ろーかる・ぐるぐる #89

まずは「いまの言語化」から ~ぼくの商品開発コンサル術(前編)~

本を書く喜びは、読んでくださった方と話していて「あっ、伝わってる!」と実感する瞬間にあります。一方、この本ではコンセプトづくりの原理・原則というか、揺るぎない本質を書くことに挑戦したので、その分「もう少し具体的な手順を知りたいなぁ」なんて言われちゃうこともあります。そこで現実にいま、ぼくが商品開発のコンサルティングをするときに共通する手順をご紹介しましょう。
そこには純粋なコンセプトづくりのプロセスとは別の、例えば部外者であるぼくとクライアントの皆さまが信頼関係を築くステップも含まれています。とはいえ、具体的に何か現場でプロジェクトを進める参考にはなるのではないかと思っています。

商品開発コンサルティング 手順のフロー

ぼくが商品開発のコンサルティングをするときは(おおよそ)「いまの言語化→ブレスト→十字フレームでの整理→具体策づくり→ブラッシュアップ」という手順を踏みます。原理的には「ぐるぐる思考」に基づいているのですが、またその話を始めると混乱しちゃうので、それはいったん置いておいて。

いまの言語化

最初の「いまの言語化」でやりたいことは「現在、誰にどんな価値を提供しているのか?」「その背景にあるビジョンは何なのか?」を言葉で捕まえることです。これが大切な理由は簡単で、ぼくらが新商品開発をする場合、何かしら「いままでの常識」を覆すものが求められます。ですからその覆すべき「いまの常識」をはっきりさせておこうよ、ということです。

多くの場合、ぼく自身がファシリテーター(司会者)を務めて「いまのお客さまは誰か?」「その人に何を提供しているのか?」といったことを、単に商品スペックだけでなく、機能的なベネフィット、情緒的なベネフィット、あるいは価値観のレベルで執拗に追求し、結果を大量のカードに書き出します。それが十分たまったら、こんどはそのカードをみんなでグルーピングし直し、最終的に「いまのコンセプト」「いまのターゲット」「ビジョン」を明確にします。
経営者から現場まで、営業から管理セクションまで、幅広い視点を持つ方々に集まっていただくこのセッションの実施だけでも、最低丸一日はかかります。でもこれをきちんと実施するためには、ファシリテータを務めるぼく自身に大量の予備知識を身につけておかなければなりませんし、参加者の皆さんも日ごろの実感をしっかり棚卸しする必要があります。その準備にこそ莫大な時間と労力を割かなければなりません。

ブレスト

「いまの言語化」を通じて、「覆すべきサーチライト」が明らかになったら、次に「新しいサーチライト」を考えなければなりません。それが次のステップ「ブレスト」です。ぐるぐる思考でいえば、材料集めの「感じるモード」とあらゆる可能性を考え尽くす「散らかすモード」の二つをほぼ同時にやることになります。

ここでのルールは皆さまご存じ、自由奔放、批判厳禁、質より量、便乗発展の四つ。個人的な感想ですが、ぼくがご一緒したメーカーの方々は一般に「便乗発展」が苦手な印象があります。どうも(必死に押し隠しているものの)正しく考える習慣が根強いため、他人の一見ふざけた意見の中に鉱脈を見つけることができないのです。広告屋 さんであるぼくがそのあたりもサポートしながら、ともするとくじけがちな、この苦しいステップに取り組みます。

ベロコ
瀬戸内で釣ったベロコ
地酒に地魚で
地酒に地魚で

実はいまもブレスト中の宿題を二本抱えたまま、夏休みで高松にいます。テニスをしても、釣りをしても、うどんをすすっても、あるのかないのか分からない答えを求めて、そのお題が頭から離れません。ところが来る日も、来る日も瀬戸内の地魚と地酒「悦凱陣」で頭脳の「お浄め」をしていたら、あら不思議。だんだん宿題の意識が薄れてきて…。さて、休み明け、ぼくはちゃんと仕事復帰できるのでしょうか?

どうぞ、召し上がれ!

プロフィール

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    山田 壮夫
    株式会社電通 第1CRプランニング局

    1969年生まれ。アイデアを核として広告キャンペーンはもちろん、店舗開発からテレビ番組の製作まで手掛ける。特に最近は全国の地方新聞社厳選お取り寄せサイト「47CLUB」と連携してローカルにおける商品開発作業にチャレンジしている。2009年カンヌ国際広告祭(メディア部門)審査員。慶應義塾大学(メディア・コミュニケーション)、明治学院大学(経営学)非常勤講師。著書に『〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考』(朝日新聞出版)。

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