アクティブラーニング こんなのどうだろう #03

5カ国の小学校の座席システム。
実は、全部違った。

  • 20160526 103
    Nadya Kirillova
    キリーロバ・ナージャ
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 電通総研 Bチームクリエーティブ

電通総研に立ち上がった「アクティブラーニング こんなのどうだろう研究所」。アクティブラーニングについて様々な角度から提案を行っていく予定です。このコラムでは、ラーニングのアクティブ化に活用できそうなメソッド、考え方、人物などを紹介していきます。

小学校の席。どういうレイアウトでしたか? みんなで黒板とその前に立つ先生に向かって座るのが一般的だと思っていた私は、8歳にしてその考えを裏切られることになる。イギリスの小学校で。

その後も、さらにいろんな国のいろんな座席システムに出合った。男女ペア席、一人席、5〜6人で一つのテーブルを囲む座り方、机を一つの円をつくるように並べてみんな向き合う座り方、複数の家具を教科ごとに使い分けるやり方…。それは、転校するたびにルールが変わるゲームのようで面白かった。


ロシアの小学校では男女がペアで一つの長めの机に座る。男子が左、女子が右。左利きがいる場合はペアで座る。席替えはあまりなく、10年同じ席、同じペアということも十分あり得る。男女ペア席の場合、子どもの授業における集中力がアップするようだ。なぜなら、小学生の男女は友達になることが少なく、そのため授業中の雑談が少なくなり、みんなまじめに先生の話を聞くようになる。

また、あえてやんちゃな男子を勉強がデキル女子の横に座らせるとこの効果はさらに向上する。責任感が強いデキル女子が勝手にやんちゃな男子の世話役になることが多く、男の子の学力上達の可能性が見込めるようだ。

みんな、黒板の前にいる先生に向かって座り、話を聞いて、聞かれたら挙手して答える。正解ならそれが個の優越感につながり、毎日が戦いだった。これが当たり前だと思っていた。


小学校3年生でイギリス・ケンブリッジの小学校に転校した日、教室にはまるでご飯を食べるようないくつかの大きめなテーブルだけが並んでいた。ほう、ここはきっとご飯を食べる部屋だ。ロシアでは朝食も学校で出るので朝一にそこへ通されたのも理解できる。

しかし、ご飯が出る気配はなく、5〜6人でテーブルを囲んだまま授業に突入した。そして、しばらくすると授業中なのにみんな楽しそうにしゃべり始めた。「え?しゃべっていいんだ?」。状況が飲み込めないままぼーっと座っている私に隣の女の子が話しかけてきた。

「今、この算数の問題をみんなで解いているところなんだけど、答えについて意見が割れてるの。あなたは、答えいくつになった?」。それから、みんなでチェックして一つの答えを選びテーブルごとに先生に発表していく。

このやり方は他の教科でも続いて、わたしを女の子が助けてくれたように、何か苦手な科目がある子がいると誰かが教えてくれる。なるほど、ここは個人戦ではないんだ。勝負の世界に生きてきた私にはとても新鮮だった。教科ごとに輝く子どもが必ずいた。「この教科は〇〇に聞こう!」というのが学びのスタンスだった。


次の転校先はフランス・パリの小学校だった。ここには、もう大きなテーブルの姿はなかった。しかし、みんなの机が円をつくるように並んでいた。授業が始まると子どもたちが向かい合って座り、先生は円の中に入って、必要になったら各子どもの所へ行く形式で授業が進んだ。

この座り方だと子どもが常にメーンになった。先生はみんなに問いかけを投げると、みんな激しく議論した。まるで小さい国連のようにそれぞれが自分のバックグラウンドから意見を述べた。ここで意見を述べないと居る意味がなくなるのでみんな必死で主張する。

「なるほど、こういう意見もあるのか」「なんで、そう思うんだろう」これが、お互いのことを知るキッカケにつながり、多くの場合は、家に帰って親にも意見を聞くことであらためて自分の世界における立ち位置を知る。

宗教、言語、主義、価値観、国民性などいろんなことが浮き彫りになっていく。先生はある種のファシリテーターであり正解/不正解を言うことは計算問題と文法以外にあまりなかった。そうか、正解がないこともたくさんあるんだ。私には、新鮮だった。


4年生になると、私は日本の東京にある小学校に転校した。ここは、ロシアに似た座席システムで、一人席だけど2つくっつけて座るから一応隣はいる。

この場合、 みんな前を向いて、基本、隣の人よりも先生との会話がメーンになる。ロシアと同じでこれも先生が生徒にとにかく教えて、生徒が考えて先生に答えを伝える方式の教え方になる。

ただ、違いは、みんなで多数決をよくするところにあった。ディベートに染まっていた私にはとても生温く感じた。すごくいい意見を持っている人がいてもそれが選ばれないことがあり、代わりにみんなで決めた当たり障りないものが選ばれたとしてもみんな満足そうにしていた。

ここでは、「いい」よりも「みんなが選んだ」が重要だった。これが、不満を生まない理由につながり、みんなポジティブに決めたことに取り組んでいた。そうか、みんなで決めるとその後のやる気に関係してくるのか。このやり方も確かに面白いと思った。


5年生のときアメリカ・ウィスコンシン州の小学校へ転校した。「おお、また円になって座るやり方か!」と思っていたら真ん中にじゅうたんがありその上にソファがいくつかあった。まるでリビングのようだ。そして、ちょっと離れた所に大きめのテーブルが一つ置いてある。

ここでは、目的に応じて座り方を変える方式。個人作業をするときとみんなで議論をするときは、円に並んだそれぞれの席へ。国語の授業で読み聞かせをするときは真ん中のソファでリラックスして聞くとよく頭に入る。ちょっとした決めごとや連絡事項もソファでやると一体感が生まれる。また、算数の授業では先ほどの大きめなテーブルが使われる。問題が解けたらそこへ行き、個別に先生に見てもらうのだ。そうすれば、能力に応じて問題を変えることができる。

座り方を変えながら学びへのスタンスを変えていく。先生は偉いというよりは、先生は遠い親戚のような感覚になる


特に理由がないように見える座席の在り方は、実は教え方の方針を示している。真剣に聞いてほしいのか、発言をしてほしいのか、みんなで意見をまとめてほしいのか。正解はない。

日本の子どもをフランス式の座席に座らせると発言するようになるのか。個人主義のロシアの子どもをイギリス方式に座らせるとチームワークをするようになるのかなどとても興味深い。

児童の性格や教えたいことに合わせて座り方をシフトさせれば、いろんなやり方があることを子どもたちにも教えることになり、将来につながっていくかもしれない。

世界の座席図鑑

 

 

プロフィール

  • 20160526 103
    Nadya Kirillova
    キリーロバ・ナージャ
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 電通総研 Bチームクリエーティブ

    ソ連(当時)、レニングラード生まれ。6カ国で育つ。電通入社後は、様々な領域に取り組むクリエーティブとして活動し、国内外のプロジェクトを幅広く担当。Cannes Lions Titanium Grand Prix、D&AD Black Pencil、文化庁メディア芸術祭大賞など多数受賞。

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