デジタル活用で成果を出すには #16

ゼロから開発したnxdb。膨大なデータをビジュアル化するBIにも活用

ネクステッジ電通

ネクステッジ電通の強みの一つに、社内にシステム部門を抱えていることがあります。前編に続き、後編では、ネクステッジ電通で開発したnxdbについて掘り下げて話を聞きました。

※株式会社ネクステッジ電通は、2016年7月1日付で「株式会社電通デジタル」となりました。
(左から)ネクステッジ電通の廣瀬さんと泉さん
(左から)ネクステッジ電通の廣瀬一徳さんと泉正太さん。
nxdbの概念図

──前半で紹介いただいた自動化の仕組みを支える基盤であるnxdbについて教えてください。

泉:nxdbはデータベースサーバーで、運用型広告のためのクライアントのメディア配信実績データとアクセス解析データ、さらに社内の業務管理系のデータという2系統から成り立っています。

メディア配信実績データとアクセス解析データは、バッチサーバーを別に用意し、各配信プラットフォームが提供するAPIを通して、一元的にnxdbに蓄積していくような仕組みになっています。異なる配信プラットフォームのデータを、nxdbのデータ形式に正規化することで、異なる媒体をまたがった統合分析ができます。再利用性の高い形でデータをモデル化しているため、分析しやすい形で自在にデータを出力できます。

ごく簡単な例をもとにお話ししますと、検索連動型とディスプレイ型広告では、Google AdWordsとYahoo!プロモーション広告という代表的な配信プラットフォームがあり、配信に当たっては、それぞれ広告キャンペーンを設計します。広告キャンペーンは広告グループからなり、さらに広告グループには、それぞれキーワード、広告が登録されているという階層型の構造になっています。

APIを通して、配信プラットフォームごとのデータを取得し、広告配信実績をnxdbに蓄積することで、上記に挙げた二つの配信プラットフォームを統合的に分析できます。これにより、その時に必要な粒度、期間など条件に合わせてデータを取得してレポートにできます。例えば、クリエイティブ単位、広告配信先単位、さらにセグメント別など、APIを介して提供される全てのレポートタイプのデータを取得できるような機構を持ってます。

──nxdbはゼロから構築したものですか?

泉:はい。同様のシステムを月額課金で提供しているような既存のソリューションはありますが、枝葉末節の目的にまで届くものがないという理由から、自社で開発した方がよいだろうということで構築しました。

通常であれば、必要なときに配信プラットフォームごとの管理画面にログインして、画面からレポートの種類、期間などを指定して、レポートを出力します。人的な作業になるとどうしてもミスも発生しますし、種類や条件が多くなるほどレポート出力の時間もかかります。nxdbによりこれらの作業の時間と労力をカットできるので、即座にデータ分析に取り掛かれますし、全てのレポートタイプにアクセスできるので、詳細なファクトを明らかにするような、探索的なアプローチができます。

年間310時間の工数を削減

──廣瀬さんはnxdbを使ってみていかがでしょうか。

廣瀬:広告配信の実績と結果は必ずクライアントに報告しなければなりません。現場の人間としては、レポート出力が自動化されることで、非常に効率化できています。

全てのデータが最小粒度でそろっているので、必要に応じて自由にピボットでき、分析もしやすいです。導入前と比べると圧倒的にレポーティングに使っていた工数が削減されましたし、ヒューマンエラーによるオペレーションミスもなくなりました。単純作業がなくなったことで、より踏み込んだ分析に時間を掛けられるようになりました。

前回説明したような、クライアントの課題に対してこちらから開発型の提案ができるのも、単純作業の自動化でリソースが生まれ新しいことに挑戦できているからです。データの正確性も上がり間違うリスクが大幅に減りましたし、データの信用性も高くなっています。

──工数の削減という点では、どのくらいの効果があったのでしょうか?

泉:nxdb導入により、1年間の時間削減にどれくらい寄与したか調査したところ、年間310時間の削減につながっていることが分かりました。

ネクステッジ電通の泉さん
nxdb導入により、1年間の時間削減にどれくらい寄与したか調査したところ、年間310時間の削減につながっていることが分かりました。

BigQueryにリプレースして大量データの分析を可能に

──その他にどういう効果がありますか?

泉:nxdbでは、Google AdWords、Yahoo!プロモーション広告のあらゆるレポートタイプのデータを取得できるということをお話ししましたが、裏を返せばそれだけ大量のデータを扱っているということです。運用型広告の世界は、日進月歩で新たなプラットフォームが生まれ、各種ターゲティング手法、セグメントなども拡張し続けています。併せてデータ容量も指数関数的に増えていっています。

当初は、従来型のオープンソースのリレーショナルデータベース(RDB)であるMySQLで構築しましたが、大量のデータを処理するのにスピードの点で十分なパフォーマンスが得られないケースがありました。そこで、膨大なデータ容量に耐えられるGoogleのBigQueryを採用し一部移行しました。MySQLがRDBなのに対し、BigQueryはカラムナーデータベースです。この二つは指向性が異なるため向き不向きがあるのですが、膨大なデータを高速に処理するのにマッチするのがBigQuery です。現状は、目的に応じて適材適所で使い分けるといったハイブリッドな構成で運用しています。

クライアント向けBIツールとしても提供

──nxdbのその他の使い方はありますか?

廣瀬:クライアント側で、Google Analyticsは難しくて分かりにくいというお話があり、レポートを整形して出してほしいというオーダーがありました。そこで、nxdbのデータを活用して、クライアントのアカウントごとにBIツールを提供しています。BIダッシュボードにアクセスすれば、クライアントが自分でデータを見ることができ、どの媒体にどれくらい広告をかけているのか、売り上げや利益がどれくらい出ているのかといったことも、瞬時にグラフ化して確認することができます。

ネクステッジ電通の廣瀬さん
どの媒体にどれくらい広告をかけているのか、売り上げや利益がどれくらい出ているのかといったことも、瞬時にグラフ化して確認することができます。

泉:BIダッシュボードは社内でも見られるようにしています。社員であれば、会社全体(トップライン)からサービス領域、案件(末端粒度)に至るまで、さまざまな粒度で売上、売上総利益、売上構成比などをダッシュボード上で通観的に確認できるようにしています。

nxdbの導入以前は、経理部門の担当者がエクセルの帳票から人力で集計していました。集計に3日、レポートができるまで1週間というような時間が掛かっていましたが、今はリアルタイムに近い形でデータを見ていくことができますし、経営の意思決定にも活用しています。

広告アカウントの自動構築も見据えたシステム開発が進行中

──これからはどんなことをやっていきたいですか?

廣瀬:レポートの自動化、キーワード生成の自動化はすでに実現していますが、クライアントの広告アカウントを一から自動的につくれるようなシステムを開発中です。クライアントのサイト構造に合わせて、ページごとにキーワードを設定し、広告運用に使えるようなシステムですね。

レポートの自動化、キーワード生成の自動化はすでに実現していますが、クライアントの広告アカウントを一から自動的につくれるようなシステムを開発中です。

泉:もう少し詳細に説明しますと、ウェブサイトのパンくずリストで使われている構造化データマークアップからサイト構造を取得して、広告配信キャンペーンの配信セットを生成します。ウェブサイトのコンテンツと広告グループが対応し、自動生成できるのが理想ですね。

例えば、「沖縄 ホテル」と検索している人には、ダイレクトに沖縄のホテルが予約できるサイトに連れていくのがベストですよね。サイトの構造から取得した沖縄のホテルの一覧ページについては、それに対応する広告グループと広告、また関連性の高いターゲティングキーワードアイデアを登録するという作業を自動化します。

ある種、SEO対策の意味合いにも近いのですが、このシステムが稼動すれば、配信プラットフォームが正しいと評価する形で、ユーザーが必要とする情報をダイレクトに表示する配信セットが、自動的に生成できるようになります。配信プラットフォームが求める概念のもと、自動で広告アカウントを構築できるようになることを目指しています。

プロフィール

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    泉 正太
    株式会社電通デジタル

    ネット専業広告代理店、テクノロジーベンダーを経て、2014年ネクステッジ電通入社。プログラミングを通して業務効率改善、ソリューション開発など、技術的課題解決に日々取り組む。
    2015年に内製によるデータマネジメントシステムを構築し、社内アワードベストソリューション賞受賞。

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    廣瀬 一徳
    株式会社デジタル

    大学在学中よりアフィリエイト、WEBライティングを中心にフリーで活動後、専業代理店に入社。大型ECモールを筆頭に様々な業種のクライアントを担当後、新興メディアのインキュベートに従事。自動入札システムの開発やデータフィードの最適化など開発型のアプローチを軸に、自動化による広告効果の最大化事例を多数創出。現在は、Googleプロダクトを中心としたQuality Management Officeを兼務し、最適な運用設計の提案業務も手掛けている。

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