ろーかる・ぐるぐる #26

マップの戦略、コンセプトの戦略

日頃「戦略」の提案をする機会がたくさんあります。背景の整理やら根拠やら、パワーポイントの資料にするとずいぶんなページ数になっちゃうのですが、戦略そのものはおおよそ1枚で説明できます。そしてその1枚は「マップ」か「コンセプト」、このどちらかで表されます。


マップとは、たいてい2軸を掛け合わせ、その市場における立ち位置を示した図のことです。その環境における脅威と機会を分析したデータに基づいて作成され「どのポジションを取れば競争を優位に展開できるか?」「どこで戦うか?(=ここで戦えば大丈夫)」を表現できます。
たとえば「自社商品のイメージを分析したところ、競合メジャーブランドに酷似していた。生活者が望む『健康的』な方向にシフトしよう」といったようなことを一目で伝えられます。ここでは「どうやってその方向にシフトするのか?(=どうやって戦うか?)」に大きな関心は払われません。とにかく「健康的」にすればよいのです。
「マップの戦略」自体には「その手があったか!」という意外性はありません。なので、この戦略で広告をつくる場合は表現上のアイデアの役割がより重要になります。ストラテジストがクリエーティブと役割分担をし、客観的な分析を通じて戦略を開発する場合には「マップ」が有効です。

一方、今までの延長線上ではどうしようもない時、市場における競争のルールを変えちゃうような劇的に新しいアプローチが必要な時、「コンセプト」は関係者全員に進むべき道を直感的に共有させることができます。
それは「どうやって戦うか?」を示す言葉です。しかしその正しさを客観的データで証明できないところが弱点です。このことは「芸術は爆発だ」の岡本太郎さんを思い出すとよくわかると思います。
岡本さんは「生きるよろこび」としての芸術を目指しているにもかかわらず、うまいもの、きれいなもの、ここちよいものばかりが評価されている状況に悩んでいました。それを解決し、競争のルールを変えちゃう新しい視点として「芸術は爆発だ」というコンセプト(戦略)を提唱したのです。しかしこれが戦略のプレゼンだとすると、まだ「太陽の塔」などの作品群(具体策)ができていない段階で「芸術は爆発だ」のチカラを証明することは至難の業です。魅力度を調査したって回答者は目を白黒させるだけでしょう。コンセプトで表される「戦略」は「どうやって戦うか?」を表現できる代わりに、「どこで戦うか?(=ここで戦えば大丈夫)」は教えてくれないのです。
「コンセプトの戦略」はそれ自体が「その手があったか!」というアイデアです。この戦略で広告をつくる場合、もちろん表現のアイデアも必要ですが、その中核となる新しい視点をきちんと形にすることが重要です。

マップの戦略、コンセプトの戦略は状況に応じて使い分ける「型」であり基本認識です。ここが曖昧だと本物の戦略は描けません。

これがアラブの「フムス」もどき。

 

ぼくは料理が好きで週に5日は包丁を握ります。和食や中華、フレンチ、イタリアンはもちろん、ネットでレシピを手に入れてアラブ料理なんかにもチャレンジします。ひよこ豆、練りゴマ、オリーブオイル、レモン、塩に少量のニンニクをミキサーにかければエキゾチックなソースが完成します。そのままバゲットに塗ってよし、サラダにしてよし。
でもどこまで行っても「っぽい」料理止まりなのは、ぼくの料理に「型」がないからです。永遠に酔っ払い向けのつまみレベルです。

「戦略」をつくるときも、ターゲット、コンセプト、セグメンテーション。ブルーオーシャンやら高速PDCAといった用語をちりばめると「っぽく」出来上がります。でもそこに「型」がないと、酔っ払いの戯言レベルを抜け出せないでしょう。

ちょっと小理屈が続いちゃったので、次回はガツンと、画期的な黒毛和牛のメンチカツ誕生秘話をお話しします。

どうぞ召し上がれ!

 

プロフィール

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    山田 壮夫
    株式会社電通 第1CRプランニング局

    1969年生まれ。アイデアを核として広告キャンペーンはもちろん、店舗開発からテレビ番組の製作まで手掛ける。特に最近は全国の地方新聞社厳選お取り寄せサイト「47CLUB」と連携してローカルにおける商品開発作業にチャレンジしている。2009年カンヌ国際広告祭(メディア部門)審査員。慶應義塾大学(メディア・コミュニケーション)、明治学院大学(経営学)非常勤講師。著書に『〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考』(朝日新聞出版)。

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