アドバタイジングウィークがやってくる! #07

アドウィのセミナーって、どんな感じだったんですか?

  • Izawa
    伊澤 佑美
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 コンテンツ・ディストリビューション部 「週刊?! イザワの目」編集長
  • 池上 翔
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 コーポレートコミュニケーション戦略室

前回までのあらすじ

6月2日までアジアで初開催されたAdvertising Week(アドバタイジングウィーク/当連載での通称、アドウィ)が閉幕した。アドウィアジアでは、どのようなイベントやセミナーが注目されたのだろう。開催前から体当たりでアドウィを取材してきたイザワが、独断でレポートする―――。

キーノートは同通で把握

池上くん:あー、アドウィが終わったな~…。

イザワ:広報事務局だった池上くん。すっかり気が抜けてるじゃない!

池上くん:この数カ月、アドウィのために心血注いできたんですよ。そりゃ、ふ抜けにもなりますよ。

すっかりダラけている池上くん #どこでも寝る
すっかりダラけている池上くん #どこでも寝る

イザワ:おつかれさま! 総入場者数とか、どうだったの?

池上くん:11,013人だったんですよね。おかげさまで、初年度としては大成功です。先輩も、毎日通い詰めていただいて、ありがとうございました。どんなセミナーが面白かったですか?

イザワ:初日の「TUGBOAT CREATIVE ACADEMY」をはじめ、いろんなセミナーを聞いたけど、キーノート(基調講演)の中で私が注目したのは、「リアルマッドメン:キース・ラインハード対談」かな。

アドウィのパンフレットは、左から開くと英語、右から開くと日本語で書かれてました
アドウィのパンフレットは、左から開くと英語、右から開くと日本語で書かれてました

池上くん:おぉ、キース・ラインハードさんは世界的なアドエ-ジェンシー、オムニコム社の創設者で、DDBのグローバルチェアマンですね。1960年代のニューヨークの広告業界を舞台にしたアメリカの大ヒットドラマシリーズ「マッドメン」のモデルといってもいいくらいの元祖・広告マンですよ。

50年にわたる広告マンとしての経験を語ったキース・ラインハードさん
50年にわたる広告マンとしての経験を語ったキース・ラインハードさん

イザワ:らしいね。マッドメンでは、オフィス内恋愛の話もでるらしいけど、ラインハードさんもご多分に漏れず、社内婚らしい。

池上くん:そういう話も飛び出すのが、海外ゲストのトークセッションって感じがしますね。

イザワ:そうなのよ。本当は英語でそのまま理解できれば、そのあたりのジョークもニュアンスが分かって、さらに面白いんだろうけどね。私の場合は、同時通訳で把握したからさ。でもおかげで、おおよそは分かったよ。大助かり!

池上くん:それはよかったです。どんな点が面白かったですか?

キーノート会場は満席。同時通訳は、英語、日本語、中国語に対応
キーノート会場は満席。同時通訳は、英語、日本語、中国語に対応

イザワ:キーワードでいうと、「時代が変わっても人の欲求は変わらない」「ツールやテクノロジーの“言いなり”になってはいけない」「どんなストーリーを伝えていくかが大切」「マスメディアを扱う者は、社会をつくる責任を持つ」「情熱に従うことが、数年後の自分をつくる」とかかな。大先輩の口から聞くと、説得力あったな~。

池上くん:同時通訳の口からでしょ。

イザワ:こらっ!! 余計なツッコミはいらないの!

キーパーソンのセッションは超満員

池上くん:あとはどんなセッションが人気だったんですか?

イザワ:立ち見が出るほど超満員だったのは、博報堂ケトルの嶋浩一郎さんがモデレーターを務めた「熱狂を呼ぶコンテンツのつくりかた」と、アートディレクターの佐藤可士和さん(サムライ)とクリエーティブ・ディレクターの佐々木宏さん(シンガタ)が対談した「Kashiwa Sato meets Hiroshi Sasaki」かな。

池上くん:業界垂ぜんの組み合わせですね。

イザワ:そうね。佐藤可士和さんと佐々木宏さんの対談って、ご本人たちいわく、5年前の「ブレーン」創刊50周年号以来らしいから、注目度は高かったと思うよ。

佐々木宏さん(左)の最近の3大お気に入りは、iPhone、LINE、マツコ・デラックスだそう。佐藤可士和さんは、ここ数年「日本」をテーマとした仕事が多く、最近では、歌舞伎役者・中村橋之助さんの八代目中村芝翫襲名記念の風呂敷をデザインしたという。#レジェンド
佐々木宏さん(左)の最近の3大お気に入りは、iPhone、LINE、マツコ・デラックスだそう。佐藤可士和さんは、ここ数年「日本」をテーマとした仕事が多く、最近では、歌舞伎役者・中村橋之助さんの八代目中村芝翫襲名記念の風呂敷をデザインしたという #レジェンド

池上くん:そこでの学びはなんですか?

イザワ:ベタだけど、第一線で活躍してる人はアンテナ感度が高いということと、世の中のためになりたいという意識が強いってことかな。例えば、佐々木さんが3.11の東日本大震災の直後に手掛けた、サントリーBOSSのCMって、当時の雰囲気や世の中の気分に寄り添いながらも、見ている人を勇気づける力があったと思うんだけど、その原動力の根幹を垣間見した気がするな。

池上くん:へぇ、聞きたかったなぁ! 嶋さんのセッションのゲストは、『週刊モーニング』(講談社)で『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』をヒットさせて、後に独立した佐渡島庸平さん(コルク代表取締役)と、「SICKS~みんながみんな、何かの病気~」「ピラメキーノ」など独自路線の人気番組を演出している、佐久間宣行さん(テレビ東京プロデューサー)でしたね。

漫画、テレビと、それぞれの世界で新しい熱狂を作り出した 次世代メディアマンの佐渡島庸平さん(左)と佐久間宣行さん。#ルールチェンジャー
漫画、テレビと、それぞれの世界で新しい熱狂を作り出した 次世代メディアマンの佐渡島庸平さん(左)と佐久間宣行さん #ルールチェンジャー

イザワ:このセッションは、コンテンツづくり、が大テーマだったから、文章を書く私としては、とても興味深かったよ。いいコンテンツをつくるためのコツのひとつに、テレビの出演者や漫画家さんとプレイベートでは仲良くなりすぎないことがあるんだって! 佐久間さんなんて、年1回の番組打ち上げ以外、出演者と飲みに行かないらしいよ。

池上くん:えぇ!! 飲みに行ってなんぼの世界だと思ってました…。

イザワ:だよね。でも飲み会の席で決まったことは何もないらしい…。飲み会が無意味だとまでは言ってなかったけど、お互い、いつ切られるかわからない緊張感を持ち続けていることがいい企画を生むコツになってるんだってさ。

池上くん:僕、最近、二言目には、飲みに行きましょっか、と言いがちなんで、反省します…。

イザワ:そうだね、うん。じゃあ、アドウィの打ち上げもなしで。

池上くん:えぇ! 打ち上げは別でしょ~! だって佐久間さんも打ち上げは行くって言ってるじゃないですか!!

イザワ:あはは、そうだった。あとはね、ヒットさせるには「読者や視聴者に、仲間になりたいと思わせることが必須」とか、企画のヒントは「本屋の新書の平積みタイトルから時代の空気を読み取る」とかね。

池上くん:勉強になりますね~。

モデレーターの嶋浩一郎さんも、本屋さんの平積み書籍のタイトルをひたすらメモして1ワードで総括する、という訓練をしていたと明かした。#世のトレンドは本屋さんが教えてくれる
モデレーターの嶋浩一郎さんも、本屋さんの平積み書籍のタイトルをひたすらメモして1ワードで総括する、という訓練をしていたと明かした #世のトレンドは本屋さんが教えてくれる

イザワ:ゲストのお二人は初対面だったらしくて、その化学反応っぷりも面白かったな。佐渡島さんが、今のテレビはスイッチを押してから映像が映るまでにタイムラグがあるけど、それが視聴者離れの原因のひとつじゃないかってズバリ提言したり、佐久間さんの番組に、ギャグ漫画家さんが出たらどうなるか、って話が出たりね。目の前で企画会議が開かれている感じというか、新しいコンテンツが生まれる感じがしたな~。

池上くん:今、注目の人の話が生で聞けるのが、アドウィのいいところですからね。

キーポイントは、聞いてすぐ使える

イザワ:もうちょっと実務的というか、明日の企画書に生かせそうなセッションもあったよ。中でも、博報堂DYメディアパートナーズメディア環境研究所と電通総研の調査研究がシェアされた「日本の若者のモバイルコミュニケーション最前線」は、面白かったな。

池上くん:へぇ、電通と博報堂が一緒にセッションしたんですね。

イザワ:そうなの。4つの調査研究が発表されたんだけど、そのデータについても撮影自由だったのでスマホのシャッター音がすごかったよ。みんな、関心が高かったんじゃないかな。

池上くん:へぇ、両社とも懐が深い!!

左から、モデレーターの奥律哉さん(電通総研 メディアイノベーション研究部)、パネリストの吉川昌孝さん、加藤薫さん(いずれも博報堂DYメディアパートナーズ・メディア環境研究所)、設樂麻里子さん、美和晃さん(いずれも電通総研 メディアイノベーション研究部)
左から、モデレーターの奥律哉さん(電通総研 メディアイノベーション研究部)、パネリストの吉川昌孝さん、加藤薫さん(いずれも博報堂DYメディアパートナーズ・メディア環境研究所)、設樂麻里子さん、美和晃さん(いずれも電通総研 メディアイノベーション研究部)

イザワ:博報堂DYメディアパートナーズ・メディア環境研究所の吉川昌孝所長からは、生活者のメディア接触に関する定量データが発表されて、「モバイルシフト」の実態が明らかにされてたね。それに対して、電通総研 メディアイノベーション研究部の美和晃部長はログデータ解析から、モバイルの利用実態を報告してたけど、それによると、通勤通学時間帯にあたる、朝8時(モバイル起動率61%)と、昼休憩にあたる12時~1時(67%)、それと帰宅以降から寝るまでの16~22時(60%以上)が、スマホの3大利用時間帯になるらしいよ。なんとなくそうかな、とは思っていたけど、それがデータで裏付けされると、企画の説得力につながるよね。1回のモバイル起動時間は2分以内で、10代女性は1日に平均65回も起動していて、せわしない使い方をしている、とかね。

池上くん:なるほど! なんとなく思っていたことがデータで裏付けられるのは、いいですね。

イザワ:今、私が言ったことを繰り返してるだけだけど…。

池上くん:勉強になります!! 

イザワ:(気を取り直して)だから、企業の公式アカウントとかって、ソーシャルメディア投稿を10時とか、14時とか、いわゆる「勤務時間帯」に投稿しがちなんだけど、それじゃあ、見られないってことなんだよね。発信者の都合でやってちゃ、今のモバイルユーザーの生活スタイルにはマッチしないってことがデータでわかってるんだよ。

池上くん:そのあたり、クライアントに話すこともあるんですけど、裏付けデータがあるとより楽に理解いただけそうですね。

イザワ:あと、設樂麻里子副主任研究員(電通総研)の発表で、今の時代のトレンドでもある写真や動画といったビジュアルを活用する若者スマホユーザーの情報伝達モデルを「シミュラークル型」って表現してて、それも面白かったな。

池上くん:シミュラークル?

イザワ:もともとはフランス語で「虚像」「模造品」などを意味するんだけど、ここでは、オリジナルなきコピー、っていう意味で、写真や動画の比重が増えた現代のソーシャルメディア上で「誰が最初に始めたかは不明だけど、多くの人が真似たい写真のスタイルやイメージがパターン化する現象」を表現しているよ。「シミュラークル型」は他人の投稿写真を見て、自分も同じ体験をしたくなるっていう、現代の新しい情報伝達やトレンド伝播のスタイルのことで、SNS映えするイベントや料理の写真を通じて憧れや興味関心、消費意欲が喚起されるとか、あるいは見た人がその体験をした気になる「代理消費」につながる、とかがその特徴だね。

池上くん:先輩、勉強しましたね。

イザワ:しかも従来のマスメディアを中心にしたマス型コミュニケーションや、インフルエンサーを起点としたインフルエンサー型コミュニケーションがなくなるってことじゃなくて、これらは同時多発的に起きて、生活者の欲望やニーズの発火点は多様化する…。

池上くん:す、すごい、先輩が賢い!!

セミナーをマジメに聞くイザワ #やる時はやる
セミナーをマジメに聞くイザワ #やる時はやる

イザワ:ん? 今のはね、全部、美人研究員・設樂さんの受け売り。

池上くん:なんだ、びっくりして損した。

イザワ:なんだとはなんだ!(怒) まあともかく、後輩の前でパッと自分を賢く見せられるような、今すぐ使える情報もアドウィは満載だったってワケ。

池上くん:いやぁ、とっても参考になりました。さっそく企画書に使おうっと!

イザワ:他の見どころについても話したいんだけど…。

池上くん:え、でももう3時間くらい話してるんで、そろそろ仕事に戻りたいんですけど…。

イザワ:アドウィ燃え尽き症候群でダラダラしてたのに、よく言うよ!! まったくもう! んじゃ、また後で話すから、リフレッシュがてら仕事してきていいよ。

池上くん:もはや、先輩、主従が逆になってます…。

イザワ:気にしない、気にしない。ちゃお~。

アドウィのセミナーは満足度高し!
アドウィのセミナーは満足度高し!

次回は、最終回! アドウィのセミナー以外の面白さに迫ります!

プロフィール

  • Izawa
    伊澤 佑美
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 コンテンツ・ディストリビューション部 「週刊?! イザワの目」編集長

    2003年電通PR入社。メディアリレーションズ部にて、企業・団体に関するプロモーションに従事。2011年にオウンドメディア「週刊?! イザワの目」を立ち上げ、編集長に就任。国内外の最新PR事例を取り上げて解説する特集や、旬な人物に迫るインタビューが人気。
    現在は、編集者、ライター、PRプランナーとして、企業のオウンドメディア運営やコンサルティングのほか、広報業界向けメディアへの寄稿なども手掛けている。東洋経済オンラインにも連載執筆中。

  • 池上 翔
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 コーポレートコミュニケーション戦略室

    2008年電通PR入社。イシュー・リスクマネジメント部にて企業・団体の平時および緊急時のリスク対応に従事。2011年に電通プラットフォーム・ビジネス局に出向し、ICTサービスのプロモーション、プラットフォーム関連事業のリスクマネジメントに従事。2012年から2年間、ディレクション局にて通信会社、食品会社、スポーツ関連企業等、さまざまなセクターのクライアントのPR戦略立案・実行に携わる。2014年から現職。企業広報のコンサルティングおよびPR戦略のプランニングに従事。

バックナンバー

関連記事

続きを見る
ページ先頭へ