新明解「戦略PR」 #27

「PR、使い倒せていますか?」の巻/その1:記者発表会を使い倒してみた

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    井口 理
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長 チーフPRプランナー

はい。今回から数回にわたり「使い倒してみた!」シリーズの開幕です。戦略PRなど少しばかりめんどくさいところから離れて、日常的なPR手法でもう少しだけ工夫してみたら成果上がるんじゃね? というハック術を披露してまいりたいと思います。題して、「そこのあなた、PR、使い倒せていますか?」です。初回はおなじみの記者発表会。こんなハックをプラスしてみてはいかがでしょうか?

MTVみたいに、楽屋裏を見てみたい!

MTVの人気企画に「バックステージ・パス」というのがありました。ええ、私これのファンでして。大ファンのアーティストの楽屋にファンがお邪魔し、いろんなお話を聞く、それもコンサート前だったり、コンサート直後だったり。もちろんステージ上での演奏がメーンではあるのですが、その前後でアーティストはどんなことを思い、どんなことをしているのか、気になりますよね。

そんなあなたに「バックステージ動画」の活用をお勧めしましょう。

CM発表会などではタレントさんが出演することも多く、そのバリューでテレビやスポーツ紙、はたまたウェブニュースでの露出を稼いでいきます。各メディアの芸能班はできることなら少しでも他の番組や紙面と異なる情報をゲットしたいわけで、われわれもそこに連動して協力してくれる番組に、ちょっとしたおまけを用意したりするわけです。

例えばタレントさんが本番前後で少しだけ時間があるなら、どこかの番組用に個別取材して映像を提供するなど。よく「スタジオの○○さ~ん、歌手の△△で~す!今日もヨロシコ!」などと個別のメッセージを見かけたりしますよね、あれです。しっかりこちらの意図を伝えるため、長めの尺で取材していただけるならそのメディアを優遇するというのは当たり前だと思います。もちろんそういう機会がなければベースは平等に取材機会を提供することを心がけています。

くまモン「Tarzan」販売&「くまモン4Uメソッド」公開記念イベントメイキング映像

 

そんなメディア向けの個別対応はもちろんですが、昨今のSNSなどでの話題の拡散を考えた時に、発表会に連動して生活者に対するもっとダイレクトな情報提供があってもいいのではないかと考えました。それが「バックステージ動画」なんです。これはメディア視点の情報の切り取り方ではなく、もっと生活者目線で、しかしわれわれの発信したいこともきちんと盛り込んだ形で情報を整理し発信しようという取り組み。先に述べたようにタレントさんのステージ以外の言動・行動を別途に記録し、クライアントのウェブサイトや動画サイトなどで公開していくのです。

もちろんタレント事務所の許諾は必要ですが、きちんと目的に即した内容で作り込むので、もめ事にはなりません。むしろ事務所も、タレントの素の姿を見せることで好感度を高めた、などいい評価をしてくれます。オフィシャルな映像ではなく、そんな自然な映像が意外にネット上の共感を生むなんてことも。せっかくオフィシャルの記録カメラなどを入れているのであれば、そういう目線での記録&活用なんてのも、併せて考えてみたいですよね。これは動画だけでなく、写真でも使えると思います。

ブロガー活用も進化している

ブロガーに記者発表会に来てもらって、その感想をブログに書いてもらうという取り組みも、今では当たり前になってきました。しかし昨今は職業ブロガーも多く、拡散力は強大ですが、いわゆるPR記事として書くみたいな仕事も増えてきているようです。もちろん「PR記事」という表記の下に体験談やレビューを正直に書いてもらうということなんでしょうが、やはり普通のメディアと同じような活用方法になってしまうと、なんか違うんじゃないかなぁ、なんて思ったり。ブロガーさんの記事っていうのはポジ・ネガ含めてその正直さ、率直さが価値なんだと思うんです。そこで違う活用方法として思いついたのが「ブロガー体験発表会」です。

はいはい、そこの人。「そんなの、相当昔からやってんだろ!」ってツッコミ、ごもっともです。でもね、これはちょっとだけ違うの。活用の意味合いがね。

そう、記者発表会にブロガーも一緒に呼んじゃおうよ! みたいな取り組みが試されていたのは7~8年前。当時は「素人の記者もどきなんか正式メディアの発表会に同席させてんじゃねー(怒)」なんてマスメディアの方々に怒られましたが、じゃ二部制にしたらどうよとか、運営の問題で解決しました。確かに、ブロガーを経済部向けの堅い発表会に呼んだら、それは間違ってると思いますよ。スクープ狙いの生き馬の目を抜く世界に一般の方を投入したらそりゃーね、私だって怖いのに、そんなところ、いられませんよね。

でも逆説で言えば、もっと生活者向けの情報で体験イベントを絡めたような場は、むしろ一般生活者の目線が生きるんじゃないかと思うわけです。単純にそれらのサービスや製品に興味のあるブロガーさんを招待していち早く試してもらう、そこから漏れ聞こえるリアルな感想を逆に既存マスメディアのニュースコンテンツにしてもらうわけです。だってテレビの報道見てたって、必ず生活者の声を拾うじゃないですか。そうそう、新橋のSL広場なんてそうでしょ? あれはニュースに対する民意を裏付けとして拾っているわけです。それを記者発表会の場でそのまま提供しちゃおうということ。

ブロガーさんだから、そこらへんの一般人より当該領域への知識が半端なく深いんで、「この製品のこの機能はね、今まで絶対ムリって思われてたんだけど…。へー、作っちゃったのか! すごいね!」など、いいコメントも飛び出してきます。まさにわれわれの言いたかったことをうまーく代弁してくれる存在となるわけですね。ブロガーを一般生活者の代表選手として記者発表会に同席させ、リアルなコメントをゲット、それをマスメディアのニュースコンテンツとしてもらう、「ニュースコンテンツとしてのブロガー活用」というスキーム、いかがですか?

要はコンテンツをいかに複層的に提供できるかということ

昔は「ワンコンテンツ、マルチユース」なんっていって、ひとつのコンテンツをいろんなメディアで使い倒しましょう! ということが言われていました。「使い倒し」という意味では、本シリーズの目的と同じですが、今はそんな時代でもないですよね。多種多様な関心・視点を持つ生活者は、ひとつの整理された属性に収めきることができなくなっていると思います。プロファイル的な属性ではくくれない、関心・視点くくりのバーチャルなターゲットグループを常に想定しなくてはなりません。想定というか、むしろそんなグループが居そうだよね、という想像・創造なのかも。そこに向けて多種多様な角度からコンテンツを作っていくことが必要な時代なのではないでしょうか。もちろん、ここには成功のためのセオリーはありません。ひたすらチャレンジです。その経験値により、バーチャルなターゲットグループを想像、想定しやすくなるのだと思います。

そしてそのチャレンジのためのコンテンツ創造に、前述のような取り組みが生きてくるのだと思います。すなわち、いかに効率的にマルチコンテンツを生み出すか、ということ。そりゃそうですよね、たくさんあればいいよねー、と湯水のごとく予算をつぎ込んでいたらそれは失格です。でもちょっとした工夫でコンテンツが2つにも3つにも拡張できるなら、トライしてみたいですよね。そしてもしかしたら、そのコンテンツが新しい情報ルートで思った以上の効果を発揮するなんてこともあるかもしれません。「あぁ、こういう情報ってこういうルートで評価されるんだ! 拡散もするんだ!」という発見があればそれもオモシロイかもしれません。

今、PRは大きな発展のタイミングを迎えています。新しいこと、どんどん一緒に試してみませんか? 次回以降もお楽しみに。

プロフィール

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    井口 理
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長 チーフPRプランナー

    1990年株式会社電通PRセンター(現株式会社電通パブリックリレーションズ)入社。コミュニケーションデザインを手がけるチーフPRプランナー。
     
    企業のコーポレートコミュニケーションから、製品・サービスの戦略PR、動画コンテンツを活用したバイラル施策や自治体広報まで、幅広く手掛ける。最近では、熊本県の赤い特産物をアピールするため仕掛けた「くまモンほっぺ紛失事件」のPRプランを手掛け、世界的なPR業界紙「Holmes Report」が主催するアワードで「世界のPRプロジェクト50選」に選出された他、多数の口コミを起こしたキャンペーンとして、世界的な口コミアワードである「WOMMY AWARD2014」を日本で初めて受賞。
    その他、受賞歴に、Asia Pacific PR Award、日本PR協会「PRアワード グランプリ」、国際PR協会「ゴールデンワールドアワーズ」、SABRE AWARDS ASIA PACIFIC、PR WEEK アワード・アジア、Asia Pacific SABREアワード、Spikes Asia 2014、Global SABRE アワードなど。
    実務のみならず、大学やトレードショー、PR協会での講義による若手育成にも従事。「Cannes Lions 2012」「Spikes Asia 2012」PR部門、「SABRE AWARDS ASIA PACIFIC 2014」「PRWeek Awards Asia 2015」「ヤングカンヌPR部門日本代表選考」審査員。「New York Festivals パブリック&メディア・リレーションズ部門」Grand Jury。2013年6月に「戦略PRの本質~実践のための5つの視点~」を上梓。

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