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スポリューションNo.15

スポーツビジネスの成功体験を
共有する場「スポジウム」が見据える
東京オリンピックの先とは

2015/07/29

スポーツコンテンツをメディア枠と捉えるだけではなく、ソリューションとしても捉えることで、新しいビジネスチャンスを生み出すことにトライしているソリューションユニット「SPOLUTION(スポリューション)」チーム。そのチームメンバーたちが、それぞれの視点から、これからのスポーツ関連のビジネスチャンスについて、リレーコラム形式でご紹介します。

スポリューション

「スポリューション」チームの野口嘉一と申します。
今回のコラムでは、「スポリューション」チームの仲間であるリムレット社が運営するスポーツメディア「SPOZIUM(スポジウム)」の編集長、森田鉄兵さんをお迎えします。

実は森田さんは、最近まで電通の社員で、「スポリューション」チームの一員でした。しかし、2020年に向けて、そしてその先のスポーツビジネスに大きな可能性を見いだし電通を飛び出て、新天地で仕事をしています。

これまでになかったスポーツメディアを立ち上げた背景や意気込み、スポーツビジネス業界の課題やチャンスについて話を伺いたいと思います。

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左から、森田 鉄兵氏、野口 嘉一氏
 

野口:そもそも、「スポジウム」とはどういうメディアなんでしょうか。

森田:スポーツでビジネスを促進させる全てのステークホルダーに向けた専門メディアです。本サイトでは、スポーツ産業を拡げるための活動(=アクティベーション)を取り上げています。これらのアクティベーションのナレッジや成功体験をもとにさらなるアイディアが創発されていくことで、スポジウムをスポーツ産業の発展について考えるシンポジウムの場にしていきたいと考えています。

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野口:だから、「スポジウム」という名前なんですね。ところで、今はオリンピックを控えてスポーツバブルのような雰囲気があるのですが、具体的にどんな可能性があるのかと問われると、ぼんやりしている人も多い。森田さんは「スポーツの可能性」をどう感じていますか。

森田:電通時代にスポーツ産業に携わっていた中で、大きくするための「3つの軸」に気づきました。ひとつはチームやリーグ、選手といった「コンテンツホルダー」、そして、彼らを支える「スポンサー」、最後に、行政や放送局などの「そのほかのステークホルダー」です。

野口:なるほど。では、コンテンツホルダーが持つ可能性から伺ってもいいですか。

森田:既に様々なビジネス誌でも取り上げられていますが、野球界は大きく変わってきていますね。特にパ・リーグは、無料のテレビ地上波で目にする機会が減少していることもあり、早い段階から「パ・リーグTV」のようなネット配信事業を立ち上げるなど、デジタル戦略にも積極的です。

 

リーグ全体でファンを増やすためにいろいろな活動をしており、コンテンツホルダー自身が変わっていこうとする意志を感じます。

あと、スポジウムでも先日取り上げさせていただいたJリーグ。「アジア各国と共に成長していこう」ということで、Jリーグで培ってきたノウハウをアジア各国に提供するなど、アジア戦略を拡充させる取り組みを始めています。

野口:ひとつは、インターネット配信に絡めてよりデータリッチにしていくとか、映像をもっと詳細に解析するとか、デジタル的な部分の厚みを増す。もうひとつは、Jリーグのアジア戦略のように、グローバルな広がりを考えていくといった変化なんですね。それでは、「スポンサー」である企業は、スポーツにどのような可能性を見いだしているのでしょうか。

森田:僕の知っている範囲で言うと、今までは「企業の看板や社名が入ったユニホーム・ゼッケンがどれくらい露出するか」といったことが重視されてきたかと思います。もちろん引き続き、企業名・ブランド名の露出ということが重要な企業もたくさんいらっしゃいますが、コミュニケーションのあり方が大きく変わった今、必ずしも企業名の露出だけを考えていればよいわけではないというクライアントさんも増えています。

その中でブランド価値の向上や商品の売り上げアップ、また広告領域以外でも、社員のモチベーションアップやIR対策など企業が抱える課題にもスポーツが使えると気づき始めています。この流れは、今後、大きなうねりになるのではないでしょうか。

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野口:最近では大手生命保険会社がJリーグのスポンサーに名乗りを上げて話題になりました。お客さんのコミュニティーをスポーツで温めていきたいといった意識が感じられます。

例えば、生命保険会社がなぜJリーグのタイトルパートナーになったかといえば、外交員とお客さんが一緒に試合で盛り上がれるから、という声もお聞きしました。セキュリティーが厳しくなった今、外交員は以前のように会社に入って営業することが難しくなりました。これまでにない新しいつながりをつくらなくてはいけないと考えたときに、スポーツはうってつけだったんですね。

Jリーグのような観戦型スポーツだけではなく、マラソン大会のようなDOスポーツイベントに参加する企業も多いと聞いています。大きく言えば、スポーツが培うコミュニティーが、企業のマーケティングにとって大事なことになってきています。

森田:どうコミュニティーを動かして自社のビジネスに繋げるか、という視点も含め、海外ではマーケティング全体の視点からスポーツの活用、つまりアクティベーションについて考えている企業が多いように感じます。そういった彼らのナレッジをどんどん輸入できればいいですね。

特に、来年オリンピックを迎えるブラジルでどのようなアクティベーションが行われるのかは、一つのベンチマークなるのではないでしょうか。今後、東京オリンピックに向けて、企業がどのようにスポーツと向き合っていくのかのヒントになると思います。

野口:それでは3つめの軸、「ステークホルダー」、なかでも、特にメディアにおけるスポーツの可能性について聞かせてください。

森田:日本では、やはり放送局、新聞社といったマスメディアが重要な存在だと思っています。ネット環境の発達、スマートフォンの普及などにより、放送ビジネスのあり方が変わろうとしていますよね。女子高生はスマホを1日で7時間見るといわれていますし、社会人も通勤時間や仕事の合間にはスマートフォンで動画を見ている人だらけです。そんな環境でいかにスポーツと生活者の接地面を増やすかを考えるのは、すごく大事なこと。放送局の皆さんもその重要性に気づきだされている気がします。

例えば、朝日新聞さん、朝日放送さんと一緒に、リムレットが戦略立案、および、開発をお手伝いさせていただいている「バーチャル高校野球」では、試合映像をインターネットでも同時中継しています。ピッチャーカメラ、バッターカメラ、球場全体カメラの3カメラでのアングルを自由に選べるマルチアングル機能の他に、ユーザー個人が自分の好きなシーンを切り出し、SNS上にアップできる「ハイライトジェネレーター」というインターネットならではのサービスが提供されています。普段はスポーツにまったく興味のない人でも、友人がお勧めするこのシーンは見てみようか、というアクションが生まれて、新しいファンの獲得にもつながるでのは、と思っています。

 

野口:これは結構大きなことだと思うんです。FacebookなどのSNSは基本的にコメントベースですが、ユーザーは動画のハイライトを見たい。そのハイライトがニュースになってSNSで拡散するのは新しい現象です。すごくメディア的な可能性がありますよ。同じようなことをNBAやMLBもやっているんですよね。

森田:やっていますね。更に凄いのはデータとの親和性。MLBの「スタットキャスト」は、ボールの軌跡を画面に表示したり、投手の球速だけでなく外野守備の野手の球速や走るスピード、盗塁での離塁距離やトップスピードなどを数値化して画面に表示するなど、データをビジュアル化しているんです。

日本では、Jリーグも「LIVEトラッキング」データシステムで、選手の運動状況をデータにして、誰が何キロ走ったかなどをすぐにわかるようにしています。今まで見たことのないような映像体験やデータとの連携をすることで、いかにエンタメ要素を取り込みながら面白く見せていくか、という努力も、新しいファンの獲得につながると考えています。

これら、スポーツとネットを融合させるのは、「スポリューション」が考える「オーグメンテッド・スポーツ」にも近いですよね。

野口:「オーグメンテッド・スポーツ」は、スポリューションチームの堀田が考えた言葉なんですが、日本語で言えば「拡張スポーツ」といったところですね。

「観戦スポーツ」と「DOスポーツ」を、それぞれ「映像系」と「データ系」で拡張できるので、マトリックス的には4つの方向があるんですが、「スポリューションチーム」では、こららに「エンターテインメント」を組み合わせていきたいと考えています。

例えば、観戦スポーツの「映像系拡張」は、バーチャルリアリティーやホログラフィーでの観戦が考えられる。また、マトリックスの映像みたいに、選手のスライディングを360度、どの視点からも見られたら面白い。

観戦スポーツの「データ系拡張」では、高校野球を視聴するときに、打率だけでなく趣味などのメンバー情報まで画面に表示されるとか。かなりローカルなネタまで見られれば、感情移入して楽しめるようになるでしょう。

他にも、ウエアラブルデバイスを使って取得した選手たちの動きを数字や軌跡で表示する技術も興味深い。エンターテインメントとしての可能性だけでなく、情報が蓄積されれば選手のトレーニングなどにも有効活用ができます。

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DOスポーツの「映像系拡張」では、重量挙げをやっている映像上で力が加わっている個所がわかるアプリを作りました。バーベルが持ち上がった時には「ドカーン」というアニメーションが入るといった、非常にくだらないもの(笑)。でもこれは、今まで見えなかった、競技中の選手の力が可視化されるということ。力を入れている箇所や上がった瞬間がわかれば、一緒に盛り上がれる。

DOスポーツの「データ系拡張」は、ウエラブルデバイスを使って心拍数をとったり、走行距離を測ったりすることが考えられます。うまく活用すれば街ぐるみの健康増進につながるので、地方創生などのビジネスチャンスが生まれるのではないでしょうか。

森田:オーグメンテッド・スポーツは、すごく面白いと思います。コンテンツホルダーを上手く巻き込んでいけると、その拡大のスピードはアップするかと思います。

野口:コンテンツホルダーにとってのメリットは、スポーツの見えなかった価値をテクノロジーで可視化できるようになったこと。アニメーションや映像、データによって、パワーやスピードのすごさが伝われば、マイナースポーツの面白さを引き出すことができ、人気競技としてブレークする可能性もあります。
じゃあ、最後に今後のスポーツに対する思いを一言。

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森田:2020年をきっかけに、日本のスポーツを見る環境、楽しむ環境をより良いものにしていきたいです。日本のスポーツマーケットは、オリンピックまで自然に大きくなっていくと思います。ステークホルダーによって、いろんなスポーツへの関わり方がありますが、それぞれの満足度が高くないと、それ以降スポーツに興味をもってもらえないのでは、という懸念もあります。重要なのは、2020年以降、持続的に発展していける環境をつくること。そのための方法をそれぞれのステークホルダーが一緒になって考える場、議論しあう場として「スポジウム」を使っていただきたいです。野口さんはいかがですか。

野口:「オーグメンテッド・スポーツ」で、電通として新しいビジネスを見つけたいですね。これから日本が経済成長をしなかったとしても、スポーツで幸せを求めることは可能だと思います。
テクノロジーを使ってスポーツの新しい切り口が生まれ、ソーシャルメディア的な新しい広がりが生まれることで、幸せな国をつくる役に立つものがあると思っています。その過程で生まれる新しい何かにビジネスチャンスを見いだして、電通としてうまく流れを加速していきたいですね。


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★「スポリューション」チームとは?
スポーツコンテンツを、「メディア物件」として捉えるだけではなく、事業課題や、プロジェクト課題を解決するための「ソリューション」として捉え、企画する電通社内ユニットです。
チーム内には、スポーツプランニングの実績が豊富な、戦略プランナー、プロモーションプランナー、コピーライター、アートディレクター、テクノロジスト、コンサルタント、プロデューサーなど、多種多様な人材を揃えており、ソリューションディレクター制によって、「表現のアイデア」だけでなく、「解決策のアイデア」を、ワンストップでご提供いたします。