ろーかる・ぐるぐる #27

メンチカツのイノベーション(前半)

新宿の京王百貨店では今日から開店50周年記念「全国地方新聞社厳選 地元オススメうまいものまつり」がスタートします。そして東京(葛飾)の小島商店からこんな商品がデビューします。
 

「ステーキみたいなメンチカツをつくりたい」
そんな想いから生まれた「チョップカツ」。
ステーキやローストビーフ用の肉を大胆にたたいた(チョップした)だけの超粗挽きメンチカツです。肉は老舗精肉卸の小島商店が厳選した黒毛和牛のみ。メンチカツの常識が変わると思います。
 
今回は出来たてほやほや、このチョップカツの誕生にまつわるお話をしましょう。
 
小島商店は1933年創業。初代社長の小島森治さんが東京都中央卸売市場食肉市場の初代組合長を務め、東京オリンピックの頃には帝国ホテルの村上信夫料理長とともに仔牛の普及を図り、そして現在は銀座三越で直営精肉店「片葉三」を営む老舗和牛卸です。
ある日、副社長の小島康成さんが雑談の中で悩みを明かしてくださいました。「和牛ってどうしても高嶺の花。でも、もっともっと気軽に食べられるようにしたいんです」。以来、頭の片隅でどうやったらこの「ビジョン」をかなえることができるのか考え始めました。
 
ぼく自身は老舗洋食店のお肉を滑らかに挽いたハンバーグが好きなのですが、どうも世の中は「絹挽きより粗挽き」「粗挽きより超粗挽き」。挽肉メニューでもしっかり歯応えがあって「お肉を食べている」と実感できるようなレシピが人気のように思われました。とすると「メンチカツを挽肉じゃなくてスライス肉や小間切れ肉で作ったらどうなるのだろう?」というのがそもそもの着想でした。

 
試作品
チョップつなぎあり/チョップつなぎなし

ぐるぐる思考「散らかすモード」の回でも触れましたが、こういうときは正しいかどうか検証するより「とりあえず作ってみる」ラピッド・プロトタイピングが有効です。もしかするとスライス肉では小判の形に成型できないかもしれませんし、できたとしても狙ったほど「お肉を食べている」とは実感できないかもしれません。とりあえず食って旨いかの勝負です。
自宅のキッチンでスライス肉を粗く切ったり細かめにしたり、「つなぎ」を入れたり入れなかったり、生玉ねぎにしたり炒め玉ねぎにしたり、少し挽肉を入れてみたり入れなかったり、よく捏ねたりあまり捏ねなかったり。本当はすべてフライすべきなのですが、さすがに生活習慣病も気になるのでハンバーグで食べたり。そんな試行錯誤を繰り返した結果、間違いなく挽肉でつくったものより「肉」が感じられることが分かりました。メンチカツとしてはちょっとアンバランスで料理としての繊細さには欠けましたが、いままで経験したことのないワイルドな魅力と満足感がありました。
そもそも「メンチ」という言葉はフランス語や英語で「細かく切り刻む」を意味する「mince」(ミンス)から来ているそうです。一方これからつくろうとしている商品はお肉を大胆にたたいた(chop/チョップした)だけです。覚えやすいのとワイルドなイメージも湧きやすいだろうことから「チョップカツ」とネーミングしました。

こうして昨年「和牛をもっと気軽に食べられる」ようにするための「ステーキみたいなメンチカツ」をご提案しました。小島さんは「一緒にチャレンジしましょう。こんなアプローチは聞いたことがないから」とおっしゃってくださったので、プロジェクトはグッと前進したのでした。
 
見た目はふつうですが、食べると・・・

ぐるぐる思考でいえばようやく「発見!」モード、コンセプトが確定したわけです。とはいえ発売のためには「磨く」モードの「死の谷」を越えて具体策をつくらなければなりません。そのへんのお話は次回また。
ちなみに新宿京王百貨店「全国地方新聞社厳選 地元オススメうまいものまつり」は26日まで。ぜひ「チョップカツ」をのぞきにいらしてください。
 
どうぞ召し上がれ!
 

プロフィール

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    山田 壮夫
    株式会社電通 第1CRプランニング局

    1969年生まれ。アイデアを核として広告キャンペーンはもちろん、店舗開発からテレビ番組の製作まで手掛ける。特に最近は全国の地方新聞社厳選お取り寄せサイト「47CLUB」と連携してローカルにおける商品開発作業にチャレンジしている。2009年カンヌ国際広告祭(メディア部門)審査員。慶應義塾大学(メディア・コミュニケーション)、明治学院大学(経営学)非常勤講師。著書に『〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考』(朝日新聞出版)。

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