スポリューション #16

「ママだからできる運動神経が
どんどんよくなる子育ての本」が
売れた理由

  • 渡邉 快平
    株式会社電通 マーケティングソリューション局
スポーツコンテンツをメディア枠と捉えるだけではなく、ソリューションとしても捉えることで、新しいビジネスチャンスを生み出すことにトライしているソリューションユニット「SPOLUTION(スポリューション)」チーム。そのチームメンバーたちが、それぞれの視点から、これからのスポーツ関連のビジネスチャンスについて、リレーコラム形式でご紹介します。
スポリューション

昨年の7月1日に学研パブリッシングから出版された電通SPOLUTION協力の実用書「ママだからできる運動神経がどんどんよくなる子育ての本」が売れています。

book
「ママだからできる運動神経がどんどんよくなる子育ての本」の表紙

出版不況といわれているご時世の中、すでに第4版の増刷が行われ、一時はAmazonの子育てカテゴリで1位を獲得するほどの人気ぶり。各種メディアでも続々と取り上げられています。
この本の誕生の裏側について、本の企画者の一人であるストラテジック・プランナーの渡邉快平が、本の中身をご紹介しながらお伝えしていきます。

■本の内容をマーケットから考えてみる。

スポリューションの渡邉快平です。この記事にアクセスいただきどうもありがとうございます。
この本の企画に参加させていただくことになったきっかけは、スポリューションが開発に携わった学研の幼児体育事業「リトルアスリートクラブ(LAC)」のコンセプト “運動オンチは遺伝しない!” を学研の強みである「本」を使って世の中に発信していこう、と当時決まったからです。

普段マーケティングの仕事に取り組んでいる私がこの時に最初に考えたのは、本の開発にもマーケティング的な発想が使えるのではないか、ということでした。当たり前といえば当たり前かもしれませんが、本というと、どちらかというと著者の主張や意見を世の中に発信するという、いわゆるプロダクトアウト的な視点で作られるものが多いように感じていて、これをマーケットの方から考えてみてはどうかと思いました。

logo
kids

■実際に本が売られている現場を見に行く。

まず子どもの運動の本にはどのようなものがあるのだろうと、実際に書店に行ったり、ネットで検索してみると、もうすでに世の中にはたくさん種類がありました。「運動神経が良くなる…」のような、ど競合のタイトルの本もすでに存在していました。

ただ実際に現場に見に行って読んだりして気づいたことがありました。従来の子どもの運動の本は書店でほとんど「スポーツ」の棚に置かれていて、運動・スポーツをやったことがあるようなお父さん向けに書かれているものが多い。また、本のトーン&マナーはどちらかというと保健体育の教科書や参考書に近く(子ども身体の図がリアルに正しく載っている、など)、内容は子どものためのトレーニングの紹介に寄っているものが

多かったのです。

■本のターゲットとポジショニングを明確にして、書店で置かれる「棚」を変える。

これらの気づきを得てチームのメンバーで考えたのは、既存の子どもの運動の本とは逆のターゲットとポジショニングを設定して本を作ろうということでした。運動のことがわかるお父さん向けの子どものトレーニングノウハウ本ではなく、どちらかというと運動が苦手なお母さんのための子育て・育児の本に。とにかくお母さんたちに手にとっていただける育児の本にすることが、選んでもらえるカギであると。

そして、お母さんたちの手にとってもらうために一番重要なことは、書店で「スポーツ」の棚ではなく、「育児」の棚にこの本が置かれることでした。本を置く棚を決めるのは誰かというと、それは書店の店員さんです。どこに置くかの判断は手にとった一瞬でされてしまいます。そこで私たちは、お母さんたちが気軽に手にとっていただける内容で、書店の店員さんが、スポーツの棚ではなく、育児の棚に置く本を作ることをゴールにしました。

■アウトプットまでをマーケティング戦略で一貫させる

スポーツの英才教育でもなく、速く走るためのノウハウ本でもなく、ママだからできる、子どもが運動好きになってくれるための子育てのコツを教えてくれる一冊。このコンセプトにもとづいて、本のタイトルから内容・構成、トーン&マナー、デザインまですべてを一貫させて作っていきました。

タイトルは、ママのための本であることを強調しました。内容も、子どものためのトレーニングの紹介ではなく、普段の子育てやお手伝いの中で気軽に実践できる運動を紹介するものにしました。そしてその中で「子どもの運動神経はお母さんが育ててあげることができる」という学研のリトルアスリートクラブの主張を入れていきました。

協力 オフィスhana イラスト 齊藤恵(ラッシュ)

文章に合わせて入れる絵も、リアルな運動時の身体の図ではなく、イラストレーターの齊藤恵さんにご協力いただき、かわいいイラストや漫画を多く使いました。

illustration3
協力 オフィスhana イラスト 齊藤恵(ラッシュ)

こうしてできあがったのが、「ママだからできる運動神経がどんどんよくなる子育ての本」です。
この本は、リトルアスリートクラブのスタッフであるプロトレーナーの遠山健太さんと現役の子どもの運動指導者の古山慶太さん、スポーツドクターの大内洋先生とタッグを組んで作らせていただいた本ですので、もちろん内容も確かなものですよ。

profiles

■子どもの運動はお母さんたちにとっては距離の遠いものだった!?

販売にあたり、大々的なPRやプロモーションは一切やらなかったのですが、お母さんたちが自然と手に取ってくださり、それが口コミになり、メディアで取り上げてもらい、それがまた世の中に広がり、また別のメディアで紹介してもらい、それがお母さんたちの目にとまり、という好循環が起きてくれました。

この本が世の中に広がっていく中で改めて感じたのは、子どもの運動はお母さんたちからは遠く離れたところにあったのではないかということです。普段の子育ての場面で子どもに接する時間が長いのはお父さんよりもお母さんであるケースが多いのに。運動は子どもの成長において、とても重要なファクターであるのに。多くのお母さんたちが、子どもに運動ができるようになってもらいたいと思っているのに。子どもの運動は自分ではどうしていいかわからないというお母さんたちが多いのではないでしょうか。

今、子どもたちの体力低下、運動不足が深刻な社会問題になっています。

graphs

従来は高齢者の間に見られたロコモティブシンドローム(運動器症候群)のリスクを抱える子どもたちの数も増えています。また、いわゆる“運動オンチ”は遺伝すると勘違いされ、「うちの子もどうせ…」と子どもに運動をさせない、運動のさせ方がわからない、というお母さんたちもたくさんいらっしゃいます。

この「ママだからできる運動神経がどんどんよくなる子育ての本」が運動・スポーツが好きな子どもたちを増やすことに、少しでも貢献してくれたらうれしいと思っています。


★「スポリューション」チームとは?

スポーツコンテンツを、「メディア物件」として捉えるだけではなく、事業課題や、プロジェクト課題を解決するための「ソリューション」として捉え、企画する電通社内ユニットです。
チーム内には、スポーツプランニングの実績が豊富な、戦略プランナー、プロモーションプランナー、コピーライター、アートディレクター、テクノロジスト、コンサルタント、プロデューサーなど、多種多様な人材をそろえており、ソリューションディレクター制によって、「表現のアイデア」だけでなく、「解決策のアイデア」を、ワンストップでご提供いたします。

プロフィール

  • 渡邉 快平
    株式会社電通 マーケティングソリューション局

    2009年電通入社。統合マーケティング・プランナー/戦略コンサルタント。
    新事業・新サービス開発、事業戦略構築、ブランド戦略開発などの事業課題から、BIプランニング、キャンペーンやスポーツコンテンツのプランニングなどのマーケティング課題まで、ビジネスの様々な階層を超えた課題解決に取り組む。
    早稲田大学野球部出身(主務)。2008年東京六大学野球秋季リーグ戦優勝。

バックナンバー

関連記事

続きを見る
ページ先頭へ