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広告コミュニケーション戦略を変える「コネクテッドTV」No.3

もはやPC超え!TVerの「コネクテッドTV」利用について取締役に聞いてみた

2022/06/14

近年急速に普及が進んでいる、インターネットに結線されたテレビ受像機「コネクテッドTV」。
本連載では、その利用実態や広告に与える効果に関する独自調査の結果を交えながら、企業や放送局が今後コネクテッドTVをどのように捉え、付き合っていけばよいのかを考察していきます。

第1回では、従来のテレビ放送とは異なる「動画配信サービスの視聴スタイル」などについて紹介。第2回ではコネクテッドTVの利用者分析や、マーケティング利活用における課題についてお伝えしました。

今回のテーマは、プラットフォーマーの目線から見た、コネクテッドTVについて。TVer(ティーバー)の須賀久彌(ひさや)取締役をお招きし、同社のコネクテッドTVにおけるコンテンツの視聴実態や今後のプラットフォーム戦略について、電通ラジオテレビビジネスプロデュース局・データ推進部の松友隆幸がお話をうかがいました。

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<目次>
TVerにおける視聴デバイスシェアはPC超えの約25%に到達!

“視聴時間の長さ”と“完視聴率の高さ”がコネクテッドTV視聴時の特徴

「ファーストパーティーデータ」の活用がカギに!! TVerのプラットフォーム戦略とは

プラットフォーマーにとっても注力分野!データを活用したコミュニケーションの拡大

TVerにおける視聴デバイスシェアはPC超えの約25%に到達!

松友:本日はよろしくお願いいたします。まずはTVerのご紹介をお願いします。

須賀:TVerは2015年に始まった民放公式の無料動画配信サービスです。

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須賀:毎週約500 番組の見逃し配信のほか、過去のコンテンツの配信、リアルタイム配信(地上波の同時配信)やライブ配信も実施しています。全デバイスでのアプリの総ダウンロード数は約4500万を超えており、月間のユニークブラウザ数は1800万を超えています。

松友:どういったデバイスで視聴できるのでしょうか?

須賀:当初はPC、スマートフォン(以降SP)、タブレットで始まったサービスですが、2019年4月からはコネクテッドTVでも視聴可能になっています。

松友:コネクテッドTVで視聴されている割合はどの程度ですか? 

須賀:2022年3月時点でデバイスシェアは約25%に到達し、すでにPCの再生数を上回りました。再生数ベースでは、ここ2年でTVer全体は2.9倍の伸びでしたが、コネクテッドTVに関しては8.3倍に伸長しています。コネクテッドTVの普及もさることながら、コロナ禍で在宅率が上がったことで、テレビ受像機での視聴機会が増えたことも大きな要因だと思います。

コネクテッドTV#03_画像01

松友:すでにPCのシェアを上回っているというのは驚きですね。他の無料動画配信サービスと比較しても、コネクテッドTV比率が高いように感じますが、もともとがテレビ由来のコンテンツを配信していることによるテレビ受像機との相性の良さがあるのでしょうか?

須賀:はい、その影響はあると思います。コネクテッドTVで視聴する場合も、本放送を見ているような感覚でコンテンツやCMを違和感なく受け入れられるのかなと。何よりこの1年で対応デバイスが着々と増えているのが大きな要因です。最近では、テレビメーカーの方から「TVerを自社製品に搭載したい」、「パッケージ化されていることを明記したい」などのお声掛けをいただく機会も増えていて、市場が盛り上がっていると感じています。

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“視聴時間の長さ”と“完視聴率の高さ”がコネクテッドTV視聴時の特徴

松友:ここからはより詳細な視聴実態についてうかがいます。まず、TVerユーザーの年齢構成にはどういった特徴がありますか?

須賀:いずれのデバイスにおいても、地上波放送と比較した時にMF1・2層が多いですね。中でも、コネクテッドTV利用者はよりその傾向が強く、比較的年齢の若い方に見られています。

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松友:デバイスによって見られているコンテンツに違いはありますか?

須賀:いずれのデバイスでもドラマがよく見られています。ただし、コネクテッドTVではバラエティ番組が比較的上位にランクインする傾向があります。また最近では、経済番組がビジネスパーソンを中心に好評で、ユーザー層の幅も広がっていると感じています。

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松友:SPやPCの利用者と比較した際の視聴スタイルについて、特徴的な違いはありますか?

須賀:まず、視聴時間に差があります。TVerはいずれのデバイスでも視聴時間が長いのが特徴ですが、SPでは1話あたりの再生分数が約22分に対して、コネクテッドTVでは約29分と、より長い傾向が見られます。また、1端末の平均再生分数も、SPが1クール(3カ月)あたり約9時間38分に対して、コネクテッドTVでは約10時間15分と、同様に長くなっています。

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松友:第1回の記事でご紹介したわれわれの調査とも合致する傾向ですね。同じ動画配信サービスでもPC、SPと比較すると、コネクテッドTVの視聴時間の方が長いという結果が見られていました。

須賀:もう一つの特徴は、コンテンツの完視聴率の高さです。TVerはいずれのデバイスにおいてもコンテンツの完視聴率が60%以上と高いのですが、中でもコネクテッドTVでは71.8%と、特に高くなる傾向があります。CMの完視聴率も約96%の高水準に至っています。

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松友:長尺もののコンテンツがメインにもかかわらず完視聴率が高いのはすごいですね。Amazonプライム・ビデオやNetflixに近い視聴のされ方をしているように思います。CMの完視聴率については、過去、われわれもSTADIA(※1)で地上波CMの完視聴率を分析したことがあるのですが、それとほぼ同等のスコアですね。

須賀: TVerの配信はもともとがテレビ由来のコンテンツであり、CMが入ることを前提とした作りになっているため、生活者もスキップなどができないものとして受け入れていただいているのだと思います。

松友:なるほど。電通の独自調査(※2)でもTVerは広告へのネガティブな反応が少ないという結果が出ていたのですが、そういった背景によるものかもしれませんね。視聴時間帯については、何か特徴がありますか?

須賀:デバイスによって視聴タイミングが異なる傾向が見られます。SPでは平日・土日問わず夜間の視聴が多いのに対して、コネクテッドTVでは平日は朝と夜、土日は一日通して視聴が多い傾向が見られます。

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松友:デバイスで傾向が異なるのは面白いですね。コネクテッドTVは世帯視聴という特徴があるため、家族がリビングに集まる時間に視聴されていて、SPは個人視聴が多いため夜に自室で視聴する傾向が強いということかと思いました。電通の独自調査でも視聴場所について調査したことがあるのですが、動画配信サービスはいずれもSPで視聴する場合は自室利用が多く、TVerに対する回答でも自室利用が最も高い53.1%の結果でした。

※1 = STADIA
テレビをはじめとする“オフライン”メディアと、SPやPC上の“オンライン”メディアのデータを統合し、より効果的なマーケティングを実現させるオン・オフ統合ソリューション。
※2 = 電通の独自調査
「コネクテッドTV利用実態調査」調査対象:男女15~69歳、調査サンプル数:2,400サンプル、調査実施機関 :株式会社ビデオリサーチ、調査時期:2021年8月

 

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「ファーストパーティーデータ」の活用がカギに!! TVerのプラットフォーム戦略とは

松友:最後に、今後のTVerのコネクテッドTVにおける展望を聞かせていただけますか。

須賀:TVerをテレビ受像機でも視聴できる状況は、ユーザーからも喜ばれることだと思っています。今後はコネクテッドTVで視聴する際の利便性を上げて、これまで以上にコネクテッドTVでの利用を増やしていきたいですね。また、結果としてコネクテッドTVでの広告在庫が増加するので、広告主となる企業にとってはコネクテッドTVでのコミュニケーション機会増加につながると考えています。

松友:今、広告配信は、個人情報保護の観点からサードパーティークッキーやIDFA(※3)の活用が難しくなってきていると思います。そのような中で、TVerとしてはどのような取り組みをされていますか。

※3 = IDFA
iOS端末の広告識別子

 

須賀:TVerでは、ユーザーに生年月や性別、郵便番号、興味関心などのアンケートを取っています。これらファーストパーティーデータ(※4)を活用することでサードパーティークッキーやIDFAに依存しない形式での高精度なターゲティングを実現しています。

※4 = ファーストパーティーデータ
企業が自社のお客さまなどに関して独自に収集し保有しているデータのこと
 

コネクテッドTV#3_図版08

松友:プラットフォーマーにとってはファーストパーティーデータをいかに保有するかがカギになると思うので、そういった取り組みは有用ですね。

須賀:加えて、2022年4月1日からTVerユーザーをいわゆる“OneID”で管理する「TVer ID」という取り組みを新たに始めました。狙いの一つはユーザーの利便性向上です。PC、SP、タブレット、コネクテッドTVのデバイス横断で、お気に入りや再生停止した位置を共有できるようにして、「いつでも・どこででも」を実現しようとしています。
もう一つは、企業のマーケティング利活用に資するデータの提供です。外部サービスとの連携によりファーストパーティーデータのリッチ化を進めてターゲティング精度を向上させ、デバイス横断での広告最適化やリポーティング機能の強化を図っていく予定です。もちろん、ユーザーには明示的にプライバシーポリシーを提示し、同意を得た上で進めていきます。

松友:ユーザー・企業の双方にとってのメリットを創出しながら、デバイス横断でのコミュニケーションを実現していく、ということですね。「TVer ID」は重要な施策となりそうですね。

プラットフォーマーにとっても注力分野!データを活用したコミュニケーションの拡大

今回は、プラットフォーマーであるTVerの目線でのコネクテッドTVの現状や取り組みについて聞いてきました。

TVerでは、コネクテッドTVでの視聴がすでにPCを上回っているなどの状況から、プラットフォーマーにとっても注力分野として捉えられていることがうかがえました。コネクテッドTV利用者はMF1・2層が多く、視聴コンテンツや時間帯もPC、SPとは異なる傾向が見られることが分かりました。“視聴時間の長さ”と“完視聴率の高さ”はコネクテッドTV視聴ならではの特徴であり、これはわれわれのこれまでの調査・分析とも合致する傾向でした。

また、今後の戦略としては、ユーザーの利便性を高めることを第一に考えながらも、ファーストパーティーデータの拡充や、OneIDによるユーザー管理など、データを活用したマーケティングを見据えて取り組み始めていることが分かり、今後、コネクテッドTVでのコミュニケーション活動が広がる可能性を感じました。

次回はコネクテッドTVにおける広告配信の効果について、実際のキャンペーンでの調査結果を基にお伝えします。

【お問い合わせ先】
電通 ラジオテレビビジネスプロデュース局
データ推進部 朴、松友
Email:connectedtv@dentsu.co.jp
 

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