アクティブラーニング こんなのどうだろう #04

イギリスの学校では、
リンゴでお金を学ぶ。

  • 20160526 103
    Nadya Kirillova
    キリーロバ・ナージャ
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 電通総研 Bチームクリエーティブ

電通総研に立ち上がった「アクティブラーニング こんなのどうだろう研究所」。アクティブラーニングについてさまざまな角度から提案を行っていきます。このコラムでは、ラーニングのアクティブ化に活用できそうなメソッド、考え方、人物などを紹介していきます。

小学校3年生でイギリスの学校に転校して、「自分でお金を稼ぐ」という概念に出合うことになる。それは、朝とランチの時間の間にある長めの休み時間のことだった。

校庭で「リンゴ」が売られていて、多くの子どもたちがそれを買ってはおいしそうに食べていた。それを見た私もリンゴが食べたくなった。だが、よく考えたらお金を持っていない。そうか、イギリスの小学生は学校にお金を持ってきているのか。これは、ロシアには無いことだ。小学校低学年はお金を持っていないのが普通である。不思議に思い、何でお金を持っているのかと早速一緒にいた同級生に聞いてみた。すると、なんと「稼いだ」というのだ。

「え!?どういうこと?」とさらに聞くと、「皿洗いをして、親から給料としてもらったんだよ」と。「もちろんみんながそうではないかもしれないけど、うちはそうしてるの」と。そうか。これはかなりの衝撃だった。家でお皿を洗えばお金がもらえるんだ。

考えてみると身近なところでは、何かをしてその代わりに親からお金をもらうというシステムも発想も無かった。お皿洗いをするのは、「手伝い」であって「仕事」ではないという認識だった。そこにお金は発生しない。お使いはしたことはあったし、お金の存在や使い方なども理解していた。でも、 親に買ってもらうことはあっても、自分の好きなことに自分のお金を使うということはそのときまだ無かった。

でも、イギリスやアメリカの同級生たちは、家事を手伝ったり、下の兄弟の面倒を見る代わりに親からお金を稼ぐチャンスを与えられているではないか。イギリスの小学校ではリンゴ以外は売っていなかったし、リンゴもとても安い値段だったことから、これも教育法ではないかと勝手に思う。それを見て、子どもは「リンゴが食べたい!」と思うはずだ。

では、どうすればリンゴが食べられるかを考える。親からお小遣いをもらうやり方もあるし、リンゴ代をおねだりすることもできるし、弟や妹の面倒をみる、皿洗い、掃除、ゴミ捨て、料理などの家事をして稼ぐというのもある。他のやり方もあるはずだ。

また、皿洗い1回分をリンゴの値段にするかなど、もし稼ごうと思う場合にはどれくらいのお金をもらうかも考えないといけない。子どもは初めて自分が何かをする代わりに対価をもらうという体験ができるわけだ。

また、これをすることでこれくらいお金をもらえるということも学べる。食べたいと思ったリンゴはどれくらいの価値なのかも分かる。これは多くの子どもにとって初めてお金について考えるキッカケになる。

リンゴとお金の関係

日本には「お小遣い」という制度がある家庭が多いが、自分で稼ぐお金と与えられるお金の価値はきっと違うはずだ。そもそもお小遣い制度がないロシアの子どもは「お使い」をしてお金の価値を知るが、自分でお金の管理をすることになるのは人生のまだまだ先だ。

いつ、どのように、子どもに「お金」について教えるか、世界にはいろんなやり方がある。「お金」との出合い方が将来、子どもたちのビジネス世界との関わり方にどのような違いを与えるのかについて考えるのも、とても興味深いことだ。

 

プロフィール

  • 20160526 103
    Nadya Kirillova
    キリーロバ・ナージャ
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 電通総研 Bチームクリエーティブ

    ソ連(当時)、レニングラード生まれ。6カ国で育つ。電通入社後は、様々な領域に取り組むクリエーティブとして活動し、国内外のプロジェクトを幅広く担当。Cannes Lions Titanium Grand Prix、D&AD Black Pencil、文化庁メディア芸術祭大賞など多数受賞。

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