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生成AIでマーケティングはどう変わる?No.3

生成AIの隆盛。これからのマーケター・クリエイターに求められるもの

2023/03/27

「AIアシスタント元年」

この連載では、第1回で生成AIの技術を概観し、第2回でチャット検索と情報接触の変化について考えてきました。

チャット検索をはじめ、言語系・画像系のAIの可能性はどんどん広がっています。では、そんな時代に私たちはどのようなスキルを身に付けていくべきなのでしょうか。

AIによって代替されうる作業を改めて見てみると、「希望していた画像を生成する」「調べものを代行する」など、今までは人間がいくつかのツール(検索エンジンやフリー素材など)を組み合わせていた作業も、AIによって代行が可能になります。独創性を求められない知的労働であれば、もう多くの部分がAIによって代行されうるといえそうです。

加えて、第1回の記事でお話ししたとおり、これらのAIをカスタマイズするためのハードルはどんどん下がっています。与えられたAIをそのまま使うのではなく、目的や用途、自らの強みにあわせてカスタマイズできるようになっています。(ChatGPTに「〇〇の役をやって」と依頼するのも同じ考え方ですね。)

例えば私は、いくつかのツールを組み合わせて、「自分のアイデアに対し、いろいろな立場の人になりきったAIがダメ出しをしてくれるツール」をつくりました。よいアイデアを思いついちゃった!という時に、いったん冷静になるためのものです。(私はだいたいいつも思い付きで行動をしてしまうので……)

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通称「意見くれる君」。みんなにダメ出しをされ、いったん冷静になれる

こう考えると、これからの知的労働は、AIツールを「使う」だけでなく、自ら「つくる・育てる」という姿勢が一般的になるのかもしれません。

クリエイターであれば自分の感性をひろげるためのAI、ビジネスパーソンであれば必要な情報を収集して業務を効率よく進めるためのAIを、自分で育てて「使役」する。AIが調べものや作業をしている間、自分はそれぞれの情報を深掘りしたり、別の領域の学びを深めたり、仮説を立てたりする。そんな働き方がひろがりそうです。

そういう意味で、2023年は「AIアシスタント元年」と呼べるかもしれません。

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自分だけのAIツールを自分でつくる時代

本棚を育てるように、AIを育てる。

思い返せば私たちは、いつだって自分だけの強みを、自分でつくってきました。

例えば本棚には、今まで読んできた本が並んでいます。ほかの誰とも異なった自分だけの知識や経験が、形となって残っています。それはそのまま私たち一人ひとりの独自性であり、強みになっていると言えます。

例えばSNSのフィードやタイムラインには、私が「刺激を受けたい」と感じた人や、大事な情報源と判断した人=フォローしている人の投稿が並んでいます。これも、自分にとって最適な情報を集め、自らの感性をはぐくむためのツールと言えますね。

AIもこれらと同じで、自分にとって興味のある情報源や、よく使うツールをAIの形にし、手元に置いておいて、柔軟に使っていく。そういった姿勢が求められてくるでしょう。

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本棚を育てるように、AIを育てる。

本質的なクリエイティビティ

このように、知的労働を代替するAIの発達によって、いってしまえば「誰でも、望むものを創作することができる」という社会が間近に迫っています。そんな時代の、本質的なクリエイティビティとは何でしょうか。プロとアマチュアを境界は、どこにあるのでしょうか。

よく例えとして、カメラとカメラマンの話をします。

現代は、あらゆるスマートフォンにカメラがついています。私たちも日々、気になった風景を記録したり、スナップを撮影したりしています。ですが、だからといって誰でも写真家になれるわけではないですね。

写真家になるためには、もちろん機材や、カメラの仕組みについても理解が必要です。複雑な道具を意のままに操る知識と熟練が必要です。構図やライティングについての知識も重要です。

ですが、アマチュアとプロを分ける最大のポイントは、やはり「感性」や「美意識」、「哲学」と言えるのではないでしょうか。あるいは、歴史や人間に関する深い洞察、経験に裏打ちされた価値観、好きという気持ちや執着、そういったものがクリエイティビティの本質であることは、いつまでも変わらないと考えます。

むしろ、テクノロジーでスキルの差別化ができなくなってくる時代に、より意味があるのはこういった、いわゆる「文系」と言われてきたスキルのような気がしてなりません。AI時代だからといって、理系一辺倒のプログラミングやデータサイエンスを詰め込んでいくことは、(少なくともマーケティング・クリエイティブの世界においては)十分とは言えないとも感じます。

もちろん、ツールや技術に関する理解が不要というわけではありません。AIを巧みに育て、使役する新しいテクニカルスキルと、豊かな感性や価値観。それらは表裏一体となって、これからのクリエイター、ビジネスパーソンにとって必要なスキルになるといえるでしょう。

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冒険は続く、AIとともに

まだまだ生成AIは発展を続けていきそうです。おそらく今後、たくさんのトラブルや懸念に直面するでしょう。幻滅期がおとずれ、限界論も出るでしょう。

しかし、すでにパンドラの箱は開いています。それであれば、この機会にいろいろなAIに触れ、新しい時代を踏み出すパートナーを探してみてはいかがでしょうか。

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