待っていても、はじまらない。―潔く前に進め #05

全部無駄にならないと若手は信じていい。

  • Abe kotaro pr
    阿部 広太郎
    株式会社電通 第2CRプランニング局/ビジネス・クリエーション・センター ビジネスデザイン室 コピーライター
「『頭の中は居心地いいからな』って、大学の先生に言われたことがあるんです。『頭は居心地いいにきまってるよ。頭の中なんだから。かたちにするのが難しいんだよ、お前。なに頭の中にとっておいてるんだよ』って。」

いきなりすみません。これを読んでドキッとしませんでしたか? 僕はしました。頭で思い付いていても、かたちにすることを尻込みしてしまう自分を言い当たられたようで。そんな言葉を教えてくれたのが芸人の芦沢ムネトさんです。

(左から)芸人の芦沢ムネトさん、著者・阿部広太郎
 

芦沢さんは、お笑いユニット「パップコーン」のリーダーとして活躍する傍ら、2011年末からTwitterで掲載した癒やし系キャラクター「フテネコ」がたちまちリツイートされ続け話題を呼んでいます。そして、中高生から絶大な人気を誇るラジオ番組「SCHOOL OF LOCK!」の教頭でもあります。芦沢さんとの対談から見えてきた潔く前に進むための3カ条はこちらです。

※書籍『待っていても、はじまらない。―潔く前に進め』第5章「つながる姿勢×芸人 芦沢ムネト」をもとに作成

 

全部無駄になっていないと信じる。

希望通りの就職活動ができなくて、学生時代に取り組んでいたことを社会で活かせそうにない。競合の仕事に全力で取り組んだけれど、負けてしまい新規の仕事につながらなかった。無駄だった、やらなければよかった、そう考えてしまうときもあると思います。しなしながら、本当にそれは全部無駄なのでしょうか?

芦沢さんの言葉を引用します。
「僕、いままでやってきたことが、全部無駄になってないんです。美大を目指したことで絵が描けるようになった。バンドをやっていた自分だから描ける絵がある。お笑いの設定をそこに活かすことができる。いろんなことに手を出してきたすべてが活きてるんです。」

芦沢さんは、中学の頃は音楽が好きでミュージシャンを目指そうとし、高校の頃はアニメが好きで「スタジオジブリ」に入りたいと考え、画を描き始め、美大に進学したら落研に誘われて、お笑いの世界に入っていくことに。好きというエネルギーがその時その時の自分を突き動かしてきたと話してくれました。

音楽、絵、お笑い…。芦沢さんが自分の「好き」に対して、貪欲に手を出してきたことで、その経験が未来への補助線となり、次々と導かれるように新たな可能性につながっていきました。

過去は無駄にならない。
正確には、無駄だと思えた過去も、自分次第で変えられる。

そこにこそ、これまで見えなかった自分のオリジナリティーや、自分らしさというものが存在しているのだと思います。自分のこれまでの経験を、今取り組んでいる仕事に活かせないかなと考えてみることで、違う未来が広がるかもしれません。

 

自分に最適なメディアを考える。

芦沢さんが描くキャラクター「フテネコ」。Twitterにアップしてから瞬く間にリツイートされ、広がっていきました。それも、漠然と発信していたわけではありません。あえてフテネコにマニアックなギターを持たせるなど、友達のミュージシャンが喜んでくれることや、見つけたらうれしいネタを描くことで、誰を中心に拡散していくかということを意識していたそうです。

芦沢さんが描くキャラクター「フテネコ」
 

新たなつながりをつくる上でも、自分の知ってほしいことを届けるためにも、発信することはとても大切です。いまはテレビや新聞などのマスメディアに頼らなくとも、SNSがあれば誰でも発信することができます。とはいえ、自分の「何を」発信できるかだけでなく、「どこで」発信するのかを考えるのも重要な視点だと思います。

僕の場合、それは「トークイベント」という場でした。2012年、東京の下北沢に、ビールを片手にイベントが楽しめる本屋B&Bができてから、トークイベントを開催することがぐっと身近になりました。

2013年、「コピーライターのラブレター講座」というイベントで初めてB&Bに登壇。準備する時間も含めて、その時間はとても充実したものになりました。新入社員として配属された人事時代に、たくさんの人と接しながら講演会を実施してきたこと。そして現在、日々クライアントにプレゼンテーションをしていること。その道を歩んできた自分だからこそ伝えられるテーマを見いだし、その場にいる皆さんと会話を展開していくトークイベントは、僕にとって「自分らしさを伝える場」に最適なのだと気付きました。

今、Twitter、Facebook、InstagramなどSNSがあふれています。これからも続々と新たなメディアが登場してくるでしょう。全てをあまねく使っていくという考え方ではなく、自分に最適なメディアが何かをまず考えることで、自分を伝える戦略も変わってくるのではないかと思います。

 

思ったよりも向こうの土俵にいく。

知り合いたい人に出会えたとき、どのように関係を深めていけばよいのか? これは仕事でも、プライベートでも、誰もが一度は悩むことだと思います。僕自身も、人事時代に人との関係性のつくり方に悩み、真剣に考えたことがありました。その結果、僕なりに結論を出した、つながる姿勢のキーワードは、「素直」「貪欲」「誠実」でした。

まずは、素直であること。さまざまな出会いの中で、当然うらやましくなるような仕事をしている方に出会うこともあります。大切なのは、その時に何を思うか。いいと感じたものに、嫉妬で耳をふさぐのではなく、いいものはいいと素直に認めること。そしてスポンジのような吸収率で取り込み、すぐにでも自分の血肉にしてしまうこと。

次に、貪欲であること。チャンスを貪欲につかみ取りにいく。本当にすごいと思える越えたい背中が見えたなら、近くで観察した方がいい。当たり前の話ですが、すごい人たちは、向こうから会いには来てくれません。だからこそ、会いに行ったり、手紙を書いたり、出会いを一つも無駄にしないつもりで貪欲にいくべきです。

そして、誠実であること。違う立場の人に心を開いてもらうには、何よりも誠実に向き合うしかありません。時には年齢を忘れるくらいに。誰に対してもへりくだるべきということではなく、誠実でいることで、相手もたくさんのことを教えてくれると思うのです。

多くの人とつながり、仕事を生み出してきた芦沢さんは、ラジオの仕事の経験から、「つながり方」について、このように話してくださいました。

「ラジオをやっていて気付いたのは、誰よりも緊張しているのは相手だということです。僕も緊張しますけど、向こうはそれ以上に緊張している。こっちから『大丈夫ですよーいつでもどうぞー!』とか、『僕のうちに遊びにきたみたいな感じで!』とか。『失敗最高なんでお願いします』とか言うんです。その一言で雰囲気ががらりと変わりますね」

つまり自分から空気をつくる。相手に委ねるのではなく、思ったよりも向こうの土俵にいき、そこで温かい空気をつくっていく。そしてその時に大切なのは敬意を持つこと。土足で踏み込まれてくることを喜ぶ人はいないでしょう。敬意を持ちながら、自分が良いと思うこと、面白いと思うことを、臆せずに相手に伝えていくこと。僕自身も今日から意識して相手と向き合ってみようと芦沢さんとの話を通じて思いました。

いかがでしたでしょうか? 芦沢さんから教わったことがたくさんありました。自分の「好き」に貪欲に取り組んできたことは、全部無駄にならず、未来につながるということ。自分に最適なメディアを考えてみることで、伝え方が変わること。そして、敬意を持ちながら向こうの土俵にいくことで、関係性が育まれていくということ。仕事でも、プライベートでも活かせることがあるのではないでしょうか。

芦沢さんご本人の言葉による思いは、ぜひ著書『待っていても、はじまらない。-潔く前に進め』(弘文堂)で感じてもらえたらと思います。10月9日には、本書「待っていても、はじまらない」の刊行記念イベント「全部無駄にならない働き方」(リンク)を芦沢ムネトさんと青山ブックセンター表参道店で行います。ピンときた方はぜひお越しください。

次回は、社会学者の古市憲寿さんとの対談から見えてきた潔く前に進むための3カ条です。

 

プロフィール

  • Abe kotaro pr
    阿部 広太郎
    株式会社電通 第2CRプランニング局/ビジネス・クリエーション・センター ビジネスデザイン室 コピーライター

    1986年生まれ。2008年、電通入社。人事局に配属。クリエーティブ試験に合格し、入社2年目からコピーライターに。「世の中に一体感をつくる」という信念のもと、言葉を企画し、コピーを書き、人に会い、つなぎ、仕事をつくる。「言葉の人」であり、「行動の人」であるために、「待っていても、はじまらない」の姿勢で活動中。東京コピーライターズクラブ会員、30オトコを応援するプロジェクトチーム「THINK30」所属。世の中に企画する人を増やすべく、2015年から、BUKATSUDO講座「企画でメシを食っていく」を立ち上げる。NAVERまとめ編集コンペ奨励賞、ツイッター小説大賞 審査員特別賞など受賞。著書に『待っていても、はじまらない。-潔く前に進め』(弘文堂)。

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