ろーかる・ぐるぐる #88

八ヶ岳のビックリ箱

お暑うございます。そんなときは「高原へいらっしゃい」ですよね。あれ、古過ぎてご存じありません?? 田宮二郎主演の、この名作ドラマの舞台にもなった八ヶ岳高原ヒュッテのほど近く、山梨県北杜市の町はずれに「ひまわり市場」はあります。

ひまわり市場

かつて聞いた話ですが、流通関係者の中で山梨県は「商売が難しい場所」というのが常識だったようです。いわく「魚売り場ではイカとマグロしか売れない」「品質より価格を重視する土地柄」云々。

ところが「ひまわり市場」はそんな常識をひっくり返しています。お店に入ってすぐ目につくのは、栽培期間中に農薬も化学肥料も一切使わない地元農家の野菜だったり。日本ワインをけん引する甲府のサドヤと共同開発したオリジナルワインだったり。値段だけ見れば「安くない」かも知れませんが、味わってみればその品質は折り紙つき。遠く甲府からもお客さまがいらっしゃるというのもうなずけます。

 
この本でも「ひまわり市場」のような素敵な事例をいくつか紹介しています
『コンセプトのつくり方』でも「ひまわり市場」のような素敵な事例をいくつか紹介しています
 

さて、この常識を覆したスーパーマーケットのコンセプトは何でしょう?

社長の那波秀和さんが答えるには「魂のスーパー」。生産者が魂を込めてつくった品物を、従業員一同、お客さまに魂を込めてお届けしているから、というのがその理由です。たとえば鮮魚売り場に並ぶのは、富山湾の最奥「岩瀬浜」から直送される魚たち。そこにある約束は「岩瀬浜は渾身のお魚を、適価で適量、魂を込め、ひまわり市場に送る」「送られて来た魚を、ひまわり市場は岩瀬浜に敬意を表し、全力で売り切る」、そのたった二つだけだとか。

あるいは「八ヶ岳のビックリ箱」なんてことも話していました。なるほど店内を見回せば、お客さまを驚かせるための仕掛けがいっぱいです。たとえば惣菜コーナーにあるのは「究極のメンチカツ」。最高級ブランドの「松阪牛」を6割、鹿児島県産「黒豚」を4割、あとは国産玉ねぎしか使っていません。あるいは社長の「魂のマイクパフォーマンス」。思いのこもった商品を伝えたいという情熱がほとばしる場内放送が響きわたります。

 
これが那波社長
 

 「コンセプトはメタファーで表され、進むべき方向を直感的に共有できるサーチライトである」という立場からすれば「八ヶ岳のビックリ箱」の方が、ひまわり市場の魅力をより表現できている気がします。これはこれで素晴らしいのですが、ぼくは社長の話を聞いて、勝手にひまわり市場のコンセプトを「生産者のためのスーパー」だと解釈しました。ここの大きな特徴は、生産者が本気で、正直につくった品物なら、多少無理してでも仕入れちゃう点にあります。その結果、いつのまにか全国の誠実な生産者の中で「あそこは志を理解してくれる」という評判が立ち、結果、大手スーパーのようなバイヤー網を持たなくても、勝手に日本中の最高の品々が集まる仕組みを作り上げたからです。出来てしまえば「そうやればうまく行くよね!」なのですが、やっぱり「その手があったか!」な取り組みです。

実は那波社長、ぼくの中高の同級生。ぼくが民俗文化研究同好会(通称、みんけん)で地味~に活動していた時、元気よく部活でバスケットボールをしていた友人です。あれから30年。仲間の活躍は眩しいばかりです。

今回の八ヶ岳は嫁の会社仲間との「テニス合宿」が目的で、ぼくは料理人としての参戦だったのですが、ひまわり市場で購入した地元の野菜、地元の精肉、そして地元で醸造されたお酒で彩られた食卓は最高。ついつい飲みすぎてしまったことだけが反省です。

山奥で刺し身三昧
山奥で刺し身三昧
地元食材で作った鶏の赤ワイン煮。酔って写真失敗(笑)
地元食材で作った鶏の赤ワイン煮。酔って写真失敗(笑)

皆さんも夏休み、八ヶ岳にいらっしゃることがあれば、是非お立ち寄りください。

どうぞ、召し上がれ!

プロフィール

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    山田 壮夫
    株式会社電通 第1CRプランニング局

    1969年生まれ。アイデアを核として広告キャンペーンはもちろん、店舗開発からテレビ番組の製作まで手掛ける。特に最近は全国の地方新聞社厳選お取り寄せサイト「47CLUB」と連携してローカルにおける商品開発作業にチャレンジしている。2009年カンヌ国際広告祭(メディア部門)審査員。慶應義塾大学(メディア・コミュニケーション)、明治学院大学(経営学)非常勤講師。著書に『〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考』(朝日新聞出版)。

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