Dentsu Design Talk #91

「オヤジフェス2016!」旧は新を兼ねる。オヤジは若さの進化形。(後編)

  • Takashi yamamoto
    山本 高史
    株式会社コトバ クリエーティブディレクター/コピーライター、関西大学社会学部教授
  • Hidaka eiki pr
    日高 英輝
    グリッツデザイン アートディレクター/クリエーティブディレクター
  • Mishimi kunihiko pr
    三島 邦彦
    株式会社電通 コピーライター

今回の電通デザイントークは、コトバの山本高史さんの最新刊『広告をナメたらアカンよ。』を読んだ有志の熱き思いから企画しました。広告界では常に「新しく、若い才能」が求められている一方で、広告ビジネスが複雑化し、コンサルタントやパートナーとしての成熟した視点も求められています。そんな状況の中、自分なりの仕事の見つけ方、戦い方をどう形づくっていけばいいのか?「オヤジ世代の“側に合わせる”のはナンセンスだけどさ…」とつぶやく山本さんと、オヤジ仲間で、のみ仲間でもあるグリッツデザインの日高英輝さん、山本さんが指名したワカモノ代表の電通の三島邦彦さんが語り合う座談会の後編です。

(左より)山本氏、日高氏、三島氏
 

尊敬できるオヤジの存在

山本:オヤジになったから失敗がなくなるということはなくて、今でも本当に嫌になるほど恥ずかしい失敗もある。ただ失敗を乗り越えていくことで、自分が少しでもマシになっていくという望みだけは持ち続けてきました。

このことに気付かせてくれたのも“大オヤジ”の存在でした。日高くんにしてみれば宮田さん、僕にしてみれば大島さんです。大島さんからは「面白いけど、おまえには愛が足りない」とよく言われました。その言葉の意味を僕なりに翻訳すると、商品や企業のことをよく理解して自分の考えを持った先に表現があり、それを世の中に送り出そうとする熱意があるべきではないかという意味だと思っています。今でも一緒に仕事をすると、気付かされることが多い。そういうオヤジがいてくれて本当によかったと思います。

日高:宮田さんはブランディングという言葉がない時代から、社会の中での企業のポジションを考えて、広告をつくる方法を模索していました。クライアントから新聞広告の制作を依頼されたにもかかわらず、「社史を作りましょう」という提案をする。そんなふうだから競合プレゼンには勝てません。

ところがある時、「あなたが言っていることは正しい、自分が上に通す」と宮田さんにほれ込むクライアントが出てくるのです。そういう仕事はクライアントとの関係が強固で、長続きします。宮田さんの仕事の方法を間近で見てきたことが、自分の血肉になっています。

山本:三島くん、尊敬できるオヤジを挙げてください。

三島:山本高史さんは置いておいて(笑)。

山本:はい、置いてください(笑)。

三島:尊敬できるオヤジは今、一緒に仕事をしている磯島拓矢さんです。こんなにクライアントのあるべき姿を考え抜いてコピーを書く人がいるのかと驚きました。

山本:僕は一度、磯島くんを取材したことがあるのだけど、その時に彼は「コピーはクライアントの代筆」だと言っていました。コピーはクライアントのために書くものですが、「代筆」という言葉を使った人は初めてで潔さを感じましたね。

 

オヤジは時代の変化にどう対応したらいい?

山本:今、広告やメディアは何十年と続いてきたスキームが変化してしまうほどの、激動の時代を迎えています。オヤジはその変化にどう向き合えばいいのでしょうか。

日高:仕事の有りようがドラスティックに変りましたね。この数十年で写植屋さんのように、仕事そのものがなくなってしまう状況も生れました。そのうち「カッコいい」と入力すれば、デザインが出てくるような時代が到来するかもしれない。
そんな時代だからこそ、自分の得意分野を精鋭化しなければいけないと思っています。

山本:僕は35歳の時に仲畑さんから「高史はまだバリューが足りない」と言われました。驚いて、すがるような気持ちでどうすればいいのか尋ねると、「考えるフォームや」と言う。尊敬すべきオヤジは、全部を語ってくれません。

僕らの広告という仕事は何一つ同じケースが存在せず、100万ある「例外」に対応することが求められるわけです。ただそれは難しいため、素振りをして基礎体力を養い、フォームをつくって、飛んできた球に応じて少しずつ工夫をしろ、ということなのだと理解しました。

どんな仕事をしている人も自分のフォームをつくるといいと思います。自分のフォームがあれば、どんなに状況が変わっても、鍛え直したり、身をかがめたりしながら、時代に合わせていけます。それが変化に向き合う、正しい態度なのではないかと思います。

三島:プレゼンで偶然、相手の人がうまく納得してくれた時に、なぜそうなったのか繰り返し考えていると、いつかフォームが身につくのでしょうか。

日高:フォームは目指すものではなくて、自然と完成していくものですからね。年を取っていくと、自分の仕事がどんどん先鋭化されてシンプルになっていきます。

山本:そう、自分に何ができて、何ができないのか、冷静に分かるようになる。

日高:コピーは積み重ねた年齢がダイレクトに反映するため、年齢を重ねる方がどんどんいいものが書けるようになるかもしれない。ただデザインはセンスや時代性が求められ、年を取ると表現の感覚がずれていく可能性がある。そこで、どれだけ別の手段で感覚を埋めていけられるのかも考えますね。

 

オヤジの存在意義はどこにある?

山本:三島くんは、どういうオヤジになりたい?

三島:困っている人を助けられるオヤジになりたいです。そのためには“困っている”という現象について理解しないといけない。ですから僕は、人よりもたくさん困りながら、困るとはどういうことなのか経験していきたいです。

山本:その人はすごく強い人だよね。
日高くんは後輩にどのように接していこうと思っていますか?

日高:宮田さんから学んだ、デザインは外を化粧することではなく、どういう考えで何を伝えていくかである、ということを言い続けています。なかなか簡単には伝わりませんね。

山本:今日は三島くんの率直な言葉に感銘を受けて、自分も困っている人のために役に立つオヤジになりたいなと思いました。

オヤジには責任があると思うのです。大島さんや宮田さん、磯島くんみたいにカッコいいオヤジがいるのであれば、少しぐらい、しんどい思いをして経験を積むのも悪くないなと若い人に思わせないといけない。それが僕らオヤジの責任なのではないかなと思います。

 

<了>
こちらアドタイでも対談を読めます!
企画プロデュース:電通ライブ クリエーティブユニット第2クリエーティブルーム 金原亜紀

 

プロフィール

  • Takashi yamamoto
    山本 高史
    株式会社コトバ クリエーティブディレクター/コピーライター、関西大学社会学部教授

    1985年大阪大学文学部卒。同年電通に入社。コピーライターとして活躍し、数多くのキャンペーン広告を手がける。
    2006年に電通を退社、(株)コトバ設立。
    これまでに、トヨタ自動車 カローラ、サントリー天然水、オリンパス企業広告、キユーピー「具のソース」など数多くのキャンペーン広告を手がける。TCC最高賞、クリエイター・オブ・ザ・イヤー特別賞など多数受賞。
    著書に「案本」(インプレスジャパン)、「伝える本。」(ダイヤモンド社)、震災をテーマにした医師・鎌田實氏との対談本「ここから。」(KKベストセラーズ)などがある。2013年3月には「ありがとう大賞」を受賞した小説「リトル」を刊行。

  • Hidaka eiki pr
    日高 英輝
    グリッツデザイン アートディレクター/クリエーティブディレクター

    1962年宮崎県生まれ。株式会社ドラフトを経て、2001年グリッツデザイン設立。グラフィックデザインをベースに広告、グラフィック、パッケージ、映像、ウェブなど、さまざまな領域で活動中。主な仕事に、LEXUS 、UNIQLO、au、 JR東海、サントリー「天然水」、宮崎県プロモーションなど。主な受賞に、日本グラフィックデザイナー協会新人賞、日経広告賞グランプリ、ニューヨークADC銀賞、JR東日本ポスターグランプリ金賞、世界ポスタートリエンナーレトヤマ銅賞、グッドデザイン賞など多数。

  • Mishimi kunihiko pr
    三島 邦彦
    株式会社電通 コピーライター

    長崎県長崎市生まれ。朝日広告賞、ラジオ広告電通賞、ACC賞、交通広告グランプリ、FCC賞、OCC賞など。

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