電通流 デジタルマーケティング #04

4限目:マス広告×デジタル広告の統合

今回はオンライン動画学習サービスschoo WEB-campusで公開中の「電通流 デジタルマーケティング」の4限目「マス広告×デジタル広告の統合」の復習と、講義中にご質問いただいた内容について改めて整理します。

デジタルマーケティングの入り口として分かりやすいメディアの観点から、デジタル化ということが本当に意味するものは何か?を整理することで、デジタルマーケティング全体を設計するための基礎を捉え直す、というのが本講座のテーマでした。それでは、そもそもデジタルとは何か?という根源的な問いから考えてみましょう。

そもそも「デジタル」ってなんだ?

デジタル広告=ウェブ広告、と思われがちですが、ここの違いについてあえて深く掘り下げて考えてみたいと思います。

メディアという観点で考えると、デジタル化しているメディアを使うウェブ広告、(現時点では)デジタル化していないメディアを使うマス広告、というふうに整理できます。

では、メディアにおけるデジタル化とは本質的に何を指すのでしょうか。

これは、放送と通信の違い、というように整理できるのではないかと思います。

放送は中央にある放送局から各受像機に対して「1対多(マス)」で情報が流れて、かつこの情報の流れは「一方向」でした。なので、広告の形態もこの特性に規定されて、同じテレビ番組や同じ新聞の紙面の広告は誰が見ても同じですし、また一方向の情報発信なので広告が出た後の効果も基本的には計測はできませんでした。

一方で通信は、各端末が自由に情報にアクセスして、自分が望む情報を選んで取得することができます。つまり、ユーザー単位で「1対1」の情報取得が可能です。加えて、望む情報を選んで取得できるということは、情報の流れも一方的ではなく「双方向」なものとなります。従って広告の形態についても、同じサイトの広告枠でもユーザー一人一人に違う広告を出すことができますし、また双方向なので広告効果についてもかなりの情報が計測できるようになっています。

この「放送」と「通信」の違いは、広告において実はかなりのパラダイムシフトと言ってよいでしょう。放送、つまり(現時点の)マスメディアでは、マーケティング調査をどれだけ行い、どれだけ細かなターゲット像の仮説を立てたとしても、最終的なメディアプランニングの段階では「F1層が多い」くらいの粒度でしかターゲットにリーチできませんでした。これが通信、つまりデジタルメディアは、最初に設計したターゲット像の仮説・設計をかなりの精度で再現できるようになっています。

ところが、現状のウェブ広告の状況は必ずしもこのデジタルの本質的な価値を活用できていません。

今までのマス・デジタル統合の陥ってきた過ち

マス広告はリーチ数が大きい分、細かな設計が難しいのに対して、デジタル広告は細かく設計できるということが特徴です。なので、この特徴を生かしてマスではできなかったターゲットごとのコミュニケーションの細かな設計をする、というのが本来あるべきマスとデジタルの統合の姿です。

ところが、現状のマス・デジタル統合というのは、多くの場合において「テレビを見ない若者が増えているらしいし、マスだけじゃなくてネットもやってみるか」くらいの、マスメディアに対するリーチ補完という文脈にとどまってしまっています。つまり、あくまでマスメディアが主語になっています。

でも、よく考えてみてください。リーチ補完と言いますが、「5万人リーチしました!」ってどれだけの意味があるんでしょうか。これだけだと、「どんなユーザーにどれくらいの態度変容効果があったのか」が全然分かりません。放送の時代は細かい数字が取れないですし、また分かったとしても、次の打ち手は提供する番組を変えるなど粒度の粗い調整しかできず、成果もリーチを見ておけばよいという時代でした。通信の時代になってリーチしたユーザーの属性(興味関心、性別・年代の推定)や態度変容度の違いなどの指標が見えるようになったにもかかわらず、放送の時代と同じモノサシだけしか使わないのは、あまりにもモッタイナイのではないでしょうか。

リーチなどの「点」でしか語ってこなかったのは、広告を売る側である広告会社の責任でもあります。デジタルの良さである「1対1=細かく設計できる」「双方向=効果が可視化できる」という特徴は、裏を返せば設計が非常に面倒という側面もあるため、リーチという「点」だけで語ってそれで済むのであればわざわざ難しいことを考えたくない、という甘えがなかったとは言い切れません。

加えて、もともとウェブ広告はダイレクト系(インターネット通販など売り上げ直結型)のクライアントが多く、閲覧やクリックでなく問い合わせ・購買などの獲得単価(CPA)が成果指標の主軸になってきたという側面もあります。CPAは点での説明の最たるもので、CPAが良ければクライアントの事業にとっても良いという正論のもと、とにかくCPAだけを見て改善していく、というアプローチが主流になっていきました。

しかし、ウェブでの購入や申し込みといった短期的な成果だけがゴールではないクライアントも数多くいます。そうしたクライアントがウェブ広告をやろうとしたときに、CPAやリーチ単価などあまりに単純化した指標だけで語ることはあまりに不誠実だと言わざるを得ません。

CPAやCPC、リーチやView率など、単純化した「点」の指標で全てを語れるという甘えは捨てて、「面」としてのコミュニケーション設計から逃げないことが、真のマス・デジタル統合の大前提です。

真のマス・デジタル統合の考え方

もちろん、この「面」としての設計の成果は、ブランディングのように抽象的な言葉でくくられるものではありません。なんとなくブランディング効果があった、というような言い方は、ダイレクト系のクライアントを長年担当し、常にCPAに向き合ってきた者として、最も嫌うものです。

あくまで定量的に測れる成果として、指標を単純化せずに向き合っていく、ということが私たちのゴールです。

そのためには、メディア選定だけでは不十分です。「面」として全体を設計するためには、メディアは当然として「何を訴求をするか」「誰に訴求をするか」「どう評価するか」という要素全てを適切に組み立てるのが必要不可欠です。

そのためにはさまざまなアプローチがありますが、今回はターゲットを起点としたアプローチについて考えてみましょう。

例えばクレジットカードが商材だったとして、今までのウェブ広告のアプローチだと、テレビCMのリーチ補完(認知獲得)か、あるいはクレジットカードについて調べている人にクレジットカードの広告を出す、というダイレクト的な手法(刈り取り)か、どちらかしかありませんでした。

ところが、もう少しターゲットについて考えてみると、例えば旅行が好き、高級レストランが好き、など広がりが出てきます。

こうした、商品そのものではない周辺の領域の切り口から考えてみる、というのが一つのアプローチです。その際、旅行好きだから旅行系メディアに広告を出そう、で終わらせないのがポイントです。メディア選定だけでなく、きちんと広告クリエーティブやクリックした先のLPにも「旅行の切り口でクレジットカードがいかに役に立つかというコンテンツを配置する」ことで、より態度変容効果を高めることができます。

ここまで見てきたように、単なる認知獲得でも刈り取りでもない、その中間にいる人たちをターゲットにした戦略をきちんと設計することが、態度変容によって新たな商品の需要をつくり出すためには必要になってきます。そして、この需要創造に最も向いているのは、旅行好きの人や高級レストラン好きの人それぞれに合った切り口で訴求できるデジタルだ、ということになります。

マス・デジタル統合の今後

デジタルメディアがテレビなどと並列にメディアの一つとして扱われていた時代を「なんとなくデジタル」の時代と呼ぶとすれば、新たな需要創造のためにターゲット、メディア、メッセージ、KPIといったさまざまな要素を設計できるソリューションとしてデジタルメディアが使われる時代を「デジタルファースト」の時代と呼べるでしょう。

そして、現状ではデジタル化しているのはウェブ広告だけですが、デジタル化は今後他のメディアや広告でも進展していきます。放送と通信の融合というのは言われ続けていますし、実際にNetflixやhuluなどVODサービスの登場によってテレビコンテンツが通信に乗るようになってきています。あるいは、デジタルサイネージなどOOHのデジタル化などもその例として挙げることができます。

こうしたデジタル化の波に取り残されないように、本質的なソリューションとしてのデジタルの方法論について、さらに磨いていきたいと思っています。


電通流デジタルマーケティング』は下記の日程で6回の講義を予定しています。下記の収録当日は生放送で無料ですのでお見逃しなく。

1限目:デジタルマーケティングのはじめ方:谷澤正文
5月27日(金)実施済み、録画講義公開中

 2限目:デジタルマーケティングのためのコンテンツマーケティング:郡司晶子
6月24日(金)実施済み、録画講義公開中

3限目:テクノロジーに挫折しないためのデジタル広告講座:近藤康一朗
7月22日(金)実施済み、録画講義公開中

4限目:マス広告×デジタル広告の統合:三谷壮平
8月26日(金)実施済み、録画講義公開中

5限目:顧客体験を事業成長につなぐマーケティングシステム:八木克全
9月23日(金)19:15〜

6限目:デジタルで、イノベーション発想を豊かにする:谷澤正文
10月28日(金)19:15〜


次回は9月23日(金)、電通デジタルの八木克全による「顧客体験を事業成長につなぐマーケティングシステム」です。ぜひご覧ください。

プロフィール

  • Mitani
    三谷 壮平
    株式会社電通

    2010年電通入社。入社以来一貫してデジタルマーケティングのROI改善業務に取り組み、通販型生命保険、美容エステといったゴリゴリのダイレクト案件から、大手家電メーカーなどのブランディング案件まで担当。特にアドテクを活用した運用基盤の構築や、効果測定モデルの設計に強みを持ち、現在は大手ナショナルクライアントのマーケティングのデジタル化をリードしている。
    株式会社電通デジタル出向。

バックナンバー

関連記事

続きを見る
ページ先頭へ