ろーかる・ぐるぐる #75

アイデアを他人任せにしていないか?

小学校のとき、ぼくの学校ではげた箱か机の中に忍ばせるのが一般的な「チョコレートの渡し方」でした。あの頃はまだ自分の顔をまともに鏡で見たこともなかったからでしょう。山田少年は入っているはずのないチョコレートをさがして、ソワソワソワソワしていた覚えがあります。

それ以来、バレンタインデーが苦手です。最近も「え?義理チョコでも必ずお返しをするのが礼儀ですよ」なんて女性陣にしかられ、すっかり困惑しています。確かに何かした方がよいのは分かっているのですが、具体的に何をお返しすればよいのか、さっぱり分からないからです。

なんかすっかり、おじさんの愚痴になっちゃいましたが、ところで広島の丸徳海苔さんと一緒につくっている「ワルのりスナック」から期間限定商品が出ました。このチーム、完全にワルのりですかね(笑)。

義理のりスナック

おかげさまで最近「一緒に『常識を覆す』商品開発にチャレンジしましょう」というお誘いを受ける機会が増えてきました。ぼくは広告屋なので、それぞれの業界の難問に直接答えを出すことはできませんが、「その手があったか!」を生む考え方については慣れ親しんでいます。そんな方法論をご提供して、いろいろなメーカーさんと一緒になって七転八倒しているのです。そしてそんなときに気を付けているのが「アイデアを他人任せにしないこと」。

たとえば食品を商品開発する場合。プランナーが何となくこの辺かな、という「アイデア/コンセプト」を仮決めすると、すぐ著名な料理人の方に味決めをお任せすることがあります。彼らはプロフェッショナルなので「群馬の畑で元気に育った野菜をたっぷり使った『大地のドレッシング』をつくりたいんです」とか「放し飼いの鶏の卵でつくった『太陽のマヨネーズ』なんですけど」と依頼しても、それなりに美味しいレシピを開発してくれるでしょう。でも、もし具体策を丸投げしてしまったら、「その手があったか!」な商品なんてできるわけがありません。

 

ぐるぐる思考

この連載の背景となっている「ぐるぐる思考」では、「アイデア/コンセプト」を「目標に向けて課題を解決する新しい視点」と定義しています。そしてそれを開発するためには「散らかすモード」でターゲットと具体策の間を何度も行ったり来たりしなければならないと考えています。たとえば試作品を「つくりながら、考える」ラピッド・プロトタイピングのようなアプローチがとても有効なのです。

ところが、その具体策づくりを誰かに丸投げしてしまっては、つくりながら「なぜこれでよいのか?」「ダメなのか?」考えることができません。

率直なところ「大地のドレッシング」も「太陽のマヨネーズ」も「課題を解決する新しい視点」としては漠然とし過ぎています。この程度の言葉で「その手があったか!」な具体策ができたとしたら、それはプランナーでなく、具体策をつくった料理人さんの貢献です。他人任せなアイデアづくり、と言われても仕方がないでしょう。

もちろんその道の達人の手を借りること自体は否定しませんが「わたし考える人、あなた手を動かす人」という分業には限界があるのです。

「高校生と開発した煎餅」とか「大学生が考えた新ご当地グルメ」とか、世の中にはさまざまな取り組みがあります。その中には確かに「なるほどなぁ」という着眼点もありますが、いまひとつ詰め切れていないケースに共通するのは、この分業のわなにはまっていることなのかも知れません。

さて。次回は圧倒的な正義として語られることの多い「生活者視点での商品開発」について、少し考えてみようと思います。

どうぞ、召し上がれ!

 

プロフィール

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    山田 壮夫
    株式会社電通 第1CRプランニング局

    1969年生まれ。アイデアを核として広告キャンペーンはもちろん、店舗開発からテレビ番組の製作まで手掛ける。特に最近は全国の地方新聞社厳選お取り寄せサイト「47CLUB」と連携してローカルにおける商品開発作業にチャレンジしている。2009年カンヌ国際広告祭(メディア部門)審査員。慶應義塾大学(メディア・コミュニケーション)、明治学院大学(経営学)非常勤講師。著書に『〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考』(朝日新聞出版)。

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