ろーかる・ぐるぐる #03

事例:尾花沢市の雪降り和牛 /後半

前回のつづき)

黒毛和牛の新しい地域ブランドは、この発見をベースに誕生しました。そこで定めた初期コンセプトが「食べて美味しい和牛」です。
「食べて美味しい」なんて食べものとして当然過ぎて、ふつうなら成立しないのですが、長年「見た目」を重視してきた和牛の現場にとっては新しい視点として機能したのです。
いままで畜産家の皆さんは高い格付け(A5)を目指して(それが商品を高く売る唯一の道だったので)とにかくサシ(脂)の多い見た目の良い肉をつくることに必死でした。それを思い切って、いったん止めようと。

食べて美味しい日本一の和牛を目指して畜産家の方々と議論をし、生まれたのが「雪降り和牛 尾花沢」です。

尾花沢市は日本三大豪雪地帯にも数えられる厳しい冬が特徴です。牛は一年の寒暖差が50度にもなる寒さから身を守るため自然な脂を身につけます。無理にビールを飲ませてつける脂質とは違って淡雪のような口どけが楽しめます。雪が育てる和牛という意味を込めたネーミングになりました。

その最大の特徴は32ヶ月に及ぶ長期肥育にあります。ふつう畜産家は牛が大きく育ったら出荷します。1kgいくらで売るのですから当然の判断です。しかし実は、これ以上個体が大きくならなくなってから数ヶ月で体内の旨味成分(オレイン酸)の含有量が飛躍的に増える、というデータがありました。畜産家にとってその間エサ代はかかるし、辛抱のしどころなのですが、それでも「食べて美味しい和牛」のためにやろう、ということになりました。

また目利きが評価する「未経産(メス)」のみが「雪降り和牛 尾花沢」を名乗れるようにしました。これもコンセプトからすれば、当然の判断でした。
尾花沢市の皆さんによるチャレンジは始まったばかりです。しかし雑誌編集者の嗅覚ってスゴイなと思いますが、いくつかの雑誌でも記事になっています。そして銀座三越の和牛専門店「片葉三」では、(仕入れにもよりますが)ほぼ一年中定番ブランドとして取り扱われています。

仲間を集めて家で飲む時はこの和牛が大活躍です。イチボのかたまり肉に強めの塩、胡椒をしてフライパンで焼き色を付け、あとは100度のオーブンでゆっくり熱を通せば「雪降りローストビーフ」の出来上がり。しっかり肉の旨味があって、しつこくなくて。上品で力強くて。簡単なのに派手だし、酒は進むし。

どうぞ、召し上がれ!

◆美味しいもの情報
47CLUB(よんななクラブ)の小島商店で「雪降り和牛 尾花沢」を購入することができます。
http://www.47club.jp/15M-000030rzf/goods/detail/10034120?intid=htl_rcnz_prd_right

プロフィール

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    山田 壮夫
    株式会社電通 第1CRプランニング局

    1969年生まれ。アイデアを核として広告キャンペーンはもちろん、店舗開発からテレビ番組の製作まで手掛ける。特に最近は全国の地方新聞社厳選お取り寄せサイト「47CLUB」と連携してローカルにおける商品開発作業にチャレンジしている。2009年カンヌ国際広告祭(メディア部門)審査員。慶應義塾大学(メディア・コミュニケーション)、明治学院大学(経営学)非常勤講師。著書に『〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考』(朝日新聞出版)。

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