インサイトメモ #47

夢見る前に、何を見る? ~寝る前メディア行動の最新事情

  • Miwa
    美和 晃
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 部長

■「おやすみ」前に何見てる?

電通総研メディアイノベーション研究部では、メディアや情報通信環境の変化とそれに伴うオーディエンス(視聴者)の動向を探り続けています。昨年は、スマートフォンの普及期に出現した新しいメディア接触トレンド「通勤・通学時の動画視聴」を調査しました。スマホユーザーたちが電車やバスの車内で見ている映像ジャンルや視聴頻度、時間の長さを通じ、通勤・通学時についつい気になる“おとなりさん”のスマホ利用の実態を垣間見ることができました。(参考記事:通勤・通学時における動画視聴 ~電車やバスの中で、何を視聴しているのか?~

今回は、これに続く第2弾として「寝る前、ふとんに入ってから」のメディア接触について調査しました。スマホやタブレット端末の普及が日常の通勤・通学風景を大きく変えたのと同じくらい、「ベッドサイド」(枕元)でのメディア接触シーンも変えているのではないかと考えたのです。

特に、今回は「映像」の視聴習慣に着目しました。テレビ番組とネット動画とを「映像」として扱い、事前調査として、全国の15歳から49歳までの男女1万人から「就寝前にふとんに入ってからテレビやネット機器で映像を視聴する習慣」の有無について回答を得ました。さらに視聴習慣があると答えた人から1000人を選び、視聴ジャンルや視聴方法について横断的に調査しました。

想像してみてください。あなたにとって気になる“あの人”が、眠る直前にいったい何の映像を見ているのか、ちょっと興味がわきませんか?

■「寝る前」はメディア接触のゴールデンタイム

まず、就寝前にふとんに入ってから、どれだけの人がテレビやネット機器で映像を視聴する習慣があるのでしょうか。結果、15歳から49歳までの個人全体のおよそ3人に1人に当たる32.7%が習慣的に映像を視聴しており、特に、10代では男女とも約半数(男性49.6%、女性50.0%)に映像視聴習慣があることが分かりました(図表1)。

図表1 就寝前にふとんに入ってからテレビやネット機器で習慣的に映像を視聴する人の割合
 
図表2 就寝前にふとんに入ってからの各メディアへの習慣的接触

図表2は、映像に限らず日ごろ寝る前にふとんの中で接触しているメディアや機器について、複数回答形式で質問した結果です。一番左側にある調査対象の個人全体の積み上げ棒グラフを見ると、合計が150%を超えていることが分かります。これは、ふとんに入ってから寝るまでの間に、個人平均で1.5件を超えるメディアや機器に対して日常的に接触していることを意味します。

個人全体について、メディア接触の内訳をみると、45.6%の人が「スマートフォンの利用」を挙げて最も多く、次いで「テレビで、放送中の番組を視聴」(19.6%)「テレビで、録画した番組を再生視聴」(13.0%)「本・書籍を読む」(12.6%)が順に多くなっています。やはり、スマホとテレビが寝る前の2大接触メディアとして位置づけられます。

同じ図表2を男女別・年齢別に見てみましょう。男女とも、若い年齢層ほど、ほとんどのメディア行動に対して積極的であることが分かります。内訳を見ると「音楽鑑賞」は10代で男性23.1%、女性26.0%と、20代以上を大きく引き離しています。

若年層の「本離れ」が言われていますが、ふとんの中に限ると実は「コミック」ばかりでなくコミック以外の「本・書籍」についても若年層の方が習慣的に接触していると回答する人が多い、という結果になっています。

■若者ほど多彩な方法で寝る前動画を楽しんでいる

テレビ番組やネット動画などの「映像」について、視聴方法に注目したのが図表3です。

テレビ番組の視聴方法については、放送中の番組の視聴、録画した番組の再生視聴のほか、スマートフォン・タブレット端末などネット機器でテレビ放送を受信したり、番組をこれらの端末に転送したりしての視聴などがあります。また、DVD・ブルーレイディスクなどの再生視聴ももちろん映像視聴方法の一つです。

ネットで視聴する動画については、動画配信サービスでの視聴、動画共有サイトでの視聴方法の2つを取り上げました。

図表3 就寝前ふとんに入ってからの映像視聴方法


さまざまな映像視聴方法全般について、若年層ほど習慣的に多く視聴していると回答していることが確認できます。特に、若年層の「テレビ離れ」と言われながらも、実はテレビ放送をリアルタイムで視聴したり録画して視聴したりする行動についても、「寝る前、ふとんに入ってから」という場面では10代・20代のほうが30代・40代よりも、より積極的な回答が見られます。

その中で、年齢階層によって視聴傾向に最も大きな違いが見られたのは「動画共有サイトでの視聴」です。男女とも10代では最も多くの人にとっての習慣的な映像視聴方法となっていることが分かります。子ども時代からネット、とりわけ動画サイトが存在する情報環境で育った若年層が近年スマートフォンやタブレット端末などのパーソナル機器を手にするようになり、映像視聴行動にも変化が生じているのかもしれません。

■テレビ番組に由来する映像ジャンルが人気?

それでは寝る前にはどんな映像ジャンルが視聴されているのでしょうか。寝る前に何らかの映像を習慣的に視聴する1000人を抽出した上で、46分野の映像ジャンルの中から視聴ジャンルについて複数回答方式で選択してもらいました。個人全体で上位20位までに挙げられた映像ジャンルを示したのが図表4です。

図表4 就寝前に視聴する映像ジャンル(個人全体)
 

上位の顔触れをみると、「バラエティー」「お笑い」「アニメ」「国内ドラマ」「報道/ニュース」など、テレビ番組のジャンルとして昔からよく知られたジャンル名が挙がっています。

逆に「ネット動画」を連想させるジャンル名としては13位「インターネット情報」、18位「衝撃映像/レア映像」、19位「ゲーム情報」、20位「○○してみた」といったところが挙げられるものの、上位10位の中に顔を見せることはありません。

この結果には、特に若年層で活発な動画共有サイト利用の勢いが反映されていないように見えます。これは一体どういうことでしょうか。

■アニメ・音楽などを中心に動画共有サイトがテレビでの視聴を上回ることも

個別の視聴ジャンル別に、どの視聴方法で視聴するかを尋ねてみました。その結果を次の図表5に示しています。「バラエティー」「お笑い」「国内ドラマ」などについては、テレビのリアルタイム視聴や録画再生視聴で見る人が多く、おおよそ予想通りといえるでしょう。また、「インターネット情報」「衝撃映像/レア映像」「ゲーム情報」「○○してみた」などについては動画共有サイトで視聴するという人が多くなっています。これも予想通りといえます。

ところが、「動画共有サイトで視聴」に注目してみると、視聴ジャンルで3位の「アニメ」については「動画共有サイトで視聴」が最も多く、テレビでの視聴を上回っています。同様に、「音楽(ポップ)」「ライブ」「音楽(ロック)」の3つについても「動画共有サイトでの視聴」がテレビでのリアルタイム視聴や録画再生視聴を上回っていることが分かります。

図表5 上位20映像ジャンルの視聴方法(個人全体)

このように、上位10位前後までの、以前からテレビで視聴されてきたいくつかの映像ジャンルでは、現在は「動画共有サイトで視聴」派が多くなっていることが分かりました。また、図表には示しませんが、この傾向は男女とも若年層ほど大きくなっています。それが、若い10代・20代における動画共有サイトの活発な利用につながっていると考えられるのです。

■ 映像ジャンルによって視聴方法を上手に使い分ける若年層

「寝る前ふとんに入ってから」という場面は、メディア接触行動が全般にわたり非常に活発に行われており、さまざまなメディアにとっての「現代版ゴールデンタイム」ともいえそうです。

映像視聴についても、テレビ番組とネット動画を問わず若い世代の間での視聴が盛んでした。動画共有サイトの利用が最も盛んな10代の場合でも、テレビとネット動画のどちらか一方のみ視聴という人は少数派であるようです。視聴する映像ジャンルに応じて、多数の視聴方法を上手に使い分けている姿が浮かび上がってきました。特にスマホをはじめとするネット機器の普及に伴い、一部の映像ジャンルではテレビ以外での視聴シーンも台頭しているようです。

2015年は、多数の新たな動画配信サービスが始まり脚光を浴びた年でした。今後、映像視聴のスタイルがどのような姿をとることになるのか、ますます目が離せません。


【「就寝直前の映像視聴実態調査」概要】
●スクリーニング調査(ウェブ調査)
対象者 全国の男女15~49歳
回収サンプル数 10,000
全国の男女比・年齢階層別人口比に応じて比例回収
本調査対象者抽出条件
「寝る前、ふとんに入ってから」の場面において日頃
から習慣的に映像(テレビ番組・ネット動画を問わず)を視聴している人
●本調査(ウェブ調査)
回収サンプル数 1,000
スクリーニング調査における本調査対象者抽出条件合致者の男女別年齢階層別出現率に応じて比例回収
実施日 2015年9月25日(金)~9月28日(月)
実査協力機関 電通マクロミルインサイト

プロフィール

  • Miwa
    美和 晃
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 部長

    入社以来、電通総研にて主に情報通信やデジタル機器・コンテンツ領域の調査研究や官・民のクライアント向け事業ビジョン構築作業とコンサルティングを実施。カメラ、ロボットから電子書籍まで幅広い分野を担当。2012年7月よりメディアイノベーション研究部にて情報メディア全般に関するプロジェクトに従事。2015年11月より現職。

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