ろーかる・ぐるぐる #28

メンチカツのイノベーション(後半)

新入社員の皆さん、おめでとうございます。2年目と具体的に何が違うのか定かでありませんが、パッと見ただけでわかる独特のオーラがまぶしいです。あれから約20年。おじさんたちが「入社式が昨日のようだ」といっていたのがウソではなかったと実感しています。きっと定年まで約20年。後悔しないようにできるだけたくさんのイノベーションをお手伝いしたいなと思います。

これがチョップカツ。

 

それはさておき。メンチカツにイノベーションを起こそうという取り組み「チョップカツ」の続きです。「ステーキみたいなメンチカツ」というコンセプトからネーミングが確定したところまでお話ししました。今回は「磨く」モードでどのように具体策をつくっていったかについてです。

その中心となったのはやはり「商品づくり」でした。わたしの試作品はしょせん素人のお遊び。量産を考えて原材料を調達し、多くの方に安定して楽しんでいただけるように調味し、たとえば揚げ時間から逆算して形状などを検討しなければなりません。コンセプトである「ステーキみたいなメンチカツ」の夢と現場の現実を行ったり来たりしながら具体策をつくる作業になります。

今回その一番たいへんな役割を果たしてくださったのは小島商店の経験豊かな料理人、武江さんです。わたしが自由に語る夢に根気強くお付き合いくださいました。実際、武江さんの試作品第1号は「美味しいメンチカツ」でした。隠し味も効いていて、バランスもよく、素敵な洋食屋さんのひと皿のようでした。しかしぼくたちが目指すのはもっと「肉々しい」商品のはず。ひざを交えて繰り返しお話しをしました。そして長年の経験からついつい「メンチカツ」をつくっちゃわないように、「バランス」を取らないように挑戦してもらいました。今年に入ってしばらくしたある日、「なるほど、分かった気がします」とおっしゃって以降は武江さんのレシピが大胆になりました。と同時に味わいもいわゆる「メンチカツ」とは違うモノになりました。

こんな風なお肉が詰まっています。

 

もちろん使用する牛肉は「老舗和牛卸小島商店」の本領発揮です。今回のシリーズでは「黒毛和牛のみ」を使っていますが、それもちょっと吃驚するようなレベルのお肉です。他にも「タマネギの専門家」「大量にこねて成型する専門家」など多くのプロフェッショナルが「ステーキみたいなメンチカツ」という視点のもとで新しいチームワークを発揮し、その成果が「チョップカツ」になりました。

 

こちらがADの関戸さん。


デザインを担当してくれたのはアートディレクターの関戸貴美子さんです。かつて一世を風靡した広告コピーに「わたし脱いでもすごいんです」というのがありましたが、関戸さんとは「パッと見た目はちょっとオシャレに、でもガブリと食べると荒々しい肉感が襲いかかってくる感じの商品にしたいよね」なんて話をしました。こちらも試行錯誤を重ねて通称「チョップマン」のデザインに決定しました。

たくさんのお客さまに来て頂きました。

 

おかげさまで京王百貨店でのデビュー戦は7日間で約1万個を販売する大成功となりました。めざましテレビなどにも取材をしていただき、文字通り幸先の良いスタートを切ることができました。と同時に、まだまだ十分にコンセプトを表現しきれていない商品スペックなど改善点も多く見つかりました。

イノベーションを「ひとの行動・習慣・価値観にもう元に戻れないような変化をもたらすモノ・コト」と定義するなら、小島商店さんとの野望は世の中に「もうふつうのメンチカツでは満足できない」ほどの変化を起こすことです。そして同じく挽肉メニューである「ハンバーグ」にも超粗挽きの「チョップハンバーグ」で勝負をかけることです。とてつもない大風呂敷であることは自分たちでも承知しているのですが、こういうちょっとした興奮状態はイノベーションに欠かせないように思われます。

残念ながら現在は「チョップカツ」をご購入いただけない状態ですが、体制を整え、順次販路を拡大してまいりますので楽しみにしていてください。

どうぞ召し上がれ!

 

プロフィール

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    山田 壮夫
    株式会社電通 第1CRプランニング局

    1969年生まれ。アイデアを核として広告キャンペーンはもちろん、店舗開発からテレビ番組の製作まで手掛ける。特に最近は全国の地方新聞社厳選お取り寄せサイト「47CLUB」と連携してローカルにおける商品開発作業にチャレンジしている。2009年カンヌ国際広告祭(メディア部門)審査員。慶應義塾大学(メディア・コミュニケーション)、明治学院大学(経営学)非常勤講師。著書に『〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考』(朝日新聞出版)。

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