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電通グループが描く72の未来 「未来曼荼羅」No.1

電通未来曼荼羅の使い方~未来に向けた対話のために

2025/06/06

国内電通グループが2010年に提供を開始した「電通未来曼荼羅」。その最新版となる「電通未来曼荼羅2025」が2月に発表されました。

未来曼荼羅

本稿では、そもそも未来曼荼羅とは何か、そして未来曼荼羅をどのように活用すると良いかについて、電通未来曼荼羅2025の共同編集長を務める電通コンサルティングの山本創が解説します。

<目次>
グループの英知を結集!

大胆に!ポジティブに!を意識した「エディトリアルコード」

​​​​​​​▼電通未来曼荼羅は「単なる未来予測ツール」ではない

​​​​​​​▼未来曼荼羅の活用方法

​​​​​​​▼「未来曼荼羅2025」の注目テーマ

グループの英知を結集!

2035年までに起こり得るトレンドを一望できる「電通未来曼荼羅2025」。リニューアルを発表したリリース記事にはこんな解説があります。

「人口・世帯」「社会・経済」「科学・技術」「まち・自然」の4カテゴリー全72のトレンドテーマを網羅的に分類し、それぞれの概要とデータ、関連トピック、それらが未来にもたらす変化や重要になる視点をまとめています。

72のテーマは多岐にわたります。「人口減」といった一般的な切り口であっても、それが社会構造や町のつくり方、さらには企業のサービスのあり方にどんな影響があるかまで、あらゆる方向性へと議論を広げています。また、AIの進化や次世代携帯電話についてなど、今後を考えるうえで外してはいけないテクノロジーに関するトピックはもちろんのこと、ルッキズムやポップカルチャー、さらには格差社会の行く末や死との向き合い方まで、文字通りあまたのトピックを「網羅」しているのが特徴です。

そんな視野の広さを支えているのが、電通グループの6社(電通、電通デジタル、電通総研、電通東日本、電通マクロミルインサイト、電通コンサルティング)から集まった編集メンバーです。今回のリニューアルにあたって組成された未来曼荼羅チームは約30人強。これまでで最も大きな所帯となりました。

未来曼荼羅のテーマ選定は、チームメンバー内のブレインストーミングから始まります。それぞれに専門分野があり、かつ「世の中に対して思いを伝えたい」という気持ちにあふれたメンバー一人一人が、「2035年に向けてこんな動きが起こるのでは?すでに兆しが出てきているのでは?」という仮説を持ち寄り、白熱した議論を行います。もちろん「白熱した」とは言っても何か険悪なムードになるのではなく、「こんな見方もあるかもね!」「だったらこういう方向もあるかも?」とそれぞれの意見に乗っかることを基本にディスカッションが進行します。

複数回のブレストを繰り返した結果として最終的にまとまったのが、未来曼荼羅に収録されている72のテーマです(未来曼荼羅2024から72テーマ中27テーマが新テーマに。また、既存テーマの内容も大幅刷新)。

そして、さらに詳細なデータを集め、「こんなことも言えるのでは?」と大胆な仮説を提示し、一つ一つのテーマを磨き上げていきました。そんなプロセスを経て完成したのが、「電通未来曼荼羅2025」です。

表紙

大胆に!ポジティブに!を意識した「エディトリアルコード」

「大胆な仮説」と書きましたが、この「大胆」にも未来曼荼羅の秘密があります。

10年後という不確定要素の多い未来について考えるにあたって、編集チームは将来予測のデータや興味深いトピックを見ながら「もしかしたらこんな未来が来るかも?」「そのとき生活者はこんなことを考えるようになるかも?」と想像力を働かせます。

既知の情報で蓋然性(=確かにこうなりそう)を担保しつつ、そこに未来への読み解き(=こんなことが起こると社会がこう変わりそう)を加える。これが未来曼荼羅の基本的な編集プロセスです。

この考え方を言葉にしたのが、未来曼荼羅の「エディトリアルコード」です。未来曼荼羅の思想を編集チーム全体で意識するためだけでなく、未来曼荼羅がどんな思いで作られているのかをクライアントの皆さまとも共有するために、これまでの編集で培われてきた暗黙知を今年から文章化しました。

「エディトリアルコード」は以下の5つの項目から構成されています。どれも大事なポイントですが、特に意識しているのは「大胆さ」と「ネガティブをいかに乗り越えるか」。表面的な読み解きにとどまっていないか、社会を少しでも良くするための切り口探しをさぼっていないか、という点については完成までの過程でたびたび話し合われます。

エディトリアルコード

電通未来曼荼羅は「単なる未来予測ツール」ではない

ここで改めてお伝えしておきたいのが、未来曼荼羅とは「未来予測ツール」なのか?という点です。

クライアントの皆さまからは、「未来を予測したいのでこのツールを使いたい」とお声がけいただくことも多いです。

もちろん、未来曼荼羅に記載されている情報は確かなデータに基づいたものであり、次の10年の行く末について予測したものではあります。一方で、厳密には未来がどうなるかは不透明な部分も多く、書かれている内容がただ1つの絶対的な予測かというとそうとは言えない側面があるのも事実です。

では、未来曼荼羅とは何のために存在するのか。われわれは、未来曼荼羅を「共創型仮説量産ツール」として位置づけています。

この位置づけは、未来曼荼羅をどのような形でクライアントの皆さまにご提供しているかとも密接に関係しています。実は未来曼荼羅は通常の白書や調査レポートのように「1冊○円で販売する」といった形はとっていません。未来曼荼羅をご活用いただく際には、クライアントの皆さまと未来曼荼羅チームで一緒に未来曼荼羅を読んで、対話の時間をとりながら、未来についての仮説を作るプロセスを必ずセットにしています。

アプローチと期待効果

各ページの内容を見ながら、「こんなことが起こるなら、次の未来はこうなるのでは」「ここにはこういう読み解きがあるけど、自分は違う予測を立てる」といった議論を通じて、クライアントの皆さまにとっての未来に向けた仮説が生まれる。そしてその仮説には、未来曼荼羅の網羅的かつ大胆に編集された情報に触れたからこそ、今まで気がついていなかったビジネスチャンスのタネが盛り込まれている。

未来曼荼羅をご活用いただくことで目指しているのはこんな状況です。なお、実際のプロジェクトでは、ともにつくりあげた仮説をベースにさらなるリサーチや検証を行ったうえで、その内容を今後の事業戦略の立案や新規事業の開発などにつなげていきます。

未来曼荼羅の活用方法

未来について考えることはビジネスにおけるさまざまな場面において有効ですが、未来曼荼羅を活用したプロジェクト例として以下のようなテーマが挙げられます。

ご提案テーマ

具体的にはこんなプロジェクトを実施しています。

例1:食品メーカーの基幹ブランドリニューアル
ブランドの周年を見据えて、提供価値の刷新および顧客体験の進化についての方向性を定めて、今後のアクションをロードマップ化。プロジェクトの冒頭で、未来曼荼羅を使って「食」や「流通」に関する次の時代のあり方を議論し、重点的に取り組むべき領域について明らかにしました。幅広いテーマで議論をすることにより、単に「味がおいしい」「健康的」というだけでなく、人と人をつなぐ存在としてもチャンスがあるのではないかという示唆が生まれました。

例2:エンターテインメント企業の長期ビジョン策定
未来の余暇時間について大事にされる価値や具体的なシーンについて描き出したうえで、そこに対して企業としてどんな価値を届けていくかを策定。未来の余暇を楽しむ生活者像に着目し、特にテクノロジーの進化がどんな影響を及ぼすかについて議論を深めました。まだ生成AIの話題がそこまで一般的になっていないタイミングでのプロジェクトでしたが、昨今よくいわれる「AIが愚痴を聞いてくれるパートナーになる」といった世界が、あり得る未来のシーンとしてすでに想定されていました。

「未来曼荼羅2025」の注目テーマ

本稿の最後に、未来曼荼羅2025における注目テーマをいくつか紹介させていただきます。

●男性の「自分らしい役割」の見つけ方
育休取得者の増加、スポーツ以外の趣味の浸透、でも半数近くの人が「生きづらい」と思っている……。仕事を頑張る人生が必ずしも正しいものではなくなっていく時代の男性像とは?

●新たな「階級社会」の到来による日本版のノブレス・オブリージュ(※)の構築
格差が広がり、「努力は必ず報われる」という考え方を信じない人も増加中。そんな時代に求められる社会貢献のあり方とは?そして、自己責任論に陥らない価値観を育てていくために必要な教育とは?

※=ノブレス・オブリージュ
フランス語で社会的地位の高いものには義務が伴うことを意味する 


●マルチアイデンティティ化で「増殖する私たち」
SNSの進化、メタバースの広がり、さらにはAIやID技術の革新に伴い、人は複数のアイデンティティを同時並行で生きることが一般的に。コミュニティごとに人格を持つのが普通になれば、そもそも「本名」自体も不要になる?

●進む二季化 広がる新たな“旬”の楽しみ方
「四季を楽しめるのがこの国の良さ」と言うには夏があまりにも長くなってしまった昨今の日本。体調管理、食生活、そしてエネルギーマネジメントなど、気候の変化が社会に与える影響は?

このようなテーマが72個集まっているのが電通未来曼荼羅2025です。電通グループの知見の詰まった未来へのヒントを対話とともに読み解きながら、10年後の社会やそこで受け入れられるビジネスのあり方について、一緒に考えてみませんか?

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