するなど大ヒットを記録。2005年にI WiSHが解散した後は、川嶋あいのサウンドディレクターを担当しながら、多数のアーティストの楽曲提供や編曲を手がける。現在は女子中高生から「告うたのカリスマガール」として人気を集めるアーティスト「erica」のプロデュースを行っている。

  • Asami profile
    阿佐見 綾香
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 未来創造グループ

    原宿可愛研共同創立者。電通ギャルラボ研究員。若年女子研究を専門とする。
    ストラテジック・プランナーとして、企業や商品・サービスのマーケティングや商品開発、リサーチ、企画プランニング、コミュニケーション戦略立案などを担当。
    電通ダイバーシティ・ラボ研究員としても、マーケティングの最新トピックであるLGBTに取り組み、みんなが楽しく暮らせるダイバーシティ社会の形成を目指す。LGBTを中心として広がる消費に関する調査や、「レインボー消費」に関する研究を重ねる。ダイバーシティウェブマガジンcococolor編集部員兼ライター。
    「LOVEのカタチが変わると消費が変わる」が持論で、LOVEマーケティングを専門としている。

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