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電通流 デジタルマーケティングNo.3

3限目:テクノロジーに挫折しないためのデジタル広告講座

2016/08/22

今回はオンライン動画学習サービスschoo WEB-campusで公開中の「電通流 デジタルマーケティング」の3限目「テクノロジーに挫折しないためのデジタル広告講座」の復習と、講義中には触れられなかった部分についてお話をしたいと思います。

アドテク領域は多くのマーケターの方がつまずきやすい領域です。その理由は2点です。まず1点目にacronym、すなわち略語が多いため混乱や誤解を招くこと。そして2点目にベンチャーから大企業までさまざまなプレーヤーやベンダーが登場する複雑な世界であること。今回の授業ではこれらの障壁につまずかないように、もっと概念的な話をしました。各領域の詳細や専門用語の解説などは下記リンクの記事を一読いただき、理解を深めてみてください。

過去記事:電通のDMP実践論 ~データによるマーケティング精緻化~【前編】

デジタル広告とアドテク

まず、皆さんはデジタル広告と非デジタル広告の違いを何だと捉えているでしょうか?私は情報伝達方法が「通信型」である、すなわち双方向の情報伝達が起こることにあると考えています。従来は、一方向の情報伝達である「放送型」はとても効率の良い手段でした。しかし昨今は技術が発達したため、「通信型」の情報伝達コストが下がり、プライシング、広告フォーマット、広告デバイス/プラットフォーム、広告配信ターゲットを自在に操ることのできるデジタル広告の存在感が大きくなっています。すなわち、それはコミュニケーションの4W2H(What, Who, Where,When, How, How much )を自由に最適化できる世界観に他なりません。

アドテクの潮流

デジタル広告、アドテクノロジーの進化はコンピューティングパワーの進化とほぼ同義です。多くの通信データをさばけるようになり、アドテクの世界では三つの潮流が生まれています。

一つ目は細分化。広告の取引単位や最適化の粒度がどんどん細かくなっています。二つ目は人間が管理できないほど細かくなった広告を適切に扱うための自動化です。これにより、人間が意思決定すべきスパン自体が短くなり、三つ目の高速化という潮流も生まれています。この潮流が突き詰められた結果、広告露出1回分から買い付けることができるDSP(デマンドサイドプラットフォーム)や逆に広告露出を1回単位で高く売って媒体社の収益を高めるSSP(サプライサイドプラットフォーム)、これらの間の広告取引をコンマ数秒で実現する超高速市場RTB(リアルタイムビディング)などが生まれました。これはたくさんの寿司屋さんと漁師が集う築地市場が超高速化し、そこに買い手・売り手の自動化システムが存在する、と考えると分かりやすいかもしれません。

プログラマティック広告と呼ばれる運用型広告では、他産業の追随を許さないほどのデータ量を処理しています。ニューヨーク証券取引所と比較すると、取引件数は100倍、1回の取引当たりでは10倍のデータを扱っているのです。これらのデータハンドリングで圧倒的な勝者となったのがGoogleとFacebookです。彼らはデジタル広告市場の85%を占める売り上げ規模(2015年)を誇っており、この領域の牽引者ともいえます。

アドテクとの付き合い方

しかしながら、デジタル広告は「無敵」の広告ではありません。デジタル広告は理想と現実の間を常に行き来します。推定精度と呼ばれる、ウェブの行動データをもとにしたユーザー属性の判別精度や、スマホの登場により拍車がかかったバラバラID問題。デバイスやブラウザーが変わった瞬間に、同じ人に対して異なるIDが付与されてしまうために、なかなか全てのデバイスをまたいだ体験最適化は難しい状況です。

そして、デジタルが「能動的に情報を集める」メディアだからこそ起こる「バナー広告効いていない?」問題。バナー広告はクリック至上主義が行き過ぎているあまりに、ブランディング手法としては疑問が残ります。また、クリエーティブもクリックをあおるものがほとんどで「見てよかったなと思える広告」に出合えることはほとんどありませんでした。だから、モバイルでは「アドブロック」という広告を拒否する流れさえ出てきました。また、数値が取れるばかりに、その数値の意味を誤解してしまうことがあります。例えば、インプレッション=広告露出と呼ばれる数値は「ヒトが広告を見た回数」と同義ではありません。「そもそも画面に表示されているか」 「ヒトでなく、プログラムに見られているのではないか?」など、さまざまな落とし穴がそこにはあるのです。

そんな落とし穴を解決する方法は三つしかありません。ただし、この三つをきっちりとやりきれば、確実に広告出稿の効率はアップします。

①広告運用に関わる全ての要素/検討点でデジタルの強みを生かし、精緻化/定量化していく。
②新しい技術はスモールスタートで、まずは実証実験をしてみる。
③既存KPIに一喜一憂せず定期的にKPIにふさわしい指標か、検証を繰り返す。

アドテクの未来

今後のアドテク/広告に関しては、あくまで私の予想になります。

今後データがますます増えていくことは確かですし、そのデータをどのように活用するかというのは全企業にとっての永遠の命題になるでしょう。

そして、その際に「貴重なデータ」「貴重ではないデータ」の分別や、マーケターとしての目的設定とそれに適した技術、資源、プロセスの選定が重要になります。

アドテクはもしかすると、今後は「広告」にとどまらない技術なのかもしれません。それはGoogleやFacebookといったリード企業を見れば明らかです。

しかしながら、まだまだアドテク自体は完成されたものではなく、発展途上の技術です。

その技術の落とし穴や可能性を実証実験で明らかにし、賢い投資のできる組織がこの領域を勝ち抜いていくのだと思います。


『電通流デジタルマーケティング』は下記の日程で6回の講義を予定しています。下記の収録当日は生放送で無料ですのでお見逃しなく。

1限目:デジタルマーケティングのはじめ方:谷澤正文
5月27日(金)実施済み、録画講義公開中

 2限目:デジタルマーケティングのためのコンテンツマーケティング:郡司晶子
6月24日(金)実施済み、録画講義公開中

3限目:テクノロジーに挫折しないためのデジタル広告講座:近藤康一朗
7月22日(金)実施済み、録画講義公開中

4限目:マス広告×デジタル広告の統合:三谷壮平
8月26日(金)19:15〜

5限目:顧客体験を事業成長につなぐマーケティングシステム:八木克全
9月23日(金)19:15〜

6限目:デジタルで、イノベーション発想を豊かにする:谷澤正文
10月28日(金)19:15〜


次回は8月26日(金)、電通デジタルの三谷壮平による「マス広告×デジタル広告の統合」です。ぜひご覧ください。