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広告コミュニケーション戦略を変える「コネクテッドTV」No.2

コネクテッドTV利用者像とこれからの利活用の課題とは

2022/03/25

近年急速に普及が進んでいる「コネクテッドTV」。本連載では、その利用実態や広告に与える効果に関する独自調査の結果を交えながら、企業や放送局が今後「コネクテッドTV」をどのように捉え、付き合っていけばよいのかを考察していきます。

前回記事では、従来のテレビ放送の視聴時とは異なる動画配信サービスの視聴スタイルの特徴などについてお伝えしました。

第2回は、コネクテッドTV利用者の特徴やユーザー像について、電通グループ独自のソリューションを活用した分析結果を、電通ラジオテレビビジネスプロデュース局・データ推進部の松友隆幸がご紹介します。また、今後ますますニーズが高まると思われるコネクテッドTVのマーケティングでの利活用における課題についても触れていきたいと思います。

コネクテッドTV#2_画像
※イメージ図

コネクテッドTV利用者ってどんな人?

1月から2月にかけて TBSテレビのご協力の下、コネクテッドTVで利用が可能な民放公式テレビポータル「TVer(ティーバー)」(※1)のテレビアプリを利用している人について分析を行いました。

※1 = TVer(ティーバー)
民放各局が制作した安心・安全なコンテンツを完全無料で視聴できる民放公式の無料動画配信サービス。パソコン、スマートフォン・タブレット、テレビアプリで毎週約400 番組を放送終了後に無料で視聴ができるほか、過去に放送された人気コンテンツの配信やスポーツ等のライブ配信も多数実施しています。

 

TVerでは生年月・性別・郵便番号の3属性をアンケートで取得しているため、利用者の性年代構成は放送局が把握できる環境にあります。分析対象期間のTVerテレビアプリ利用者の性年代構成を見ますと、F1・F2やM2がボリュームゾーンであることが分かります。地上波の視聴者に比べて、若年層が多いのがTVerテレビアプリの特徴と言えそうです。

コネクテッドTV#2_図版02

その中で、放送局では性年代以外の「より詳細なユーザー像を掴みたい」(株式会社TBSテレビ総合編成本部DXビジネス局DX営業部・藤原倫太郎氏)と考えられていました。そこで、今回電通グループ独自のデータ基盤である「People Driven DMPⓇ」(※2)の各種データを活用することで、TVerテレビアプリ利用者の詳細なユーザー分析を行いました。

※2 = People Driven DMP®
PC やスマートフォン由来のオーディエンスデータと、テレビの視聴ログデータ(STADIA)、ウェブ広告接触データ、OOH 広告接触データ、ラジオ聴取ログ、パネルデータ、購買データ、位置情報データなどを人(People)基点で活用することができる、People Driven Marketing のデータ基盤。なお、People Driven DMP®では、個人情報の保護に関する法律に定める個人情報は扱っておりません。

 

まず職業と世帯年収から見ていきましょう。職業は、給料事務・労務、主婦、学生の割合が高く、世帯年収は全体に比べるとやや高い傾向が見られました。

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続いて興味関心ジャンルです。調査パネル全体との差分が大きい項目のランキングを見てみますと、1位がテレビ番組、2位が映画となっています。また、有料放送もランクインしており、映像コンテンツへの興味関心の高さが見られました。

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また、購買傾向についても分析しました。購買データを基にジャンル別の支出金額を見てみると、衣服・ファッションや美容などにお金を多く掛ける人たちであると分かります。

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ここまでの分析からTVerテレビアプリの利用者は、世帯年収が比較的高い若年層で、映像コンテンツに興味関心があり、ファッションや美容にお金を掛ける人たちであることが見えてきました。

コネクテッドTV利用者をプロファイリングでさらに深掘り!

さらに詳細なユーザー像を掴むため、「People Driven DMPⓇ」内の約2万3千項目という膨大な調査結果を、「有意差検定」という手法を用いて統計分析にかけることで、価値観やメディア接触、興味関心、商品関与など、さまざまな角度からユーザーの特徴をプロファイリングしました。

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ここから見えた特徴として挙げられるのは、まず料理教室や英会話教室の利用意向や、ボディケアや健康な体作りの意識など、“自分磨き”志向の高さです。

また、成果主義・能力主義でキャリアアップしたいなど仕事に対する意識が高い一方、プライベートでの家族や友人との付き合いも大事にするなど、仕事もプライベートも両立させたいアクティブな人々という傾向が見られました。

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加えて、国内株式などのさまざまな金融資産を保有し、資産運用にも積極的な一面も見られます。これは、前の章で傾向として表れていた世帯年収の高さにも起因するものと考えられます。

そして、やはりTVerテレビアプリを利用している人ということもあって、テレビ視聴時間や録画再生頻度が高く、好きな番組ジャンルも多岐に渡るなどテレビ関心の高さがうかがえました。

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コネクテッドTVの利活用で解決すべき2つの課題

さて、ここまではコネクテッドTV利用者の分析結果をお伝えしましたが、ここからはコネクテッドTVをマーケティング活用していく上で重要となってくる広告効果の評価について触れていきたいと思います。

電通で開発したコネクテッドTVの広告効果調査スキーム(リリースはこちら)では、TVerテレビアプリでの広告接触者にアンケートをかけて、広告・ブランド認知や態度変容効果を測定することができます。この取り組みは、当初TBSテレビに対してのみでしたが、現在は民放キー5局での実施が可能な環境が整いました。

ここでコネクテッドTVの広告効果調査において、広告主となる企業からよく頂くご要望であり、我々も取り組むべき課題と考えているポイントを2つご紹介いたします。

1. 複数メディア間で正しく広告効果評価ができる調査スキームの確立

例えば、ある広告キャンペーンで地上波テレビCMとTVerやYouTubeといった複数メディアを展開していて、その広告効果を評価する場合、今までは、異なる調査パネル間での調査結果を疑似的に掛け合わせるなどして比較せざるを得ませんでした。この場合、調査パネルの特性や条件の違いから正しい比較ができず、メディア間の重複関係も明らかにできないという問題が生じてしまいます。各々の広告効果を正しく評価するためには、単一パネルでの調査手法を確立する必要があります。

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2. 通常キャンペーンの出稿規模での調査の実現

接触ログを活用した調査の場合、調査パネルの出現率などの関係で十分な調査サンプル数を確保するために多くの出稿量が必要になるケースがあります。 “調査のための広告出稿”となると本末転倒になるため、通常キャンペーンの規模でPDCAを回せるような調査手法を確立する必要があります。

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これらの課題を解決すべく、現在我々は動画プラットフォーマー各社とも連携も図り、新たな広告効果調査スキームの開発に取り組んでいます。

コネクテッドTV領域でのマーケティング活動に向けて

今回はコネクテッドTV利用者の分析とマーケティング利活用に向けた課題についてご紹介しました。

コネクテッドTV領域はまだ市場ができて間もないこともあり、明らかにされていないことがたくさんある状況です。各種データを活用・分析し、これまで曖昧であったものを可視化することで、今後のマーケティング利用に向けたヒントが得られるのではないかと考えています。

今回のTVerテレビアプリ利用者の分析を受けて、「データを基に詳細なユーザー像が見えてきたことは大変意義があると感じています」というお話と共に「若者のテレビ離れが叫ばれる中で、コンテンツに興味を持っていただき、いかに視聴機会を設けられるかが重要であると感じています。今後もTBSテレビでは生活者へ向けた視聴環境を設計、改善しながら、広告主となる企業のマーケティングに対して貢献していきたい」(前出・TBSテレビ藤原氏)という、コネクテッドTV領域における放送局の前向きな姿勢もうかがい知ることができました。

また、コネクテッドTVの利活用においては、複数メディア間で正しく広告効果評価ができ、かつ、通常キャンペーンにてPDCAを回せるような調査スキームを整えることが喫緊の課題となっています。これら課題にも対応しながら、今後ますます拡大するコネクテッドTVのマーケティング利活用に向けて、業界全体で取り組んでいく必要がありますし、我々も情報発信を続けていければと考えています。

【お問い合わせ先】
電通 ラジオテレビビジネスプロデュース局
データ推進部 朴、松友
Email:connectedtv@dentsu.co.jp

 

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