サンシャイン60展望台フルリニューアル #01

体感型展望台「スカイサーカス」って、なんだ?!

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    寺本 誠
    株式会社電通 第4CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター

4月21日、東京・池袋のサンシャインシティに「SKY CIRCUS サンシャイン60展望台」がオープンした。約1年間の休館を経て生まれ変わった展望台は、先端技術を駆使した「眺望×テクノロジー」を五感で楽しめるコンテンツがそろい、話題を集めている。この“体感する展望台”はいかにつくられたのか。制作を手掛けた電通 第4CRプランニング局の寺本誠氏がお伝えします。


展望台を、もう一度つくる仕事

2013年7月。とある土曜日の午後。

私は東京・池袋にある、サンシャイン60展望台にいました。

重厚な空間に点在する人々。昭和から時間が止まっている錯覚にふと陥りました。「これは、来る前から帰るまでの全てを考える必要がある」。その日から約3年にわたる「展望台をもう一度つくる仕事」が始まったのです。

電通の仕事は課題解決です。広告以外のさまざまなこと、たとえば商品開発や事業開発などに関わる人も多くいます。しかし、展望台はさすがに前例がありませんでした。前例がない場合はどうするか? まず、現場に行くことです。そこには課題だけでなくヒントがあるからです。

sky circus

 

欠点は視点を変えると個性になる。

課題①:「高くて、眺望が美しい」以上のものは何か?
サンシャイン60ビルは1978年に開業しました。海抜251メートルを誇る高さは当時「東洋一の高さを誇る展望台」とたたえられたといいます。しかし近年、高層マンションや高層ビルなどが続々と建っています。もはや「高くて眺望が美しい」だけでは珍しくなくなってきているのが現実です。

課題②:太い柱・変えられない壁
頑強な構造を支える太い柱。広大なパノラマ的な視界を確保しづらいことは課題でした。そして、これだけの高層ビルになると外壁も変えることはできません。つまり、変えられるのは中身だけでした。

課題③:時間価値
「ここに来てよかった」と思えるのは、過ごした時間の満足度がその対価と見合ったときだと思います。家族連れやカップルが、料金以上の満足度を得られなくてはならない。しかし客を観察して見ているとテンションのピークは最初に眺望を見た瞬間が最高であり、その後は緩やかに下がっていく様子が見て取れました。

しかし、ここにしかないヒントや良いところも発見できました。

東京を360度見渡せる眺望が素晴らしいこと。
サンシャイン60は東西南北の東京が見渡せます。空気が澄んでいるときは、雄大な富士山も見えます。東京の夜景を独り占めしたいならば、まずここに来るがよい、と自信を持って言えるロケーションです。

一つ一つの視界が部屋のように楽しめること
太い柱に区切られた空間は、まるで一つ一つの部屋のようでした。これは発見でした。個性的で多様な空間をつくることができる、他にない「個性」です。柱を通り過ぎるたびに、新しい世界が現れる。そんなイメージが湧きました。

発想を転換すれば、課題は個性に変わります。
他と比較して欠点を嘆くのではなく、個性と考えることで他にはない価値を創ることができる、それが私たちの提案の出発点でした。

sky circus

 

「地上でできることはやるな。展望台でしかできないことをやろう」

提案は紆余曲折あり、電通と乃村工藝社、サンシャインシティとのコンソーシアム(同盟)という座組みになりました。乃村工藝社は展示・施工などモノ作りでの圧倒的な実績があります。そして電通はコンセプトとストーリーメーキングを評価していただきました。いろいろ激論もありましたが、家族と過ごすより長い時間を過ごす中で、だんだんフォーカスが合ってきました。しかし何より価値があったのは、クライアントの現場の方、社長をはじめとした役員の方と直に話せたことでした。スカイサーカスというコンセプトやコンテンツは、決して電通や乃村工藝社が考えたからできたというものではなく、クライアントの方の思いや情熱がないと生まれなかったと思います。特にことあるたびに「地上でできることはやるな。展望台でしかできないことをやろう」が口癖の、誰よりも発想が過激な社長と、超前向きなプロジェクトリーダーの方がいて、われわれは頂を目指せたと思います。

sky circus

 

コンセプトは「スカイサーカス」

いくつかのコンセプトの検討を経て採用されたコンセプトが「スカイサーカス」でした。サーカスのように五感が刺激される場所であり、みんなで楽しみ、交差できる場所。受動的ではなくインタラクティブであり、何度も行きたくなる場所。そして何よりにぎわいを感じること。新しくて刺激的なことは今までは地上で起きてきましたが、これからは空が面白くなっていく。そんなメッセージを発信できる新しい展望台のビジネスモデル、それが「スカイサーカス」です。それは「見るだけの展望台」から「体感する展望台」へシフトすることでした。

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東京を空からおもしろく。

この空間を生かした7つのエリア・25のコンテンツで、今までになかったやり方で眺望を体感し遊べる展望台、その世界観を規定するキービジュアルとCIロゴを開発しました。

・展望台という「上空にある場所」を想起させる。
・中で何が行われているか分からない「ワクワクドキドキ」が表現できる。
・よく見るとストライプは、サンシャイン60を下から見上げたように見える。

こうした考え方を込めたデザインを考えてくれたのは、アートディレクターの田中せりさん。そして、そこからスカイサーカスの世界を創り出した乃村工藝社のデザインチーム。池袋の空に出現したテントが、東京を空からおもしろくするスカイサーカスのCIとなり、造形やツール、ユニホームやお土産、さらにはコンテンツの内容にも展開していきました。
では、コンテンツの中身はどうやって考えて、つくられたのか、どんな体験がデザインされたのか? その話はまた次回で。

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スカイサーカス サンシャイン60展望台 エントランス (公式サイト http://www.skycircus.jp/)

 

プロフィール

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    寺本 誠
    株式会社電通 第4CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター

    1964年西宮市生まれ。筑波大大学院 芸術研究科卒。電通に入社後、1993年にクリエーティブ局に転局、1998年からインタラクティブ・クリエーティブ領域にプランナーとして関わる。2006年よりクリエーティブ・ディレクターとして、インタラクティブを中心とした企画や統合キャンペーン、CI・VI開発、クライアントと共に事業開発を行っている。自動車、精密機器、放送、エンターテインメント、スポーツなど、担当は多彩。
    IBA、カンヌライオンズ、ONE SHOW、アドフェスト、文化庁メディア芸術祭など受賞。最近は「島」に注目している。

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